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英国の冬はなぜつらい
先日出会った、昨年英国に引越してきたという数人の日本人たちが異口同音に言っていたのが「英国の冬がつらい」ということ。ある人は「鬱っぽい感じで外に出る気がしなくて数週間引きこもっていた」とまで。
実はこれ、私にも心当たりがあります。この国に住むようになって、冬になるとどうも気分が落ち込んでしまって仕方ありませんでした。2010年ごろに英国人の友だちから、「それはSADじゃないの?」と言われて調べたところ、SADとはSeasonal Affective Disorderのこと。英国内では9〜4月の間に、約50万人の人がかかるといわれている季節性感情障害でした。NHSのサイトによれば、SADの正確な原因は完全には解明されていないものの、多くの場合、秋から冬にかけて日光を浴びる機会が減ることに関係しているようです。主な説は、日照不足によって脳の視床下部が正常に働かなくなるというもの。それにより、気分、食欲、睡眠に影響するホルモンのセロトニンが低下し、憂鬱な気分につながるようです。
思い起こせば、英国で迎えた初めての冬から、私にもSADの兆候があったようです。というのも、当時通っていたUCLの課題で出されていたエッセイがまったく書き始められず、全ては自分の英語力の無さゆえ……と自分を責め、「どうしていつまでたっても、こんなにも英語ができないんだろう」と涙をこぼしたこともしばしばで、毎日気分が下がっていました。
それから数年たち、SADのことを聞いてから「英国のこの暗い冬が原因だったんだ!」と納得がいき、それからは対策を講じました。まずは生活習慣の改善として、できるだけ体を動かすこと、お風呂に入ってリラックスすることをしました。そして、ブルーライトと呼ばれる特別なライトを買って、それを毎日一定時間浴びるようにもしました。また、GPに相談して認知行動療法という心理療法で、自分のマインドを整える訓練もしました。それ以外にもさまざまなことを実践してきて、 今では暗くてジメジメして寒いこの国の冬も、気分が下がることもなく、毎日を笑顔で暮らせるようになりました(長く住んだゆえの慣れもあ るかもしれませんが)。
英国人に「日本の冬は英国に比べて寒いの?」と聞かれるたびに、「寒さは同じくらいだと思うけど、日本の冬は好天続きでお日様の光を十分浴びることができるから、英国みたいに厳しくはないよ」と答えています。ただ、北陸出身の知人が「私の地元では英国の冬に似て暗くてつらかった」と言っていたので、必ずしも日本中が冬でも好天というわけではないようです。でも、日本と違い、英国の冬は国中どこも暗いですよね!?