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Thu, 28 March 2024

パンダ来英と英中通商関係 - エディンバラ動物園に2頭

エディンバラ動物園に2頭
パンダ来英と英中通商関係

昨年12 月、スコットランドのエディンバラ動物園に中国から2 頭のパンダが送られたことは、大きなニュースとなった。既にその愛くるしい姿で多くの人を魅了している「陽光」と「甜甜」の2 頭であるが、英中間における近年の著しい経済関係の発展を象徴するシンボルのような存在であるとの声もある。


様々な表情を見せる雄のヤングアン(写真左2枚)と、雌のティエンティエン(写真右1枚)

ジャイアント・パンダとは

主に中国・四川省西北部、西部及び西南部に生息している、クマ科-ジャイアント・パンダ亜科の動物。学名はAiluropoda melanoleuca、中国名は大熊猫。

大人の雄の体長は150〜180センチ、体重は64〜125キロ程度。雌はこれよりやや小さい。

現在、野生のジャイアント・パンダの数は1300頭程度とされている。国際自然保護連合(IUCN)により、絶滅危惧種に認定されており、ワシントン条約で売買が禁止されている。

主食は竹と笹であるが、果物なども食べる。野生のジャイアント・パンダは、竹と笹以外の草のほか、まれに鳥などの肉を食べることもある。

基本的に単独で行動する。冬眠はしない。発情期は1年に1回で、雌が妊娠できる状態にあるのは1年に2日のみである。

ジャイアント・パンダが飼育されている欧州内の動物園

動物園名 パンダの名前
エディンバラ動物園(英国) 陽光(ヤングアン、雄)(2011年来園)
甜甜(ティエンティエン、雌)(2011年来園)
ベルリン動物園(ドイツ) 宝宝(バオバオ、雄)(1980年来園)
シェーンブルン動物園(オーストリア) 陽陽(ヤンヤン、雌)(2003年来園)
龍徽(ロンホィ、雄)(2003年来園)
福虎(フーフー、雄)(陽陽と龍徽の子供)
マドリード動物園(スペイン) 氷星(ビンシン、雄)(2007年来園)
花嘴巴(ホァズェイバー、雌)(2007年来園)
Po(ポー、雄)(氷星と花嘴巴の子供)
DeDe(デデ、雄)(氷星と花嘴巴の子供)


保護プログラムの一環として来英

昨年12月初頭、スコットランドのエディンバラ動物園に、2頭のジャイアント・パンダが到着した。2頭はともに2003年生まれで、名前は雄の「陽光(ヤングアン)」と雌の「甜甜(ティエンティエン)」。国際自然保護連合(IUCN)により絶滅危惧種に認定されているジャイアント・パンダの保護プログラムの一環として、中国・四川省のパンダ保護センターから貸し出されてきた。2頭は今後、エディンバラ動物園で最低でも10年間過ごす予定で、同動物園は、中国当局に毎年100万ドル(約7784万円)を支払う。

中国との通商関係強化に熱心な政府

中国は、海外の国にパンダを贈ることによって、友好関係を築こうとするいわゆる「パンダ外交」を展開してきたことで知られている。しかし、現在の英国は、パンダ外交によって中国から友好関係を求められる立場にはなく、逆に、経済発展著しい中国に対して、英国企業にビジネス・チャンスを与えてくれるよう頼む側となっている。

英国がいかに中国との通商関係強化を重視しているかは、キャメロン首相が2010年11月、大臣数人のほか、50人もの企業・教育界関係者から成る大規模な訪問団を従えて訪中した事実からもうかがえる。この際には、英国のロールスロイス社が、中国の中国東方航空と、12億ドル(約933億円)相当の商談を成立させたことなどが明らかにされた。また、2011年6月には中国の温家宝首相が来英し、英中間で14億ポンド(約1680億円)相当の商談が成立したと発表された。更に、両国間の貿易の規模を、2015年までに1000億ドル(約8兆円)に到達させるとの目標も改めて確認された。

スコットランド自治政府も、中国との通商関係強化に対する熱心さでは負けていない。エディンバラにパンダが到着した昨年12月初旬、同自治政府のアレックス・サモンド首相はちょうど、2007年5月の首相就任以来3度目となる中国への公式訪問中であった。この際には、中国の航空関係者らが2012年初頭、スコットランドを訪問し、中国−スコットランド間の直行便就航を検討すること、在北京企業が今後3年間で、スコットランド産ウイスキーの販売店を中国国内に300店開店することなどが明らかにされた。

こうした事実から、今回エディンバラに貸し出されたパンダは、中国の「外交カード」ではなく、両国間における最近の通商関係の目覚しい発展を象徴するシンボルのような存在であると指摘する声もある。

動物園は入場者7割増見込み

パンダの到着によって、英中間の経済関係がより強固になるかどうかはともかく、2頭が送られてきたことによって、最も経済的な恩恵を受けると考えられるのはもちろん、エディンバラ動物園である。同園は昨年、入場者が15%落ち込み、財政難に陥っている。しかし、パンダが来たことで、今後1年の入場者数は、前年比7割増が見込まれている。2頭の一般観覧は既に先月中旬から始まっているが、盛況であることが伝えられている。2頭に子供が生まれれば、更なる入場者増も見込めると考えられており、期待が高まっている。


Edinburgh Zoo

スコットランドの首都エディンバラにある動物園。スコットランド王立動物学協会が所有する。1913年開園。エディンバラ中心部の西方面に位置する約0.3平方キロの土地に、1000以上の動物が飼育されている。パンダのほか、英国内の動物園で唯一、コアラを飼育することでも知られる。また、ペンギンを飼育、繁殖させた世界で最初の動物園である。昨年の入場者数は55万人で、近年来場者が減っているとはいえ、依然として、スコットランドの人気観光スポットである。ジャイアント・パンダの観覧には予約が必須。詳しくはウェブサイト(www.edinburghzoo.org.uk)を参照。

(猫山はるこ)

 
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