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「ソーリー」を連発する英国人
私のように20年以上も英国に住んでいると、渡英当初には驚きだったはずの英国人の態度になじみすぎて、もはや自分も英国人のように振る舞ってしまっていることも少なくありません。それに気付くのは、なんといっても、日本に一時帰国したときです。普段、自分が英国で当たり前にやっていることをして、周りから不審な目で見られたとき「あ、これは英国とのギャップだ!」と、はっとするのです。
先日気付いたのは、英国では、人にぶつかってしまったとき、あるいはぶつかりそうになると必ず「ソーリー」と言うということでした。スーパーの狭い通路で人とすれ違いたいとき、歩道で追い越したいときなど、英国では人に触れた(ぶつかった)ときはもちろんのこと、ぶつかることを避けるためにも「ソーリー」と言います。それも多くの場合には、片方の人だけではなく、両方が同時に「ソーリー」といって、ニコッと笑い合う場面も少なくありません。
でも、日本ではお互い無言なことがほとんど。時には避ける様子もなく(相手が避けるのを見越して?)突進して来る人もいます。そして私はそういう場面で「ソーリー」と言いかけた自分の言葉を慌てて「すみません」と言い直したことも数知れず。
とはいえ、今日お話ししたいのは、日本人のマナーのことではなく、あくまでも英国人が「ソーリー」を頻繁に口にするということです。
私の夫が「英国ではソーリーという言葉ばかり言いすぎることをお詫びします」などと冗談を言うほど、英国では「ソーリー」という言葉を聞くというのは、英国に暮らしている方なら誰もが同意してくれるはず。
少し古いデータですが、BBCによれば、英国では、平均的な人は1日に約8回「ソーリー」と言い、8人に1人は1日に20回もこの言葉を口にしているのだそうです。ただ、「ソーリー」という言葉は英国人にとって「謝る」というニュアンスよりも、礼儀正しくみせる、相手を思い遣っていることを伝える、と言った意味で使う場合のほうが多いともいわれます。
それが証拠にといいますか、本当に謝るべきとき(自分が過ちを犯したとき)には、「ソーリー」をなかなか言わないのが英国人。なぜならそれは、自分の罪を認めたことになるからだそう。確かに、日常生活では「ソーリー」を連発するくせに、仕事の場面になると、絶対謝らないという人は少なくないような気もします。
さて、皆さんは1日に何回くらい「ソーリー」を言っていますか?