英国の年金について
会社の年金に加入されている方や独自で年金積立をなさっている方は多いと思いますが、それで十分なのか不安に思われている方もいるでしょう。どのようにして年金積立をするべきなのでしょうか。職場年金や個人年金について理解しましょう。
会社員ですが、将来どんな年金がもらえるのでしょうか。
まずは国民年金で、給与から差し引かれる(自営業の方は独自で支払い義務のある)国民保険料のNational Insurance Contribution(NIC)が財源になっています。また、ほとんどの方が職場年金にも加入されており、こちらも拠出金は給与から天引きされています。加えて、職場年金にない特典のある個人年金に独自で加入されている方もいます。
国民年金はいくらもらえるのでしょうか。
受給金額はNICを払った年数(Qualifying Years=QY)により決定され、35年払っていれば満額の週185.15ポンド/月802.32ポンド/年9627.80ポンド(本税年度)が受け取れます。少なくとも10年QYがあることが受給条件で、1QYにつき満額の35分の1の年金受給権が発生します。また、受給年齢は現在の66歳から段階的に68歳に引き上げられる予定です。
職場年金について教えてください。
昨今の職場年金は運用タイプになっており、受け取る年金額は、拠出金額、運用利回り、受け取り時の長期金利により左右されます。国民年金のようにすでに決まった計算式で割り出した金額が保証されているわけではありません。
毎月積み立てられる拠出金は、運用され受け取り年金の原資(Pension
Pot)となり、原資が多いほどたくさんの年金がもらえます。定年時には、①キャッシュ化する、②生涯年金が保証されているAnnuity、③自由自在に引き出し額が決定できる運用型年金のDrawdownから受け取り方法を選択します。どのオプションでも、受け取り額の25%は非課税で残りは総合課税となります。個人年金も同様の仕組みです。
職場・個人年金の仕組み
年金は節税になると聞きましたが。
はい、年金に拠出した金額だけ本人が払った税金が還付されます。現在年5万270ポンドまでの収入の方は20%の税率が適用されています。その方が年金に100ポンド拠出する場合は、払い込み金額は80ポンドのみで、20ポンドが年金口座に追加されます(年金会社が還付手続きを代行)。5万270ポンド超の所得のある方は40%、15万ポンド超なら45%の税金を払っていますので、確定申告(Tax Return)を通して年金拠出を申告すれば、さらに20ポンド、25ポンドの還付金が現金で戻ってきます。
拠出金に限度はあるのですか。
限度額はAnnual Allowance(AA)と呼ばれており、勤労所得の100%か4万ポンドのどちらか少ない方です。例えば、所得が2万5000ポンドの方は2万5000ポンド、10万ポンドの方は4万ポンドとなります。ところで、AAは会社と本人を合わせた拠出金であることをご留意ください。AAが4万ポンドの方で、会社と本人が月100ポンドを支払っている場合、残りのAAは 3万7600ポンド( £40000–( £100x12+ £100x12))となります。なお、未使用のAAは3税年度分留保することが可能です。
個人年金の特典はどんな点ですか。
仕組みは運用型職場年金と同じですが、運用対象が大きく広がったり、受け取り時のオプションの一つであるdrawdown機能が付くなど、職場年金にはない可能性もある特典が付いています。特に、投資型個人年金(Self-Invested Personal Pension = SIPP)は最も進んだタイプの年金制度で、通常職場年金では投資できない個別株式、個別公社債、預金、商業不動産などで運用可能です。個人年金ではファイナンシャルアドバイザーをプラン代理人に任命することができるので、年金運用、拠出金や限度額のアドバイス、受け取り額の試算など、さまざまな年金計画を立ててもらえます。
当コラムは2022年11月時点の法制と税制に基づき一般的なガイダンスのために作成されており、皆様のご理解を深めるために内容を簡素化してある場合もあります。専門家の助言なしに記載情報にのみ基づき行動することはお控えください。その場合、筆者は一切責任を負いません。投資助言を含まない税務助言はFCA に規制されていません。
※ 次回のマネー教室は2023年2月16日号に掲載致します。