金融サービス事業者のFCAへの登録と監査の要件
金融サービス事業者であれば、FCA(金融行為規制機構)に登録する必要がありますか。
大手事業者を始めとする多くの事業者には、FCA登録が義務付けられる可能性が高くなります。小規模な事業者は登録の義務はないかもしれませんが、検討には値するでしょう。
登録することによる利点と、不利になる可能性は何でしょうか。
FCAへの登録の利点としては、社会的な評判や正当性が得られますし、顧客や潜在顧客からの信頼感も高まる点が主に挙げられます。しかし、FCAへの登録を表記できるようにするためには、規制上の負担が伴います。
順守が必要な主な規制には、どのようなものがありますか。
まず、「2000年金融サービス・市場法(FSMA)」があるうえ、EU指令の影響も受けます。これには主として、適正資本金指令(CAD)や金融商品市場指令(MiFID)があります。登録を免除されることはありますか。
FCAに登録していれば、監査が必要になりますか。
全企業を対象にした法定監査を義務付ける要件が、2006年会社法の第383条に定められています。事業者が次の基準のいずれか2つに該当する場合、事業者の業務に関係なく法廷監査が必要になります。
- • 売上高が1020万ポンド超
- • 総資産が510万ポンド超
- • 従業員数が50人超
こうした基準を下回る企業や企業グループは、小規模企業と見なされます。ただし会社法により、事業者が上記の基準を下回る場合でも監査が必要になる可能性もあります。
それは小企業制度から除外される企業ですか。
会社法ではこれを第384条で定め、以下の企業はその規模に関係なく法廷監査が必要になります。
- • 認可保険会社
- • 銀行
- • 電子マネー発行者
- • MiFIDに準拠した投資会社
- • UCITS(欧州で定められた譲渡可能証券を対象とする投資信託事業)の資産管理会社
弊社の企業グループ内に小企業制度から除外された企業があるのですが、これによりグループ監査の要件に影響が出ますか。
会社法はこれについて明確に定めており、不適格企業がグループ内にあれば、そのグループには免除が適用されず法廷監査が必要になるため、同じグループ内というだけで、FCA未登録の企業も法定監査の対象となる可能性があります。
ほかにどのような影響を検討すべきですか。
FCAの登録企業にはCASS保証報告書が必要になる場合があります。CASSとは顧客資産(または顧客資金)取り扱い規定のことです。この報告書の年度末は、通常では会計基準日と同じとなり、年度中に顧客の資金や資産を保有・管理する場合には、CASS報告書が必要になる場合があります。また、年度中に実際には保有しなかった場合でも、報告書が必要になる場合があります。FCAへの登録の影響は、十分な検討に値しますので、登録手続きをする前に詳細な助言を求めるのが良いでしょう。上記は、FCAの複雑で多岐にわたる規則を知るうえで手掛かりとなるはずです。
ジェフ・ジョンソン
ダイレクター: 監査・会計
BDOに9年勤務。英国会計基準(UK GAAP)や国際会計基準(IFRS)、米国会計基準(US GAAP)の豊富な知識を基に、監査と財務会計を専門とする。勅許会計士(ACA)の資格を持つ。