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日経電子版Pro
Tue, 20 April 2021

第43回 2つのVISTA──2007年の年頭に当たって

世界経済のトレンド

あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。

年頭に当たって、経済面からみて今年はどういう展開(=VISTA)が予想出来るだろうか。ここ数年は、予想以上にグローバリゼーションが進み、ヒト、モノ、カネの世界循環が加速した。その基底にはIT技術、中でもインターネットとパソコン、携帯電話、ブラックベリー(通信機能を内臓した携帯情報端末)などの普及によるビジネスマン、学生、一般市民同士のコミュニケーション拡大がある。

その拡大テンポに追いつかなかったのが物流であり、資源の供給である。このため船賃や原油を始めとする原材料価格は高止まっている。ヒトの移動をサポートする航空輸送も、空港への投資不足、飛行機など輸送機器のイノベーション不足からニーズに追いついてない。ヒースローの混雑はいうに及ばず、航空会社の不景気は、格安フライトを除き産業自体に大きなイノベーションが何十年もないからである。

一方、追いつき引っ張っているのは金融で、BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国)などエマージング諸国における低賃金の労働供給の増加に伴うインフレ期待の落着きを背景に金利が低下、カネは投資先を求めて世界中で巡回した。

こうした動きは、既成秩序の崩壊を加速させている。取引所や破産制度などコストのかかる手続の迂回を意味するM&Aの国際的隆盛とこれに対抗する取引所自体の合従連衡、さらに労働規制を迂回する国際的なアウトソーシング、移民や労働集約財の貿易量拡大、などがその例である。達観すれば、これらの制度の後ろ盾であった国家自身がこの展開についていけていない。金融の世界でも国際的な金融危機への対応策は、問題意識のみあっても具体案は不十分だ。

グローバリゼーションは、大きな反動やリスクがあるとされながらも予想を裏切るスピードで加速し続けている。環境問題などボーダレスな解決を要する問題がクローズアップされてきていることもこうした動きと密接に関連がある。基本線は今年もこの延長線上にあると考えるのが適当ではないか。今年は、この展望を2つのVISTAが一段と発展させそうだ。

2つのVISTA

先述したように、ここ数年で台頭したエマージング諸国はBRICSだったが、投資家の今の注目はVISTA(ベトナム、インドネシア、南アフリカ、トルコ、アルゼンチン)である。BRICSもそうだったが、VISTA諸国に共通するのは、若年人口の増加国ということである。2050年にはこれらの国の人口が6億人を超えるという。英国、欧州企業のアウトソース先として南アフリカはもはや普通である。アジアの2国は日本との関係が深い。これらの国がインフレ抑制と消費市場拡大のリトマス試験紙になろう。

いま一つは、WINDOWSの次のOSであるVISTAの発売である。WINDOWS2000やXPと比べた特徴は、コミュニケーションをより容易にするためのネットワークとの連携強化、得た情報の処理を容易にするためのファイル検索や書類整理機能の強化、3Dや音声認識への対応、セキュリテイの強化だそうだ。画期的とはいい難いが、いずれもネットワーク拡大の中での病理現象への対処強化の意味を持つ。いずれもこれまでの延長線上で、世界の経済的な相互依存性と個人、市民の関係性強化に資する。

落とし穴はないか

関係性=ネットワークの弱点は、バックアップがない場合には、一旦発生した小さな蹉跌が連鎖して世界的な危機になりうるということである。VISTA諸国、中国やインドで中産階級の消費が十分拡大するまでの間に米国における消費の勢いが弱まると、中国や日本の設備投資が過剰となり、企業に融資している金融機関の不良債権問題の再発、金融市場の不安定化が容易に予想される。インターネットも群集心理を生みやすいという面がある。一通りでない価値観、専門用語で言えば「分散」、平たく言えば多様性こそが、リスクの軽減に役立つと思われる。

危機の局面か地政学的な軍事紛争の中で、再度国家の出番が少しは来るような予感がする。その際に米国のネオコン的な方法論はもはや通用しない。市民、国民のネットワークに乗ったうえで、軍事のみならず、外交、経済、エネルギー、環境などで世界に貢献するという日本および日本人のあり方に希望をもっているが、安倍政権がその方向にあるのかどうか、夏の参議院選挙の注目点ではないか。

(2007年1月4日脱稿)

 
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Mr. City:金融界で活躍する経済スペシャリスト。各国ビジネスマンとの交流を通して、世界の今を読み解く。
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