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日常にあふれるチャリティー
「それは何のために入れているの?」
数年前に、義父母の住む英南西部デヴォンに数日宿泊したとき、義母と一緒にスーパーに買い物に行ったことがありました。会計を終えた後に、義母が店の片隅に置かれていたショッピング・カートに、自分が買ったシリアルとパスタを入れていたので、不思議に思って尋ねたのです。
「これはね、フード・バンクのために寄付するの」。よく見ると、カートには「この地域のフード・バンクのために、食品を寄付してください」というメッセージの書かれたボードが貼ってありました。
フード・バンクとは、食品を購入するのに困窮している方たちが、無料で食品や日用品を受け取ることができるチャリティー組織のこと。英国では1400万人が貧困生活に陥っていて、昨年度にこの施設を利用した人は190万人に上ると言われています。
義母は、毎回スーパーで買い物をするたびに、缶詰やシリアルなどを一つか二つ余分に買って、寄付をするのだそうです。
実はそれまで、スーパーにそんな場所があるとは全く気付いていませんでした。地元に戻って、近所の大型スーパーに行ってよく見ると、確かに同じようなカートがあり、ベイクド・ビーンズの缶詰やビスケットなど、たくさんの食品が置かれていました。
それを見ながら改めて英国では「チャリティー」が特別なものではなく、身近な日常にあることを思い出しました。
よく知られるところでは、どの街にもたいていはチャリティー・ショップと呼ばれるお店があります。そこでは人々が寄付した中古の衣類や書籍、食器などが販売されて、その売り上げがチャリティーの基金となっています。
子どもたちの通っていた小学校では、2カ月に1回くらいの割合でチャリティー・イベントがありました。その日、子どもたちは仮装をしたり、制服の代わりにパジャマを着たり、奇抜な髪型をして学校に行っていい代わりに、1ポンドを寄付するのです。これらのイベントを通して、英国では、幼いころから「チャリティー」に参加することが当たり前という環境で育つのだということを知ることができました。また、私自身のチャリティーに対する考えも「気楽に気軽に参加するもの」というふうに啓蒙してもらった気がします。
現在、新型コロナウイルスのワクチン接種が急速に進んでいる英国では、接種会場で多数のボランティアが活躍しています。2020年1回目のロックダウン実施時に、政府がNHSへのボランティアを呼び掛けた際にも数日のうちに募集数の3倍以上の人が応募しました。どちらも、つくづく英国にはチャリティーやボランティアが根付いていると感じる出来事です。