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Sat, 23 November 2024

第122回 2010年の世界経済展望—チャンス/リスクの大きな年

2010年経済の標準予想

あけましておめでとうございます。本年も宜しくお願いします。

2010年は、経済面ではどういう年になるか。先進国では1~2%の低成長が続くものの、BRICS、VISTAなどの新興国の経済成長が著しく、全世界では3~4%程度の経済成長が期待できると考えられる。成長のエンジンは、中国とインドを中心とするアジアと、パイは小さいながらも急成長するアフリカ。そして足を引っ張りそうなのが、東欧という爆弾を抱える欧州という構図になりそうだ。

そうした中、経済回復がもたつく可能性があるのが、不良債権問題が尾を引く米国と、戦後における高度成長の経済モデルから低成長・高齢化社会への脱却が遅れ、構造問題となっている日本ということになる。英国は、欧州のお荷物とならない程度の回復は認められるが、欧州のヘゲモニーを取れるほどの経済力を維持することは困難な情勢となろうし、それが労働党内の分裂の素地になり、逆に保守党のキャメロンの急所になるのではないか。またリスクとして注意を要するのが、前々回、前回に書いた欧州におけるEUの危機と中国のバブル・リスクである。いずれも世界経済にとっては大きな時限爆弾であるように感じる。

こうした変化をもたらした要因は、結局は第一に米国人による過剰消費の終了、第二に共産圏の解放による安価な労働力の資本主義社会への放出と、そうした労働力が購買層に転化しつつあることの2点に集約できる。

結局は自助努力次第


金融サミットの開催など、2009年には世界的な
不況の対応に追われた
Picture by: Stefan Rousseau/PA Wire/PA Photos
以上が標準的な予想だが、あくまで予想であり、平均的な姿に過ぎない。こうした予想を前提にして、企業や個人が自らの強みや弱みを知り、強みを伸ばすように経営を行えば、その会社や個人は、世界経済の良し悪しと関係なく、成長することが当然可能である。その意味では、個人や企業は平均的な経済の動きから逃れることは容易ではないが、自らの行動を変えることで乗り越えられるということを忘れてはならない。そして、そうした高い努力で成果を挙げることのできるαの大きな企業(株式市場では、市場全体の平均と個別企業との収益率の差をαという)の株価は高くなるし、投資家はそうした企業を探すのが投資の醍醐味ということになる。

ではαの高い企業とはどういう企業か。米国人の過剰消費の終了と、共産圏の解放による安価な労働力の資本主義社会への放出及びその労働力の購買層転化は、20年来の大きな構造変化なので、生産体制、ライフスタイル、消費行動の大きな変化を伴わざるを得ない。ところが現在、日本は元より、世界中でもこれらの変化に定見や決まった答えは見出せていない。ということは、経済構造の変化を感じ、中長期で見た強み、弱みを知り、生産やサービス供給体制の抜本的な改革を迅速に行うことが、成功への近道ということになる。こうした根本からの見直しは、成否について不確実性が大きいゆえに、チャンスも大きいが、リスクも大きいことになる。

リスクをチャンスとするために

結局、この社会で相変わらず活動を続けるためには、変わり続ける必要があること、即ち、変わらないために変わることが生き残る早道であり、そのために経営者はお客や従業員との対話を徹底的に行い、ライフスタイルや消費行動の変化を厳密な言葉で具体的に詰めてみることが有効と思う。そしてリスクをチャンスとするためには、確実な変化に対応することである。

アジア諸国の経済成長はほぼ確実であり、アジアでの消費の伸びは金融の伸びにつながる。日本のマスコミは報道しないが、昨年、中国は上海、香港、台北の金融市場一体化構想を発表した。アジアでデファクト・スタンダードを取ること、日本の少子高齢化社会で人口減少による生活変化に対応すること等々、こうした確実な成功の種をみすみすやり過ごさないように迅速に対応すれば、今年はチャンスの年だったと後に振り返ることになると思う。そうすれば、日本に横溢(おういつ)する、経済のみならず政治から文化から、何もかもを含めての精神の「不景気」を克服できると信じる。

(2010年1月7日脱稿)

 

Mr. City:金融界で活躍する経済スペシャリスト。各国ビジネスマンとの交流を通して、世界の今を読み解く。
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