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Fri, 29 March 2024

英国ゆるニュース

王室ネタからセレブ、ゴシップ、カルチャーまで

「報道の自由」か、プライバシーの侵害か
お騒がせヘンリー王子の裸写真

8月末、王位継承権順位で第3位の「ハリー王子」ことヘンリー王子が米ラスベガスのパーティーで裸身をあらわにした写真を、米ウェブサイトが公開した。これを機にインターネット上ではヘンリー王子の裸の写真が一斉に流れたが、当初、英国の大手新聞各紙はこの写真を掲載しなかった。国内で掲載の先陣を切ったのは大衆紙「サン」。この写真掲載をめぐる動きをまとめてみた。

ヘンリー王子のプロフィール正式な名前はヘンリー・チャールズ・アルバート・デービッド。通称「ハリー王子」。父チャールズ皇太子と母の故ダイアナ元妃の次男として1984年9月15日に生まれる。27歳。王位継承順位第3位。年少時からタバコやお酒に手を出し、10代半ばでアルコール依存症の治療を受ける。2005年、サンドハースト王立陸軍士官学校に入学。卒業後は近衛騎兵連隊に所属した。2007年末からアフガニスタンで航空管制官としての任務をこなす。アパッチ軍用攻撃型ヘリコプターの操縦士。スキーやサッカー、ポロなどスポーツ好きとしても知られる。チャリティー支援にも熱心で、兄ウイリアム王子とともに2009年、慈善団体を立ち上げた。過去にパパラッチと乱闘騒ぎを起こしたこともある。
Q1. ヘンリー王子の行動を容認できますか?
Q2. 「サン」紙がヘンリー王子の裸の写真を掲載したのは正しい行為だったと思いますか?
ヘンリー王子に関する世論調査

ヘンリー王子
ヘンリー王子の裸写真に関する騒動を報じる8月23日付「タイムズ」紙(上写真左)と
同24日付「インディペンデント」紙(同右)。両紙とも裸写真そのものは掲載しなかった

王子の裸写真に衝撃

ロンドン五輪の感動の余韻がまだ残る8月末、英国民は大きな衝撃に見舞われた。ゴシップ記事が満載の米ウェブサイト「TMZ」が、英王位継承順位第3位のヘンリー王子(=通称ハリー王子)の裸の写真を、22日早朝(現地時間は21日夕方)に掲載したのである。ラスベガスでの友人たちとのパーティーにおける一コマで、1枚は股間を手で隠して裸で立つ王子と、その後ろには裸らしい女性の姿が映っていた。もう1枚では、後ろ向きになっている裸の王子が、また別の裸の女性を背後から抱きしめている格好を映したもの。この写真は、インターネット上の様々なウェブサイトに転載された。

しかし、BBCや英国の主要新聞は、TMZ による記事掲載の事実を報道する一方で、実際にその記事の中で使われた写真そのものは掲載しなかった。22日午後には、写真提供会社「スプラッシュ・ピクチャーズ」が、王子の写真を買わないかと声を掛けだしたが、王室はこの写真に写っている人物が本物のヘンリー王子であると認めたものの、各メディアに掲載をしないよう要請。報道苦情委員会(PCC =メディアの自主規制団体)も、掲載すれば個人のプライバシー侵害に当たるとの見解を各紙に伝えた。

王室の意向に背いた「サン」紙

各メディアは、個々の判断で掲載しないことを決めた。英国では現在、大衆紙「ニューズ・オブ・ザ・ワールド(昨年に廃刊)」が引き起こした電話盗聴事件をきっかけに、新聞界の倫理と慣習を見直すための調査委員会が開かれている。同委員会の存在が報道自粛につながったとする見方もある。

そんな中、大衆紙「サン」は、社内のスタッフに、写真の中のヘンリー王子と同じ格好をさせた写真を8月23日付1面のトップに載せた。さらに翌日には、今度は本物の写真を1面に掲載。その後、PCC には同紙に対しての850件に上る苦情が殺到したという。「サン」紙の決定の是非をめぐっては「王子は税金を活動の原資としている。だから写真の掲載には公益性があった」「公益や報道の自由の問題ではない。すべて金(新聞の売上)が理由だ」と世論は大きく分かれた。また王子の警備体制に不備があったと指摘する評論家もいた。

王子は高い好感度を維持

ヘンリー王子は以前にも、仮装パーティーでナチスの制服を着てひんしゅくを買ったことがある。近年ではチャリティー事業に熱心に取り組み、軍人としてのキャリアも積んできたヘンリー王子だが、今回の件でまた評判を落とすことになった。しかし複数の世論調査では、プライベートな時間に羽目を外したヘンリー王子に「好感を抱く」と答える人が大多数であることを示す結果が出ている。

今回の事件は、インターネット時代に、たとえ王室の一員であれ、私的な情報を管理するのがいかに難しいかを示した。また日本人にとっては、王室の情報がここまで公にされてしまうことや、王子に対する好感度が国内では依然として高いことなども興味を引く部分であったに違いない。ヘンリー王子の裸写真に関する顛末は、日本 と比較して英国が随分とオープンな国であることを感じさせる事件であったとも言えよう。

Succession to the throne

王位を王位継承者に譲ること。英国では王位継承に関わる手続きが法律で定められおり、国王の直系子孫、男子優勢、長子先継、プロテスタント信仰であること、カトリック信徒と結婚した場合は継承権を放棄するなどの条件がある。現在の継承順位は1位がチャールズ皇太子、2位が同皇太子の長男ウィリアム王子、3位が次男ヘンリー王子、4位がヨーク公アンドリュー王子(女王の次男)、5位がベアトリス王女(アンドリュー王子の長女)。法律は一部改正中で、近い将来には男子優勢制度の廃止やカトリック教徒と結婚しても継承は可能となるように変更される。

(小林恭子)

 
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参照:「サン」紙、「デーリー・メール」紙ほか

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