kanada-ya
Sun, 25 September 2022
今回のテーマ

職場年金と自動加入制度について

多くの方にとって職場年金は定年計画の主要部分を占めています。一方、企業側は自動加入制度(Automatic Enrolment=A.E.)という年金法制を順守する義務があり、多くの留意事項があります。今回は主要な事項について説明いたします。

最近英国子会社に社長として赴任しました。英国の年金制度について、簡単に説明してください。

英国には大きく分けて三つの年金制度があります。①日本の社会・国民保険料に相当するNationalInsurance Contributions (NIC) を財源とする国民年金、②会社が提供する職場年金、③個人が独自に加入する個人年金です。職場年金は自動加入制度(A.E.)の法制により、会社は、英国居住者、22歳以上で国民年金受給年齢(現行66歳)未満、月収833ポンド超、の社員を雇用したら、職場年金に自動的に加入させる義務があります。

条件を満たす社員全員に加入義務があるということですね。

いいえ、加入を希望しない社員は一度加入した後であれば、脱退(Opt-out)することができます。Optoutは会社が代行したり手伝ったりしてはならず、社員本人が年金管理会社に連絡し手続きを取ることになっています。加入手続き日より1カ月以内にOptoutをすれば支払った拠出金は返金されます。それ以降、加入期間中社員は拠出金支払いの停止をすることはできますが、返金はされず、年金口座に定年まで保留されます。

拠出金はどれぐらい払わなければならないのですか。

英国で広範に利用されている運用タイプの確定拠出型年金(日本の401K年金に類似)に関しては、法制最低拠出金は収入の8パーセントで、雇用者は最低3パーセントを支払うことになっています。留意点としては、法制最低金額は雇用者と合計額にのみ設けられていて、会社が8パーセント払っていれば社員は支払う必要はありません。会社が3パーセントであれば、合計が8パーセントでなければならないので、必然的に社員が5パーセントを払うことになります。言い換えれば、社員が5パーセント払わなければ年金を継続できず、会社も3パーセントを払わなくてよいということになります。

社員が多く払うのですね。

社員の拠出金には税額控除が適用され、基礎税率20パーセントを差し引いた金額を支払うので、実際には5パーセントでなく、5%x(100%-20%)=4%となります。税額控除分の1パーセントは年金管理会社が後日税務署から還付を受け、社員の年金口座へ付け加える形になっています。従って、社員側としては、4パーセントを支払うと税額控除の1パーセントと会社の3パーセントを受け取ることができ、拠出金は倍の8パーセントとなります。なお、会社が支払う拠出金は経費として計上されますので法人税控除が適用されます。

つい最近、年金規制機構(The PensionsRegulator = TPR)から、再加入(Re-Enrolment)に関する通知を受け取りましたが、これは何ですか。

雇用者は自動加入制度施行日(Staging Date)、もしくは再加入日から3年ごとに、年金に加入していない社員を再度自動加入させる義務があります。社員の中には、年金に興味がなく当初からOpt-out したり、短期的資金不足で年金積立を停止したりする方がいるかもしれません。ただ、長い人生の間に個人的、金銭的環境は変化しますので、3年ごとに自動的に年金加入する機会を提供することで、政府は年金加入を促進しているのだと思います。

通知には「choose your re-enrolmentdate」とありますが、どのように再加入の時期を決定すればよいのでしょうか。

会社は3年目を挟んだ3カ月前と3カ月後の6カ月の間から、再加入日を選択することができ、この6カ月以内ならいつでも構いません。多忙な会計年度末や人手が不足しがちな夏期、クリスマス休暇時期などを回避できるようになっています。

再加入期間についての例

A.E.施行日、前回の再加入日 2020年1月1日
上記から3年目の該当日 2023年1月1日
最も早い再加入日 2022年10月1日 -3カ月
最も遅い再加入日 2023年3月31日 +3カ月
法令遵守の再告知締切日 2023年5月31日 +5カ月

弊社の社員はみな年金に加入しているので、何もする必要はないですよね。

再自動加入の手続きの必要はもちろんありませんが、雇用者には法令遵守の再告知(Re-Declarationof Compliance)申請の義務があり、前回の施行日または再加入日から3年目に相当する日から5カ月以内に行うことになっています。TPR のオンライン・フォームにて、会社の登録番号などの詳細、利用している年金の情報、社員数や年金に加入している人数などの情報を告知し、申請をします。ファイナンシャル・アドバイザーなどの年金専門家が代理遂行することもでき、この告知をすることにより今回の自動再加入手続きは完了となります。

当コラムは2022年8月時点の法制と税制に基づき一般的なガイダンスのために作成されており、皆様のご理解を深めるために内容を簡素化してある場合もあります。専門家の助言なしに記載情報にのみ基づき行動することはお控えください。その場合、筆者は一切責任を負いません。

※ 次回のマネー教室は11月17日号に掲載致します。

 
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和枝ドゥルーリー APFS

© 和枝ドゥルーリー APFS

日本人ファイナンシャルアドバイザー(CFP)。十数年間の米英系投資銀行勤務を経て、IFAとして独立。日英両方の資格を有する。独立系FA会社に所属。

E-mail: info@kazuedrury-ifa.co.uk
Web: www.kazuedrury-ifa.co.uk
Financial Initiative Ltd is an appointed representative of Lathe & Co Wealth Advisers Ltd, which is authorised and regulated by The Financial Conduct Authority.


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