今年だけで計8回の英国公演を実施
VAMPS インタビュー
「ロック音楽への需要を日本国内だけで求めるには限界がある」との思いから、積極的に海外展開を行う音楽ユニット、VAMPS。今年だけで英各地で計8回の公演を予定している彼らが、英国での活動について語る。
VAMPS
ロック・バンド、L'Arc~en~Cielのヴォーカルを務めるHYDEと、Oblivion Dustのギター及び作曲を担当するK.A.Zが2008年に結成した音楽ユニット。結成当初より、日本国内外での公演活動を積極的に行っている。英国では2013年10月と14年3月にロンドン公演を行い、同年6月にはイングランド中部レスターシャーで開催された野外音楽フェスティバルであるダウンロード・フェスティバルに参加。去る7月10日、11日にはロンドンで開催されたJAPAN NIGHTに出演した。また11月にはフィンランドのヘヴィメタル・バンドであるアポカリプティカの英国ツアーにスペシャル・ゲストとして出演する。www.vampsxxx.com
Photo: Ayame Mizuno
まず、2014年に出演したダウンロード・フェスティバルでの出来事を振り返らせてください。最後の曲を演奏中に、制限時間オーバーという理由で強制終了となるハプニングがありました。
HYDE: もちろん最後の曲を終えることができなかったのは残念。ただライヴをやっている間に観客の身体が徐々に揺れていくのが分かったので、そうした手ごたえを得ることができたという収穫もありました。
K.A.Z: たとえ最後の曲が一部演奏できなかったとしても、その最後の曲に至るまでに十分伝えることができたのではないかと思うよ。1曲できなかったのは残念だけど、そうした制約の中でも伝えるべきものは伝えることができたな、と。
音響が急に止められたときには、お二人はどんな思いを抱いたのですか。
HYDE: そりゃあ、びっくりしましたよ。腹も立ったし。僕らはきちんと時間内に演奏を終えられるようにあの日のメニューを作ってたんです。時間は絶対に守っていたはず。それなのに途中で止められてしまったから、「なんでだろう、なんでだろう」という思いでしたね。
K.A.Z: ステージから降りた後は、バンドのメンバーもスタッフも、全員がぽかーんとしていたよ。何が起きたのか全く分からなかった。なんで音が止まったのかなって。
海外フェスにおけるほかのアーティストの演奏は気になるものなのでしょうか。
HYDE: 自分たちの出番を待っている間、その前に出演しているバンドの演奏をステージの後ろから観るということは、例えばそうしたバンドがどっかんどっかん盛り上がっているところを間近で目撃することになるわけで。自国出身のバンドには、既にそれぞれ固定ファンがいるわけですよね。一方で僕らは英国ではまだ全然ライヴをできていない、言わばまだ新人の状態。自分たちが出てもこれほど盛り上がらないのではとか、今は満員だけどこの観客は僕らがステージに出たときにはいなくなっちゃうんじゃないかといった不安は少しあるかな。
K.A.Z: 僕は前のバンドをあえて観ることでテンションを上げるようにしています。同じ空気感に合わせるというか。何も観ないでステージに立つと、自分のテンションをゼロから上げなきゃいけない。ほかのバンドを観ていると徐々にテンションが上がってきて、自分たちの出番となったときにちょうど良い状態になります。
Photo: Ayame Mizuno
英国には特有の批評文化があります。お二人はそうした批評記事に目を通しますか。
HYDE: 見てないですね。
K.A.Z: 僕はダウンロード・フェスに出演した後に出たものは読みました。良く書いてくれていたものがあったので、それは純粋にうれしかった。
7月10日、11日には日本の音楽を海外へと紹介するイベントであるJAPAN NIGHTに出演しました。一方で11月から行われる英国ツアーでは、取り立てて日本のバンドであることを打ち出すことなく、フィンランドのヘヴィメタル・バンドであるアポカリプティカとともに英各地を周ります。
HYDE: むしろ、後者の方が自分たちのスタイルなのかもしれないね。普段から日本を背負って音楽をやっているつもりはないので。むしろ自分たちを全く知らないお客さんの前でアピールをする方が効果的。そういう観客の前で演奏するのはまさに「臨むところだ」という気分になりますね。
K.A.Z: (複数のバンドが出演する)JAPAN NIGHTでは、やはりVAMPSへの歓声を一番でかくしたい。また11月の英国ツアーも大事にしたい。とにかくたくさんの人に聴いてもらいたいというのが根底にあるので、ステージに立つという意味においてはJAPAN NIGHTも11月の英国ツアーもどちらも大切にしたいな。
HYDEさんはステージ上で、歌や演奏以外にも英語で色々と叫びながら観客を煽っていますね。そうした英語のセリフは事前に準備しているのですか。
HYDE: 事前にある程度は考えてます。何を言うべきなんやろかって。そうしたライヴで使える言葉って、国によって結構違うんです。何も知らないままに日本語のセリフをただそのまま訳すと、例えば「皆さん、ノってらっしゃいますか?」みたいなおかしな言葉になり得るので。だから事前に色々な人に聞いて調べておかないといけない。まだまだ分からないことがいっぱいあります。まあ簡単な言葉なら、準備もせずにその場で何か叫んじゃうこともありますけど。
Photo: Ayame Mizuno
英国での公演を重ねてきて、バンドとしての変化を感じる部分はありますか。
HYDE: フェスや海外の公演を多く経験するとその分だけ成長するとは思いますね。前回のロンドン公演から随分とライヴに徹してきて、あらゆる面でだいぶ変わったと思います。加えて公演を続けていると色々なトラブルがあって、対処法も蓄積されていく。ライヴ中に観客に向けて話す内容も変わってきています。特にVAMPSは成長が速いバンドだと思うんです。ある程度の演奏力のあるメンバーが新人のような形で海外に行って、新人のように新しいものを吸収している。つまり、既に技術のある人が、技術を超えた部分で色々なものを吸収しているから、見た目にも変化が出やすいんじゃないかな。
K.A.Z: ロンドンに限らず、海外ではフェスにしてもツアーにしても、リハーサルやサウンド・チェックができないままにステージに立つということが多くある。そういうことをやっていくとやはりタフにはなりますね。制約ある環境の中でいかに良く見せるかということを考えなければいけないので。
VAMPSの英国公演には、毎回はるばる日本から参加するファンも多くいます。お二人はそうした日本から来たファンの顔を覚えているものなのでしょうか。
HYDE: それは分かりますよ。目立とうとしている子とかはやっぱり覚えやすいです。派手な人、いつも出待ちしてくれている人、いつもライヴ中に暴れている人……。そういう特徴があると分かりやすいですね。
最後に、11月に予定されている英国ツアーについての意気込みを教えてください。
HYDE: すごいスケジュールで行われることになるから、自分たちもどうなるか分からない。英各地をこれだけ周る機会は今までなかったから、楽しみです。
K.A.Z: 行ったことのないところへ行ってパフォーマンスをするということこそ、僕らが最もやりたいこと。そのやりたかったことが少しずつ具体的な形になってきているので、絶対に良いライヴにしたいですね。