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ニュースダイジェストの制作業務
Fri, 25 September 2020

英国の
愛しきギャップを
求めて

英国に暮らして17年。いまだに日々のあらゆる場面で「へー」とか「ほー」とか「えー」とか言い続けている気がします。住んでみて初めて英国の文化と人々が、かくも奥深いものと知りました。この連載では、英国での日常におけるびっくりやドッキリ、愛すべき英国人たちの姿をご紹介したいと思います。


マクギネス真美マクギネス真美
英国在住のライフコーチ/編集者/ライター。日本での雑誌編集を経て2003年渡英。英国の食、文化、人物、生活などについて多媒体に寄稿。英国人の義母に習い英国料理の研究もしている。
mamimcguinness.com
過去のコラム:英国の口福を探して

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Unexpectedな英国鉄道

Unexpectedな英国鉄道

「また電車が遅れているよね!!」「そうだね、でも、あと20分くらいで来るみたいだよ」

15年ほど前、当時住んでいたグリニッジの駅のホームで、ロンドン・ブリッジ行きの列車を夫と待っていたときの会話です。

日本では「列車は定刻に到発着するのがあたりまえ」。でも、英国では「列車が定刻に発車、到着すればラッキー!」なのは、在英の皆さんの共通認識ですよね?今なら私もそう思えます。でも、それなりに英国暮らしに慣れてきていたとはいえ、当時の私はまだまだ日本の「時間厳守、お客さまは神様」といった思考を根強く持っていました。

そのせいか、すでに20分以上も遅れている列車にイライラが募っていました。と、そのとき、列車の行き先と到着時刻を知らせる電光掲示を何度も見ていたら気付いたことが。「ねえ、なんで『Expected』っていうのがあるの?」時間つぶしに本を読んでいる隣の夫に質問しました。

というのも、掲示板の左上には定刻をあらわす「Time」、真ん中は、行き先、そして右端には「Expected」の文字が書かれています。どうやらこれは、今の時点で、実際に列車がこの駅に到着する予定時間を表しているよう。そして、見ていると、「Expected」の部分が定刻の20分遅れの時間から25分遅れの時間に変わりました。そしてしまいには、「Delayed(遅延)」との表示。つまり、一体この駅に何時に列車が到着するのかの見当すらつかなくなりました。

「だいたい掲示板に『Expected』ていうのを作る時点で、定刻に列車を走らせようという意識が欠けているんじゃないの?」夫のせいではないのに、ついつい悪態をつく私。「そんなこと、考えたこともなかったよ」夫はぽかんとしていました。


ほかにも驚いたのが、ロンドンなど大都市のターミナル駅で、発車ギリギリまで列車のホームが掲示されないこと。キャリー・バッグを持った人、ベビーカーを押すお母さん、ビジネスマンなど、みんながアリのように群がって大きな電光掲示板を凝視しているのに、出発予定時刻5分前になってもホームのところは空白状態。そして、3分前にようやく番号が掲示されると、まるでロンドン・マラソンのスタートのピストルが鳴ったかのように猛ダッシュで改札に駆け寄る人々。高齢者や幼い子ども連れの人がちゃんと列車に間に合うのだろうかと、自分もホームを小走りしながらいつも気にせずにはいられません。

世界で初めて蒸気機関車を走らせ、19世紀から20世紀初頭には鉄道の発達を牽引してきた英国。でも、その実態は、日本からやってきた私とって、かなりUnexpectedなものでした。

 

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英国人はバービーがお好き

英国人はバービーがお好き

新型コロナウイルスの影響で、3月24日からロックダウンとなった英国。散歩やエクササイズのために外出は許可されていたものの、基本的には家に閉じこもる生活が続きました。でも、幸いなことにほぼ毎日、お日さまが照りつける良い天気が続きました。そのせいか、毎日ご近所のどこからか、バーベキューの煙ととともに、 炭の上に肉汁が滴った匂いが……。

「バービー」などと呼ばれることもあるバーベキュー。そんな愛称(?)で呼ぶほど、英国人はバーベキューが大好きです。それが証拠に1997年からは「ナショナル・バーベキュー・ウィーク」なるものまで開催されています。

ナショナル・バーベキュー・ウィークのサイトによれば、ロックダウン中は例年以上に多くの家庭でバーベキューが行われ、今や英国では4軒のうち3軒がバーベキュー用のグリルを所有しているのだとか!

私が英国人のバーベキュー愛に驚き、感動したのは、渡英後ホームステイをしていたときのことです。「マミ、今日はバーベキューするから、一緒に食べる?」と、ランドレディーのRが誘ってくれました。2人の子どもたちは当時小学生。曜日は覚えていませんが、その日はいわゆるウィークデー。翌日も学校に行く日です。でも、その日はお天気がいいからというだけの理由で、夕飯をバーベキューにするというのです。

英国に来る1年前まで東京で雑誌編集者をしていた私は、毎日終電まで仕事をして帰るのが当たり前。夕飯は会社の近くで外食か、帰り道のコンビニでパンや出来合いのお弁当を買う、という生活でした。そんな暮らしを十数年続けていた私にとって、普段の日の夕食が、お日さまの下で家族そろって食べるバーベキューというのは、それだけで大変な驚きでした。

英国の夏は、夜9時ごろになっても子どもたちが庭でサッカーをできるほど明るいまま。そして、定時に仕事を終えるのが当たり前の暮らしをしているので(もちろん例外はありますが)「ウィークデーに自宅の庭でバーベキュー」が可能なのです。


ステーキや串焼き風のケバブの場合もありますが、英国バーベキューの定番といえば、ソーセージとバーガー。ある調査によれば、ロックダウン中、5月17日までの4週間でバーガー51.6%増、ソーセージ47.4%増という大幅な成長率を記録し、合計で4000万ポンドの売上増が記録されたそうです。

もちろん、我が家でも「ウィークデー・バーベキュー」をしています。英国の気候は変わりやすく、週末にお日さまが照るかどうかだなんて誰にも分かりません。だからこそ、晴れた日はいつだってバーベキュー日和なのです。

 

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パブでは外で立ち飲みがお約束!?

パブでは外で立ち飲みがお約束!?

7月4日からのロックダウン規制緩和に伴い、パブやレストランの営業再開が許可されました。私はまだ出掛けていませんが、今週、夫が5カ月ぶりに訪ねたパブの様子を報告してくれました。それによれば、店内も屋外のテーブル席も客同士の間隔が明確に設定され、注文は全てアプリを使用。以前とは全く違うシステムだったといいます。

パブが英国人の生活に欠かせないものだと知ったのは、渡英後1カ月もしないころ。語学学校の先輩学生に、元は教会だったという珍しいパブに連れて行かれたのが始まりです。

すぐに、パブでは飲み物はカウンターで注文して、その場でお金を払うことや、1人が仲間全員の飲み物を順番におごりあう「ラウンド」というルールを覚えました。また、カウンターには見えない列があって、自分より先にいた客に順番を譲るのが大事なエチケットということも教えてもらいました。

頻繁にパブに行っていたわけではありません。でも、ロンドンの街中にはいたるところにパブがあり、その前を通る度に気になることがありました。それは、店の外に立ち飲みをする人がわらわらあふれ出ていることです。混んでいるのかと思いきや、店内にはテーブルや椅子が空いているところもちらほらあるにもかかわらず。

夏ならともかく、小雨が降っていたり、かなり冷え込む冬の夜でも、ときに店の前の車道まで占拠するほどの人、人、人。また、シティと呼ばれる金融街では、スーツ姿のビジネスマンがやっぱりパブの外で昼間からビールのグラスを傾けながら話し込んでいます。


「英国の人々って、なんでみんな外で立ち飲みしたがるの?」

これまで、夫や友人たちとパブに行く度、いろいろな人に聞いてみました。実はこの質問に対して「外での立ち飲みが好きだ」と言った人はほとんどいません。中には「夏は外の方が気持ちいいから」と言う人はいました。でも、「いくら英国人がエキセントリックだからって、寒い日や小雨の日にわざわざ外で飲みたいとは思わないよ」と笑い返されたこともあります。そして、たいていの人は「席があれば座りたいけれど、空いていないから仕方なく立っているのだ」と答えました。また、ある人は「パブ内での禁煙が実施(2007年)されて以降、喫煙するなら否応なく外にでなければならなくなったからでは?」と言いました。とはいえ、それ以前にもパブで立ち飲みする群衆を見た覚えはあるので、喫煙だけが理由とも思えず、謎は謎のまま。

ロックダウン後の今では、あの、ひしめくように人々が路上で立ち飲みをする英国の風景が恋しく思えます。

 

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半裸の英国紳士たち

半裸の英国紳士たち

いまだにタキシードにシルクハットをかぶっている人が街中を歩いているとはさすがに想像していませんでした。でも、英国に来る前の私は、英国人男性といえば、スーツにネクタイ姿というイメージがあったことは否定できません。なので、街のあちこちで半裸の男性を見かけたときは目のやり場に困りました。街といっても、正確には半裸男性の出没率が高いのは公園や広場。気温20度を超えた日には必ずです。

英国に住みだしてまだ日の浅かったある夏の日の出来事。語学学校で友達になった台湾人のアリと一緒に、グリニッジ天文台で知られるグリニッジ・パークに出かけました。

その日はたしか気温が25度ほどもあり「20度超えたら夏日」と言われる英国ではかなりの暑さ。私たちは、駅前にあったマークス& スペンサーでサンドイッチと水、クリスプスを買って公園に向かって歩き出しました。これだけあれば英国流ピクニックを楽しむには十分です。

駅から5分ほどで丘の上に天文台を望む広大な公園に着き、ピクニックをしようと芝生に座ったとき。目の前に延々と広がる緑の絨毯の上にあふれていたのが、上半身裸の男性たちでした。サッカーをするグループや、車座になって缶ビールを飲んでいる人たちも、みんなそろって服を脱いでいます。裸でない人を探す方が難しいくらいの半裸率です。さらに驚いたのが、サマードレスの上の部分だけ脱いで、ビキニのトップで寝そべっている女性がいること。それも1人でなく、何人も!「この人たちは、公園に来てからビキニに着替えたのか、それとも今朝、家を出るときから洋服の下にわざわざビキニを着て来たのか?」、頭の中を「?」が駆け巡ります。よく見ると、ビキニではなくブラジャーだけになっている人までいます。

周囲の英国人にこの疑問をぶつけてみても「暑いし、日光浴をしたいからじゃない?」とまっとうな答えしか返ってきません。

でも、その年の冬を越して次の夏を迎えたとき、身をもってその答えを知りました。というのも、英国では「次にお日さまに会えるのはいつ?」と思うような、暗くジメジメした冬が1年の半分近く続くのです。だからこそ、夏の間に可能な限り日光を浴びておくことが、人々にとっての責務なのです。なにせ短い夏の間に、半年分の日光を体内蓄積する必要があるのですから。


「又、夏の期限が余りにも短いのを何とすればいいのか」 吉田健一の訳したシェイクスピアのソネットの一文。英国で冬を過ごしたことのある人には切実さをもって響きます。今では私も気温20度超えと聞けば、キャミソールに短パンで公園の芝生に寝そべっています。

 


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