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自動販売機はUFOキャッチャー
私が英国で初めて買ったものは、ヒースロー空港の自動販売機で買ったエビアンのボトルでした。
観光ですら1度も来たことがなかったのに「1~2年住んでみたい」という曖昧な予定でたどりついた英国。最初の数週間お世話になる予定の下宿先に電話をして、「今、ヒースロー空港に着きました。これからタクシーで行きます」と、語学学校を紹介してくれたエージェントに教えてもらったメモ通りに伝えたら、緊張のせいか喉がカラカラに。自動販売機を見つけ、エビアンの水を飲んだときには心底ほっとしました。英国に着いたばかりの私には、お店を探して、その上、英語を使って飲み物を買う心の余裕などなかったからです。自動販売機というのは、言葉が話せなくてもモノを買うことができるという意味でも便利だと気付いたのは、このときが初めてでした。
ちなみにこの「お金を入れたら商品が出てくる」という自動販売機は、英国で1615年にたばこを販売するものとして発明されたのが始まりです。当時のパブ(イン)ではかなり一般的に普及していたものだといわれます。とはいえ、鉄道システムと同様に、発祥の地でありながら現代ではいま一つうまく機能していない(!)のがこの国の自動販売機だというのは、ここで暮らしている皆さんには共感していただけるのではないでしょうか。
あるとき、駅のホームの自動販売機を思い切り蹴飛ばしている人に驚いていると、一緒にいた英国人の友人が「自動販売機の途中で引っ掛かって商品が出てこないから、ああやって取り出そうとしているんだよ」と教えてくれました。そしてこれは珍しい光景ではないことも。その後、学校の自動販売機のマーズ・バーを買おうとして商品が出てこなかった経験をした私は、飲食系の自動販売機は一切利用していません。
日本に行くと、自動販売機で缶コーヒーを買うのを楽しみにしている夫は、英国の自動販売機は日本のUFOキャッチャーのようなものだといいます。商品がもらえるときもあれば貰えないときもある。つまりは運次第ということ。これは英国流ジョークとはいえ、そう考えてもおかしくないのが実情です。また、ある友人は、英国の自動販売機には、クリスプス、チョコレートに炭酸飲料など、体に悪いものしか売っておらず、買いたいものなんかないと嘆いていました。
ところで今回調べてみると、JR東日本による日本の自動販売機が2019年ごろからロンドンをはじめとする英国主要都市に設置されだしたとのこと。私はまだお目にかかったことがないのですが、もしかしたら、日本のテクノロジーが英国自動販売機のイメージを刷新する日も近いかもしれませんね。