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英国人は幽霊大好き
私の住むイングランド西部ブリストルには、地元住民だけでなく、観光客にも人気の有名なパブがあります。それは1664年から存在するランドーガー・トロウ(The Llandoger Trow)というお店です。ここはロバート・ルイス・スティーヴンソンによる小説「宝島」の舞台として知られ、遠目に見てもすぐ目につくティンバー・フレームが特徴のパブ。人気の理由は、歴史が古く、誰もが知っている小説に関係するというだけでなく、幽霊が出るということも関係しているといわれています。
以前、日本から来た友人を連れてこのパブに行ったとき、カウンターの中にいたバーマンが「日本から来たの? このパブには幽霊がいるって知ってる?」と話し掛けてきました。怖い話があまり得意でない私は幽霊を見てみたいとは思わなかったのですが、このお店にはなんと15(人?)もの幽霊がいるそうです。お店の人によれば、ブリストルにはほかにも幽霊が出るといわれる古いパブがあるので、わざわざグループで幽霊ツアーと称して、遠くから尋ねて来る人たちもいるのだそうです。
英国に住んでいる皆さんはご存知の方も多いと思いますが、実は幽霊が出るパブというのは、ブリストルだけでなく英国中にあります。それが証拠に、ガイドブックやオンライン・マガジンなどでも、英国の観光案内には必ずといっていいほど「英国で最も呪われた(Most Haunted)パブ・ベスト10」などといった記事が紹介されています。そして、幽霊が出る(呪われた)場所は、パブだけでなくホテルやB&Bなど、全国に散らばっています。私は幽霊の出るホテルには泊まりたくないですが、興味のある方は「Haunted Hotel UK」などで検索をかけると、たくさんの候補が出てきます。また、ロンドン塔など歴史的に重要な建物であれば、幽霊、超常現象話には事欠かないのがこの国だというのは世界的にも知られています。
加えて、商業施設や歴史的建造物のみならず、一般住宅でも幽霊が出るという家が少なからずあります。内装を現代風にしてあっても、建物自体は100年、200年経っている住宅もたくさんあるので、幽霊が出てもおかしくないのかもしれませんが、そういった超常現象がある家でも問題なく購入されていくのがこの国らしいともいえます。また、2022年にある家具会社が発表したリサーチ結果では、「超常現象が起こる」郵便番号の物件は、同じエリアの平均的な住宅よりも12パーセント高い価格で取引されていることが分かったそうです。もちろん、全ての幽霊関係の家が高価になるとは限りませんが、不動産ビジネスをしている人にとっては重要なポイントかもしれません。それにしても英国人の幽霊好きにはちょっと驚いてしまいます。