英国の非居住者家主制度に対する変更
非居住者家主制度とは何ですか。
非居住者家主制度(Non-Resident Landlord Scheme)とは、英国非居住者の英国での不動産賃貸事業の利益に課税する所得税制度です。賃貸収入には源泉徴収課税が適用されますが、大半の企業は収入を源泉徴収課税せずにグロスで受け取るよう申請が可能です。
非居住者家主制度は誰に適用されますか。
非居住者家主制度は、英国に賃貸用不動産を保有するすべての英国外在住の人・企業に適用されます。
この制度に変更があるそうですね。
企業に関する非居住者家主制度は撤廃されます(非企業は継続)。英国に賃貸用不動産を保有する企業は、いずれは法人税制度で課税さることになります。企業にとって、非居住者家主制度で最後の申告の対象となるのは2020年4月5日までの年度で、2020年4月6日以降は賃貸利益に法人税が課せられ、企業は法人税申告を行う必要があります。
非居住者家主制度と法人税制度では、税率にどのような違いがありますか。
非居住者家主制度は、賃貸事業の利益に所得税の基本税率が適用され、英国の現行の所得税基本税率は20%です。賃貸事業の利益に適用される法人税率は現行では19%ですが、政府は新たな制度が始まる2020年4月からは17%に引き下げると発表しています。
2つの制度は、税率のほかに何か違いはありますか。
法人税制度には、企業グループの英国での純支払利息が200万ポンド以上ある場合、利息への課税控除に制限があり、繰り越し欠損金控除ではもっと複雑な規則があります。それ以外では、様々な開示の違いはあるものの、一般には課税対象利益の金額は同じです。
申告の要件には変更がありますか。
はい、あります。非居住者家主制度では、企業は4月5日までの年度について、翌年1月31日までに書面で申告しなければなりません。そして法人税制度では、企業はその会計年度について会計年度末から1年以内に電子申告が必要です。従って、英国での支払利息が非常に多い非居住者家主は、制度の変更により適用される、新たな企業の支払利息の制限を回避するため、社内、またはグループの商業戦略の再構築が必要となる場合があります。
この税制の変更は2020年に実施されるのですね。
その通りです。ただし政府は、様々な技術的項目など細かな点について、一般から意見を募ることにしています。その中には、明確な移行規定を設けること、すべての企業利益が必ず課税されること、2つの制度の間で二重課税とならないようにするなどの項目があります。
既に英国子会社がある場合はどうなりますか。変更後に企業間での損失の控除はできますか。
2020年4月6日以降は両方の企業が英国の法人税の対象となるため、両社に75%の共通保有関係がある限り、グループでの控除が可能です。これは75%の共通保有関係が非英国企業を介したものでも当てはまります。現行制度でも、こうした控除は可能なはずであるという技術的な議論もありますが、こうした控除についての法的見解は、明確にされていないと言えます。
アンディー・トール
税務ダイレクター
税務と税務会計コンプライアンス、HMRCへの照会、オーナーの利益抽出と出口戦略、R&D優遇の請求、キャピタル・アローワンスの請求、税務デュー・ディリジェンス、M&Aの税務など幅広い経験を持つ。