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Wed, 11 December 2019

第131回 日本へのガラパゴス批判

日本製品ガラパゴス論

数年前に流行った、「日本製品ガラパゴス論」とは何か。ガラパゴス諸島は南海の孤島であったために、ダーウィンの進化論の研究において、生物進化を観察するのに意義のあった島である。周りの島や大陸との接触がなかったため、独自の進化を遂げた生物がたくさんいる。その代わり、その生物たちは、島の外では生きられない。島に外来品種が入ってくると絶滅の危機に瀕する。

日本製品は、主なユーザーである日本人の細部へのこだわりや美意識を反映して、独自の凝った仕様や非常に精密な作りを有しており、同時に正確で故障しにくいという特徴を持っている。しかし、こうした巧みな工業技術は必ずしも普遍性を有しないので、日本以外で通用せず、世界制覇できないという。これが、日本製品ガラパゴス論である。

特に携帯電話、DVD、新幹線、銀行のATMなどを指して言われることが多い。トヨタ自動車のブレーキ問題も然り。高速道路で急ブレーキを掛けた場合にタイヤが急に止まってスリップすることがないようにブレーキの効き目を制御するためのプログラムが、説明なく従来よりも長い距離で効く仕様になっていたというのだから、一種の凝りすぎの例とも言えるのではないか。

ガラパゴス論の陰り

最近になって、ガラパゴス論は事実により否定されつつある。例えば、携帯電話を見てみると、iPhoneなどのスマートフォンで実現していることは、アプリの流通を除けば、もともとドコモがiモードで実現したことに近い。新幹線も台湾のほか、色々な国で導入が検討されている。またDVDやブルーレイ・ディスクは、日本の仕様が世界標準の一角になっている。確かに欧州は、会計基準や国際標準化機構(ISO)に象徴される工業の分野では世界標準作りが上手で、ドイツなどそうした規格作りで食べているのではないかと思えるほどだが、ともかく、日本製品の精巧さ、丈夫さについて、世界の評価が追いついてきた感がある。

一方で気になるのは、日本政府や日本の企業がそうした事実をはっきり認識しているかどうかということだ。経済産業省は、値段の高い高付加価値品も良いが、日本企業はアジアの大衆市場=ボリューム・ゾーンへ食い込むため、適当な値段の中付加価値品も作るべきだと言うのである。確かに、インドにおいてスズキの軽自動車は大成功した。しかしながら、軽自動車は普通自動車の低付加価値品と捉えることはできないと思う。そもそも、インド人の生活に根ざしたニーズの掘り起こしに十数年かかっている。中級品や低付加価値品は、インド企業や東南アジアの企業が作ることが必至であることからも、日本企業にはユーザー・ニーズに合う高付加価値品を提供することこそ求められていると思う。

先日、JR東海の会長が、中国による高速鉄道の売り込みについて、新幹線の技術を利用しながら、安全性を犠牲にしていると批判したと報道されていた。日本では人命を守るためのコストは絶対であり、逆に言えば、中国はそうでないと言っている。専門家ではないので、安全性の如何について事実関係の確認はできないが、もし事実なら、中国を批判する必要などないのではないか。要するに、新幹線と中国の高速鉄道は、安全面で品質が違うということである。自社製品の優れた点を述べることで足りると思う。

日本製品の質の維持

以上の事情を鑑みた場合、日本製品の質を落とすことは、決して得策ではない。全部ではないにせよ、世界で売れるのは、消費者がその国や企業の主張や考え方に共感し、モノやサービスを受け取りたいと感じる製品に限られている。ユーザーのニーズを聞くことは当然必要だが、ユーザーに妥協した製品は売れていない。日本は、もはやガラパゴスではあり得ない。誇るべき製品の精巧さ、丈夫さ、最近では効率性をさらに追求することが、成功の近道だと思う。

また日本国内の観光産業について言えば、これから中国人などアジアの観光客がどっと日本を訪れる時代が来るであろう。その時に中国人のニーズに妥協して、日本の自然を壊してリゾートを作るようなことをすれば、社会的な損失になる。日本が観光で売るべきものは、日本の山河と日本人のホスピタリティーだろう。どこの国でも、こうした大切にしなければいけないものというのは同じと思う。日本の行く末を心配する論調が、日本は元より、欧米メディアでも目立つので考えてみた。

(2010年4月11日脱稿)

 
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Mr. City:金融界で活躍する経済スペシャリスト。各国ビジネスマンとの交流を通して、世界の今を読み解く。
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