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英国の単位に混乱
子どもたちが生まれたばかりのころ、家にヘルス・ビジターと呼ばれる訪問看護師さんが来てくれました。赤ちゃんの様子をチェックしてくれて、産後のさまざまな相談に乗ってくれるのがヘルス・ビジターの役目です。2回目に来てくれたときに、娘の成長具合が気になるからと、母乳だけでなくミルクを与えることを勧められました。
「1回に○○オンスくらいは飲まないとね。次回チェックのときに確認するためにも、飲んだ量を記録しておくといいわ」。
そう言われてもオンスをすぐにミリリットルの単位に変換できない私は「何ミリリットル?」と聞き返したのですが、「悪いけど、分からないわ。自分で調べて」と言われてしまいました。
幸い英国の哺乳瓶にはオンス(oz)とミリリットルの両方の単位で目盛がつけられているのですぐに目安の分量はわかりました。ちなみに1オンスは28.413ミリリットルです。
ミルクだけでなく、英国では日本で使われているのとは違う単位によって示されているものがいくつかあります。というのも、日本ではメートル法が使われているのに対し、英国では一部のものについては帝国単位(インペリアル・ユニット)と呼ばれる単位を使い続けているのです。帝国単位は1824年に制定され、26年から大英帝国にて公式に利用されるようになりました。例えばよく知られるところでいうと、パブで飲むビールのグラスの単位はパイントといい、約568ミリリットルです。
また、道路の距離や車のスピードはマイルで示されています。英国での運転免許取得のために練習をし始めたとき、高速道路でもない道の速度リミットに70マイルがあることを知り、それを換算すると112キロだと気付いたときには「英国の道では日本の高速よりも速いスピードで運転するの!?」と、見習いドライバーとしては不安になったものです(最近では日本の高速道路の制限速度が120キロになったところもあるようですが)。
欧州連合(EU)の度量衡令により、メートル法を使用するように義務づけられたものの、前述のように帝国単位を一部使い続けてきた英国。昨年にはエリザベス女王在位70年記念式典に合わせて、帝国単位を完全に復活させようという試みを当時の首相ボリス・ジョンソンが発表しました。それは実現しなかったものの、帝国単位を復活させるという案が無くなったわけではありません。この案については、ブレグジットの国民投票のときと同様に、賛否両論が英国内で分かれています。世論調査ではEU離脱について「後悔している」との意見が多くなっているといいますが、今度の帝国単位復活については同じような結果にならないことを祈ります。