Maurice
モーリス(1987/ 英)
同性愛が犯罪と見なされていたエドワード朝時代、ケンブリッジ大学で学ぶモーリスは、同窓のクライブと恋に落ちる。
監督 | James Ivory |
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出演 | James Wilby、Rupert Graves、Hugh Grantほか |
ロケ地 | Wigmore Hall |
アクセス | 地下鉄Bond Street駅から徒歩 |
- 今週はジェームズ・アイヴォリー監督作品です。80年代に日本でも相当ヒットした、麗しき美青年たちの同性愛物語ですね。
- というわけで私サユリがお邪魔しました。美青年の恋とか言うと、腐女子好みの耽美マンガみたいな世界を想像しちゃうかもしれないけど、私はこの作品、恋愛映画として非常に素晴らしいと思うの。私にとっては「ザ・英国」的な作品の一つでもあるし。若きヒュー様が素敵すぎるわ……。
- なるほど、サユリさんは腐女子の走りだったんですね。
- だから違うって言ってるだろーが。
- あ、ヤンキーか。それはさておき本作は、以前捜査した「ハワーズ・エンド」と同様、E・M・フォスターの小説を基に、監督と公私ともどもパートナーであったイスマイル・マーチャントをプロデューサーに迎えて撮った作品ですね。
- 原作とはやや主題を異にしていて、人物描写もやわらかい感じになっているようですが、真実の愛と社会生活の板挟みで苦悩する男たちの姿を、アイヴォリー監督ならではの儚い美しさを漂わせる映像とともに描いていて、ストレートの男が観てもちょっと萌える、かもしれません(笑)。
- 物語の始まりはエドワード朝時代のケンブリッジ大学。ジェームズ・ウィルビー扮するモーリス・ホールは、ヒュー・グラント扮するクライブ・ダーラムと親しくなり、ある日突然、クライブに愛を告白されて面食らうんだけど、すぐに自分も彼を愛してるんだーッて気付くの。
- 映画内の大学のシーンは、原作者の出身校でもある名門ケンブリッジ大学の「King's College」が使われていますね。
- 学びの場で禁断の恋に落ちる、しかも初恋っていう設定がもう萌え萌えよね。しかもクライブってばモーリスを同性愛に目覚めさせておきながら「肉体関係を持つことはこの愛を損ねるに違いない」と言って、プラトニックな愛を貫こうとするのよ。
- 折しも同性愛が犯罪と見なされていた時代。高学歴で将来が約束されているアッパー・クラスのおぼっちゃんには、言わずもがなリスキーな状況です。しかし2人は周囲にはその感情を隠しながら、卒業後も家族ぐるみの親密な付き合いを続け、お互いの家を行き来する仲になっていきます。ちなみにクライブのロンドンの家はケンジントンのStafford Terrace 18番地にある「Linley Sambourne House」で撮影されていますね。
- ところが同窓のリズリー上院議員が、パブで男性と猥褻(わいせつ)な行為に至ろうとして逮捕され──こちらはブラックフライアーズ駅近く、Queen Victoria Street 174番地にあるその名も「Black Friar」というパブですが──社会的に抹殺されてしまうのを見て、クライブは恐怖におののいてしまうんですね。それである日、モーリスと一緒にコンサートに行くものの、冷たく当たってしまったり。このコンサート会場はボンド・ストリート駅近くの「Wigmore Hall」です。
- それで彼なりに悩んだ結果、モーリスに「お互い女性にも目を向けてみようじゃないか」なんて言ってさっさと結婚しちゃうんだけど、世間体やら社会的地位をクライブほどに気にしていない純情なモーリスは、クライブの言うことを理解しようと試みる半面、最大の苦悩に見舞われるのよね。
- そして身分の異なるもう一人の男の出現で2人の愛は……続きはDVDでどうぞ!
モーリスを心から愛してやまないんだけど、世間の目も無視できず、社会的地位も捨てられないクライブと、愛のためならすべてを捨てることも辞さないモーリス。私から見ると、モーリスの愛し方は非常に女性的な感じがするわね。どちらが正しいとか、どちらが幸せとかは誰にも分からないだろうけど……。クライブが自宅の窓辺で、学生時代のモーリスの笑顔を心に浮かべるラスト・シーンがたまらないわ。
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