Telstar: The Joe Meek Story(2008 / 英)
テルスター
60年代に数々のヒット曲を放った名プロデューサー、ジョー・ミークの波瀾に満ちた半生を描く伝記映画。
監督 | Nick Moran |
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出演 | Con O'Neill, Kevin Spacey, Pam Ferrisほか |
ロケ地 | Holloway Road 304番地 |
アクセス | 地下鉄Holloway Road駅から徒歩 |
- 今週は音楽系です。日本ではあまり知られていないかと思いますが、60年代に世界的なヒット曲を数多く生み出し、一世を風靡した鬼才プロデューサー、ジョー・ミークの半生を追った伝記映画ですね。
- ベンチャーズとかエレキ・ブーム時代のバンドが好きな人なら知ってるかもね。
- ジョー・ミークはいわゆる音響系の先駆けとして、その世界では非常に名の知られた人でして、自分の頭の中で鳴り響く音を実現するために、日常の中のノイズを取り入れたりエコーを駆使したりと、まさに当時では画期的と言うしかない手法で音楽をつくり出していた人です。
- 本人は演奏もできなければ譜面も書けなかったらしいがな。バンドのメンバーにヘタな鼻歌を聞かせたり、擬音を駆使したりしてその音を必死に伝えてたんだよな。
- 物語の前半、順風満帆の頃のバンドの録音シーンはとても興味深いですよね。Holloway Road 304番地、ごく普通の革製品店の上階に構えた小さなスタジオから、 世界的なヒット作が生み出されていたと思うとワクワクします。現在このフラットの外壁にはミークの記念額が掲げてありますよ。
- しかも、そのバンド「ザ・トルナドース」のメンバーの中には、後にディープ・パープルに加入して大スターとなるリッチー・ブラックモアがいたんだから驚きです。あんなふうに踊りながらギターを弾いてたなんて、想像つきません(笑)。
- 加えて後継のドラマー、ミークに銃で脅かされてチビっちゃうぐらい怯えた人だけど、彼は後にジミ・ヘンドリックスのバンドに入るミッチ・ミッチェルだぞ。
- いやー、人に歴史ありですね。ちなみに本作のタイトルでもある「テルスター」 は、英国音楽としては米国で初めてヒット・チャートの1位に輝き、全世界で500万枚を売り上げたという歴史に残る名曲です。ちなみに「テルスター」とは、1962年にNASAが打ち上げた通信放送衛星のことですね。ミークはオカルトに傾倒していて、宇宙や来世に多大な興味を抱いていたようです。ミークがヒーローと崇めていたバディ・ホリーの死を予言した、なんて話もありました。自分が8年後の同じ日に命を絶つことになるとは、このときは思ってもみなかったでしょうけれど……。
- 本作ではミークが自身のプロダクション「RGMサウンド」を立ち上げ、最初の大ヒット曲を生む61年から、悲劇的な死を遂げる67年までを描いていますが、合間に回想及び妄想シーンがちらほら挟み込まれていて、悲しい結末を予感させますよね。
- しかし歯車が狂ってゆく物語後半の見応えといったら、すごいものがあるわい。
- あ、そういえば、バンドに加わる米国人歌手のジーン・ビンセント役に、元リバティーンズ、ダーティ・プリティ・シングスのカール・バラーが扮していますね。元トルナドースのメンバー、チャス・ホッジスが推薦したらしいですよ。
- ほかにも音楽誌「NME」の記者としてジョン・ピールがインタビューしに来たり、まだ無名だったビートルズのプロデュースを鼻であしらって断ったりと、音楽ファンには見逃せないシーンがいっぱいですね。そういえば、最初に出てくるロニー・ドネガンとのスタジオ録音シーンは、ロンドン東部はハックニーのアナログ録音スタジオ「Toe Rag Studios」で撮影されていますよ。
天才的なひらめきとアイデアを持ち、他人の才能を見抜く力にも長けていたそうだが、それだけに周囲が彼に追いつけなくなって、孤立化していった。挙げ句「誰かが自分のアイデアを盗もうとしている」という妄想に取り憑かれてしまう。また「テルスター」に盗作疑惑がかけられたため、あんなに大ヒットを飛ばしたというのに、 ミークは生前にこの曲の印税を受け取ることができなかったらしい。ミークに扮したコン・オニールの迫真の演技は特筆に値するぞ。
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