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褒めて、褒めて、また褒める
イングランドではロックダウンの規制緩和第3段階となりました。屋内で2世帯まで集まることができるようになったので、5月最後の連休を使って、15カ月ぶりに義父母に会いに出掛けました。「会いたかったわー。元気? あら、素敵なドレスを着ているわね!」「会えるのを楽しみにしていたよ。ラブリーな笑顔が最高! これを見たかったんだ」。
義父母とかわるがわるハグとキスをすると、2人とも、私や子どもたちのことを口々に褒めてくれます。こんなふうに、英国では誰かと会ったとき、必ずといっていいほど、褒め言葉から始まります。
以前、近所に住んでいたアリソンは、ほぼ毎日のように顔を合わせているのに、会うたびに「マミ、今日のそのスカート似合うね」「玄関の鉢植えのゼラニウム、すごく上手に育てたね!」と褒めてくれました。とにかく褒めることが大事と悟った私は、アリソンをどう褒めようか、毎日考えるようになりました。
子どもたちが幼いころには、公園に行くと、「Well done!」という声があちこちから聞こえてきました。子どもが滑り台から降りてきたとか、ブランコを自分でこげたとか、子どものどんな行動も、見守る大人たちは大袈裟なほどに褒めたたえます。よその人が見ている前で自分の子どもをおおっぴらに褒めるのです。日本でなら「うちの子はまだブランコに一人で乗れなくて」などと、つい子どもの「できない」ことに目を向けてしまいそうです。また、どんなに自分の子どもをすごいと思っても、人前でそれを口にするのははばかられるのが日本。でも、英国では家族を人前で褒めることは決して悪いことではありません。結婚当初は、夫が義父母や友人の前で私を褒めてくれると、どういう態度をとったらいいか途方にくれて、もじもじしてしまうのが常でした。「謙譲の美徳」を自分のみならず身内にも適応する日本人的感覚からは理解し難いものだったからです。
その後、何人かの英国人に聞いてみましたが、「家族といっても自分とは違う人なのだから、人前でだって褒めるのは普通のこと」というのが共通した意見でした。
このように、褒めることが日常だからでしょうか。あらためて考えてみると「Well done」をはじめ、「awesome」「brilliant」「superb」「excellent」「fantastic」「amazing」「fabulous」「wonderful」「incredible」など、英国には褒め言葉がたくさんあることに気付きます。褒め言葉が豊富だから、英国人が褒め上手なのかどうかは分かりません。でも、英国には「褒めて、褒めて、褒めまくる」文化があるのは間違いありません。