ニュースダイジェストの制作業務
Wed, 08 April 2026

英国の
愛しきギャップを
求めて

英国に暮らして20年。いまだに日々のあらゆる場面で「へー」とか「ほー」とか「えー」とか言い続けている気がします。住んでみて初めて英国の文化と人々が、かくも奥深いものと知りました。この連載では、英国での日常におけるびっくりやドッキリ、愛すべき英国人たちの姿をご紹介したいと思います。


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「医療費が全てタダ」の実態とは

「医療費が全てタダ」の実態とは

「GPの予約を取りたくても、いっこうにつながらなかった」「救急車を呼んだのに、流血している子どもを目の前にしながら40分も待たされた」。これは私が実際に知り合いから聞かされた話です。

ご存じのように英国には国民や合法的な居住者は誰もが無料で医療を受けられるNHSという制度があります(処方箋は有料)。それだけ聞くと素晴らしいですが、ここ何年も、その制度について人々の不満は募るばかりという印象です。

英国の医療制度が日本と大きく違うのは、この国ではどんな病気の症状であっても、自分でどの専門医に診てもらうのかを判断するのではなく、まずGP(かかりつけ医)に診てもらって、そこから専門医を紹介してもらうということ。専門医を紹介してもらえたとしても、実際に診療を受けられるまでに数週間から数カ月待たされるというのも珍しくありません。

これは私自身と家族も何度も経験がありますし、私以上に深刻な症状の知人たちでも、診察や治療までの待機時間が長期にわたっている人が少なくありません。そのせいか、2024年の調査では約59パーセントの人がNHSの運営に対して不満だと答えています。

ただ、だからといってこの国の人々はNHSという制度をなくしてほしいとは思っていません。それどころか、この制度が英国にあることを誇りに思っている人がほとんど。ロンドンでの最初の下宿先のランドロードは渡英したばかりの私に、「英国では医療が誰でも無料で受けられる。これは僕がこの国で一番誇りに思っていることだ」と自慢気に教えてくれました。2012年ロンドン五輪の開会式でNHSが大きく取り上げられていたのも、そうした国民感情を表現したものでした。

私自身、これまで何度もNHSにお世話になってきました。特に妊娠中に救急車を呼んで緊急入院をし、妊娠中毒症で親子ともども命の危険がある状態だったのを、緊急帝王切開手術で救ってもらったことは、今でも感謝してもしきれません。


制度に問題があるとはいえ、実際の治療の現場ではスタッフの方たちは誰もがプロフェッショナルでフレンドリーで温かい。そんな医療従事者の方たちに信頼と感謝を寄せているのは私だけではありません。また、万が一大きな病気や事故に遭ったとき、高額な医療費に怯えることなく治療が受けられるという安心感は、特に実際にその状況になった人にとって、想像以上に大きな支えになっています。

だからこそ、英国の人々はNHSの運営方法に不満を持ち、批判しながらも、この制度を維持することを望んでいるのです。「医療費全額無料」の背景には山積みする課題がありますが、これは英国の人々が誇る制度であることは間違いありません。

 
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マクギネス真美マクギネス真美
在英ライフコーチ/編集者/ライター。2003年渡英。英国の食、文化、人物、生活などについて多媒体に寄稿。ポッドキャスト「The Real You with Mamita」とVoicy「英国からの手紙」のパーソナリティー。英国人義母に習い英国料理の研究もしている。
mamimcguinness.com
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