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ven 15 décembre 2017

宇宙飛行士を支えた影の主役
フライトディレクタの
意外な真実

東覚芳夫さん

東覚芳夫さん
Yoshio TOKAKU

肩書き 宇宙航空研究開発機構(JAXA)
パリ駐在員事務所所長
経歴 1993年、当時の宇宙開発事業団(現JAXA) へ入社。国際宇宙ステーション(ISS)日本実験棟「きぼう」の開発と地上管制局の整備を担当。その過程でフライトディレクタとなり、2008年から「きぼう」の建設・運用指揮を担う。パリ赴任前は「きぼう」運用チームをリーダーとして率いるとともに、若田光一飛行士がISS コマンダー(船長) に就任した宇宙滞在ミッションの日本側運用責任者を務めた。
趣味 野球。パリでもソフトボール・チームに参加。

今月9日、JAXA の大西卓哉飛行士が国際宇宙ステーション(ISS)* での生活を開始しました(写真)。どのようにご覧になりましたか。

私は、実際に宇宙に行った飛行士たちに教わりながら、また飛行士とともに勉強しながら、「きぼう」** をつくりました。今、宇宙にいる大西飛行士をサポートしているのは自分の後輩たちです。飛行士とサポートする後輩も含めて「がんばれ」という気持ちです。

大西卓哉宇宙飛行士らISS長期滞在クルー
9日、ISS入室後に地上と交信する
大西卓哉宇宙飛行士(中央画面手前右)らISS長期滞在クルー

* 国際宇宙ステーション(ISS)は、地上から約400km上空に建設された巨大な有人実験施設。1周約90分のスピードで地球の周りを回りながら、実験・研究、地球や天体の観測などを行う。米国・ロシア・欧州・カナダなど世界15カ国が参加する国際協力プロジェクト。

** 「きぼう」は、日本が開発を担当した実験モジュール。宇宙飛行士が長期間活動できる、日本では初めての有人施設で、最大4名まで搭乗できる。

ISS の「フライトディレクタ」の実際の職務はどのようなものでしたか。

ISS の運用チームは、電気系統や空調の監視といった様々な担当からなっています。フライトディレクタは、JAXA としての意思決定を行うために、これら担当者の取りまとめ役になり、NASA や各国の管制センターとやりとりをします。その中でも一番大変なのは、飛行士のスケジュールに関する交渉でした。あらかじめ決まっていても、飛行士のスケジュールは、様々な事情で変更されます。そのような場合には、日本の仕事を進める時間をとってもらうため、国の代表として他国と交渉しなければなりませんでした。

また、外国の宇宙飛行士に日本の仕事をしてもらうこともあります。彼らがJAXA に訓練を受けに来た時には、人となりを見極め、一緒にお酒を飲みに行って仲良くなる努力もしましたね。

外国人との交渉での秘訣はありますか。

正直、経験則です。私もこちらの生活で、フランス人に要求を通すのは苦手です(笑)。NASA とロシアには何十年もの宇宙開発の歴史があり、最初は少しこちらを下に見ているところがありました。そういう人には、理詰めで話をします。例えば、その人が言っていることが公平なのかどうか、 逆の立場だったらどう考えるかなどを問うのです。アメリカ人には、このやり方が最も効果があります。

ロシア人は組織よりも人と人とのチャンネルを大事にするので、仲良くなってしまうことが大事だと思います。

JAXA のパリ事務所の役割はどのようなものですか。

欧州全域をカバーしています。欧州各国が共同で設立した研究開発機関である欧州宇宙機関(ESA)やフランス国立宇宙研究センター(CNES)の本部は、パリにあります。また、フランスは、米ソに次いでロケットで人工衛星を打ち上げた国で、現在もアリアンというロケットを次々に打ち上げているという技術的強みがあり、重要な国です。

最近は、日本が欧州や各国の宇宙機関と協力して行うミッションが多くなっています。ロケットの製造では、各国は競争関係にありますが、人工衛星については、他国が打ち上げる衛星に地球観測用のセンサーを搭載してもらう、あるいは観測データを災害対策のために融通しあうとこともあります。そうした国際協力をつなぐのが海外事務所の役割です。

さらにパリ事務所は、エアバスなど当地のメーカーと日本のメーカーをつなぐための窓口にもなっています。

フランスは日本に比べると日用品が粗悪で、技術力があるように思えないのですが。

私も最初は、「この人たちがどうやってロケットを作っているのだろう」と思っていました(笑)。きめこまやかさでは日本が勝ります。ただ、フランスは長い経験を持ち、「標準化」においては優れています。手順書を作り、外国でも、そして誰でも同じ物が作れるように気をつけているのです。

ISS にはロシアも米日とともに参加しているのですね。意外な感じもします。

ロシアがISS に参加した背景には、ソ連崩壊後の技術流出を食い止めたい、旧ソ連の技術を取り込みたいという各国の思惑が一致したこともあります。しかし、いまや宇宙開発は、持ちつ持たれつの運命共同体です。ISS は、そのような協力関係の象徴となっています。

もともと宇宙にご関心があったのでしょうか。

電子工学が私の専門です。がっかりさせるかもしれませんが、特別に宇宙が好きなわけではありません。壮大な規模の「ものづくり」に興味があり、それを実現するための舞台が、偶然にも宇宙でした。飛行士になりたいともあまり思いません。飛行士は訓練も大変で、採用されてからミッションまで最短でも5年かかります。私はわりと現実的な人間なのです。「オデッセイ」*** など最近話題になったSF映画を見ても、非常に現実的なツッコミをいれたくなります。「カメラを使ったあの通信方法はありえない」と(笑)。

*** 2015年のアメリカ映画。火星に1人置き去りにされた宇宙飛行士(M・デイモン)が、地球に生還するために奮闘するサバイバル映画。劇中では、この飛行士がカメラを使ったある方法でNASA との交信を回復する。

今後はどのような仕事に携わりたいですか。

ISSは、運用終了が決まっています。ISS後の潮流としては、月や火星に向かうことになるでしょう。ライフワークとして、その流れに関わっていきたいと思っています。

 

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