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Tue, 24 December 2024

英国の
愛しきギャップを
求めて

英国に暮らして20年。いまだに日々のあらゆる場面で「へー」とか「ほー」とか「えー」とか言い続けている気がします。住んでみて初めて英国の文化と人々が、かくも奥深いものと知りました。この連載では、英国での日常におけるびっくりやドッキリ、愛すべき英国人たちの姿をご紹介したいと思います。


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お客さまは神様じゃない

お客さまは神様じゃない

「お客さまは神様です」の精神が徹底されているせいでしょうか、日本ではあらゆるビジネスが丁寧で迅速。電車や地下鉄は時刻表通りに発着が当たり前。どこのお店に行っても、敬語で話しかけられ、丁寧なお辞儀をされる。このような日本のカスタマー・サービスが世界一だという評判は英国にも伝わっています。

「お客さまは神様です」のフレーズの生みの親ともいわれる歌手、三波春夫さんのウェブサイトによれば「『お客さまは神だから徹底的に大事にして媚びなさい。何をされようが我慢して尽くしなさい』などと発想、発言したことはまったくありません」と記載されています。とはいえ日本では、この言葉が一人歩きして、どんなサービスも「お客さまは神様だから徹底的に尽くす」をモットーに社会が動いているように思えます。私がそれに気付いたのは、英国に住むようになったからなのは間違いありません。

英国では、客もサービスする側も対等です。というよりむしろ、お客さんの側はお店のスタッフに対して丁寧に接するのがマナーだと考えられています。

例えばレストランに行って注文をするとき、お客さんは「○○をください、please」と必ず最後に「please」を付けます。それがミシュランの星付きレストランだろうが、ファストフードの店だろうが関係ありません。私がそれを覚えたのは、夫やその友人たちと頻繁に食事に行くようになってからでした。誰もが一人ひとり注文するたびに「please」を付けているのを見聞きして、お店の人に何かを頼むときには、必ず「please」を付けなければいけないのだと知ったのです。

さらに、注文をし終わってメニューを店員さんに手渡すときには、必ず「 Thank you」と言います。注文したものが運ばれてきたときにも「ありがとう」とお礼を言うのはお客さん側です。「お店の人に対してすごく礼儀正しいんだね」、付き合いだしてすぐのころ、夫にそう言うと「日本ではお店の人に『ありがとう』を言わないの?」と驚いたように聞き返されてしまいました。


また、英国では、何かの修理をお願いしたとき、その人が約束通りの時間に来ないことがよくあります。そんなときでも、英国の人々は怒るどころか、「 紅茶はいかが?」とにこやかに迎え入れます。それについて英国人に質問すると「怒っても仕方ない」「怒ってはいても、相手に向かって怒りを向けるのは失礼な態度」という答え。つまりこの国では「自分がお金を払う客だから偉い」という発想はないのです。客とサービスする側が対等でフラットな関係。だからこそ、客側もマナーよく振る舞うことが当然。今ではこの英国流が心地よく思える私ですが、英国にお住まいの皆さんはいかがでしょう?

 


マクギネス真美マクギネス真美
英国在住のライフコーチ/編集者/ライター。2003年渡英。英国の食、文化、人物、生活などについて多媒体に寄稿。音声メディアVoicyパーソナリティー。英国人の義母に習い英国料理の研究もしている。
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過去のコラム:英国の口福を探して
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