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Thu, 21 November 2024

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第38回 想像力をかき立てる影絵のように
~逆光を逆手に取る~

カメラのモードを、「オート」や「プログラム」に設定した状態で逆光下の撮影を行うと、「光が多過ぎる」と認識したカメラが、取り込む光の量を少なくしようと働く傾向があり、結果として、撮影した画像は適正な明るさよりも暗くなりがちです。しかしこういった場合には、露出を1〜3段階くらいプラスに補正すると、肉眼で見たのと同じように再現できるというのは、以前にお話した通りです(本コラム第15回参照)。

今回は、あえてこのプラス補正を行わず、被写体をシルエット状に黒く塗りつぶしたように撮影する例を挙げたいと思います。

写真1逆光下でカメラが示した「適正露出」より、2段階明るめに撮影したものです。像のディテールは確認できますが、背景に対して露出が明る過ぎるために、空が真っ白くなりました。一方、写真2はカメラが示した露出をあえて補正せずに撮影しています。像のディテールは影になり見えなくなりましたが、背景の空の青さが際立ち、写真1では確認できなかった、像を突き抜けるような飛行機雲が現れました。このため、像の「静」と飛行機雲の「動」が織り成すコントラストも表現できています。

シルエットしか写っていない写真から、被写体の情報を得ることは難しいかもしれません。しかし、思った以上に想像力がかき立てられるのではないでしょうか。


(写真1)
ネルソン記念碑の背後に太陽がある真逆光下で、露出を2段階
プラスに補正して撮影。像のディテールは確認できるが、
明る過ぎて空のグラデーションが再現できていない


(写真2)
カメラが示した適正露出で撮影。像は完全に黒く影に
なっているが、空の青さが際立ち、像との色の対比が面白い


(写真3)
空以外のすべてを黒く影状にしてしまうと、遠近感までもが
失われる面白い効果も


(写真4)
逆光下でカメラが示した適正露出より、さらに1段階マイナスに
補正し、沈む太陽の輪郭を見せた。他の要素がすべて影になると、
視線も太陽に向きやすくなる


 

前川 紀子: 滋賀県出身、1998年よりフリーランスに。以後フード専門カメラマンとして食の専門誌やレシピ本を中心に仕事をする。2007年に渡英、08年よりロンドン在住。
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