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Tue, 26 November 2024
ファーマーズ・マーケット

食品、衣料、日用品からアンティークまで、英国で暮らす人々の生活に欠かすことのできないのが「マーケット」。毎日必ずどこかで開かれていると言っても過言ではない数あるマーケットの中から、今回は「ファーマーズ・マーケット」に注目。ロンドン市内にあるファーマーズ・マーケットの様子を4件ご紹介します。春眠暁を覚えず……なんて言わずに、この週末はいつもよりちょっとだけ早起きして出掛けてみませんか? (取材・文 / サイトウ・ケイナ)

 

ファーマーズ・マーケットって何?

マーケットの周辺地域で育った旬の食材が、その生産者によって産地直送で販売される、それがファーマーズ・マーケット。しかし、どんな生産者でもそこに出店できるというわけではない。英国では、The National Farmers' Retail & Markets Association(FARMA)らによる商品の生産場所や加工方法などの厳しい諸条件(右参照)をクリアした選ばれし者のみが、ファーマーズ・マーケットへのストール(売店)出店を許されるのだ。つまり、安心して消費できる高品質の商品のみで構成されるのが、本物のファーマーズ・マーケット。そこここの路地で開かれる普通のマーケットとの違いはココだ。

 

どんな雰囲気?

学校給食からのジャンク・フード締め出しや食品表示参照の呼び掛け運動などに見られるように、ここのところようやく英国でも食への関心が高まってきた様子。ファーマーズ・マーケットには、そうした食や環境に関心を持つ人々が朝からマイ・ジュート・バッグや買い物カゴを持ってやって来る。小さな子供の手を引いた親子連れの姿も目立ち、ある男の子は「毎週違う種類のお魚にチャレンジしているんだよ!」と自慢げに話してくれた。季節の野菜が時には泥をつけたまま並べられ、磯の香りのする魚や貝類が未加工で売られる横で、その調理方法などの情報交換がなされるこうしたマーケットは、「食育」の手軽な教材としても魅力的な場所だ。

大抵のファーマーズ・マーケットはほのぼのとした雰囲気だが、規模が小さく常連の地元住民しか利用しないようなところでは、冷やかしだけで行くには少し居心地の悪いことも。開催場所によって異なるマーケットの雰囲気を楽しむのもいいだろう。

 

どんなものが買えるの?

野菜や果物、魚介類や肉、乳製品にパンやケーキ、スープなどの加工品が主。産地直送品のため新鮮なことは言うまでもなく、無農薬、無添加、オーガニック栽培の体に優しい食べ物が多く店頭に並ぶ(生産方法はそれぞれの販売者に確認を)。

値段は良心的であることが多い。しかもその販売形態ゆえ、輸送費や仲介業者へのマージンといったものにお金を払う必要が少ないため、より気持ち良く買い物ができる(気がする)。ものによってはスーパーマーケットで買うよりも多少割高に感じられるかも知れないが、食品の質と安全性を考えたらお得なのでは。

ファーマーズ・マーケットへ出掛ける際に気を付けたいのが、毎週同じ会場に同じストールが出るとは限らないということ。また、同じストールが他のマーケットに週替わりで掛け持ち出店していることも。会場入り口に掲示されている出店リストを確認したり、ストールの店主に聞いたりして、お気に入りストールのスケジュールをチェックしよう。

お目当てのものを売るマーケットに足を運ぶことができなくても、嘆くことなかれ。最近では多くのファーマーズ・マーケット出店者が自らのウェブサイトを持っており、そこからファーマーズ・マーケットで売っている商品を直接注文購入できる場合もあるのだ。

ファーマーズ・マーケット出店への条件

1. 商品はマーケット開催地から約50〜80キロ以内で生産されたものであること。
2. 消費者に商品説明ができるよう、生産に直接携わった者が店頭に立って販売すること。
3. 商品は生産者を名乗る者の管理地で生産されたものであること。
4. 加工食品の材料には、マーケット開催地域で生産されたものをできるだけたくさん使用し、製造は同様にマーケット開催地域で行うこと。

(FARMAによる審査規定より抜粋。一部例外あり。詳細はFARMAウェブサイト参照)

 

お出掛け前にチェック!

ウチの近くにもファーマーズ・マーケットがあるか知りたい!そんな時には、下記の各団体のウェブサイトが便利。国内各地で開かれるファーマーズ・マーケットの場所や日時のほか、旬の食べ物の情報を入手できる。

The National Farmers' Retail & Markets Association (FARMA)
全国規模でファーマーズ・マーケットを運営・進行する協会団体。全国のファーマーズ・マーケット主催者が登録しており、スコットランド、イングランド、ウェールズ内の各ファーマーズ・マーケットの情報がこのウェブサイトから得られる。
www.farmersmarkets.net
Tel: 0845 458 8420

London Farmers' Markets (LFM)
ロンドン市内でファーマーズ・マーケットを主催する団体。市内15カ所で開かれるファーマーズ・マーケットの情報を調べることができる。
www.lfm.org.uk
Tel: 020 7833 0338



現在ロンドン市内で開かれている、LFM及びFARMA公認の主なファーマーズ・マーケット(赤表示されているマーケットは次ページで紹介)。会場入り口に左図のFARMAマークがあれば、そのマーケットは「お墨付き」だ。

 

1. BLACKHEATH
2. MARYLEBONE
3. PIMLICO ROAD
4. PRIMROSE HILL
5. EALING
日時:土曜9〜13時 
場所:Leeland Road, West Ealing W13
最寄:West Ealing駅

ロンドンで唯一の路上ファーマーズ・マーケット。
6. ISLINGTON
日時:日曜10〜14時 
場所:Essex Road, Opposite Islington Green N1
最寄:地下鉄Angel駅

1999年、ロンドンに初めて開かれたファーマーズ・マーケットがココ。
7. NOTTING HILL
日時:土曜9〜13時 
場所:書店Waterstones裏の駐車場にて
最寄:地下鉄Notting Hill Gate駅

ロンドンで最も大きなファーマーズ・マーケットの一つ。オーガニック商品を扱うストールが多いのが特長。
8. CLAPHAM
日時:日曜10〜14時 
場所:Bonneville Primary School, Bonneville Gardens SW4
最寄:地下鉄Clapham South駅

地域住民による長年の熱い要望に応えてついに開かれたというマーケット。
9. PECKHAM
日時:日曜9時30分〜13時30分 
場所:Peckham Square, Peckham High Street SE15
最寄:Peckham Rye駅またはQueens Road駅

Peckham Libraryのすぐそば。規模は大きくない。
10. TURNHAM GREEN
日時:土曜9〜13時 
場所:Belmont Primary School, Belmont Road W4
最寄:地下鉄Chiswick Park駅またはTurnham Green駅

規模は大きくないが、ストールのラインナップは必要十分。
11. TWICKENHAM
日時:土曜9〜13時 
場所:Holly Road Car Park, Holly Road, off King St, Twickenham TW1
最寄:Twickenham駅

会場はショッピング街に近く、週末のお買い物に便利。
12. WIMBLEDON PARK
日時:土曜9〜13時 
場所:Wimbledon Park First School, Havana Road SW19
最寄: Wimbledon Park駅

2000年のオープン以来ウィンブルドンの地元住民から愛され続けている、地域密着型マーケット。

*情報は2007年2月末日現在、編集部調べ。お問い合わせは各マーケット主催者及びストール店主へお願いします。お出掛けには公共の交通のご利用をお勧めします。

 

日時: 土曜 10〜14時
場所: Primrose Hill School, Princess Road NW1
最寄: 地下鉄Chalk Farm駅またはCamden Town駅
www.lfm.org.uk/primrose.asp

まだ人気の少ない朝のカムデン・タウン駅を出て歩くこと約10分、バス通りを少し入ったところに建つ学校の駐車場に、15店ほどのストールが並ぶ。こぢんまりとしながらも粒揃いといった印象で、昼に近付くにつれ周辺に住む子供連れやお年寄りで賑わいを見せる。買い物帰りは、カムデン・マーケットに向かって人混みに消えて行くも良し、リージェンツ・パークに寄ってマーケットでの収穫を頬張るもまた良し。


KENTDOWN MUSHROOMS

シイタケやシメジ、ナメコ、エリンギなど、キノコばかりを種類豊富に取り揃えるこのストールの存在は、日本人には嬉しい限り。バターとニンニクで炒めたマッシュルームを具にした、特製サンドイッチも売っている。この日店頭に立っていたアンさんは、「日本ではシイタケやナメコをどうやって料理に使うの? 良いアイデアをもらえると嬉しいわ」と研究熱心。
www.sporeboys.com


MILLETS FARM CENTRE

オックスフォードから約13キロのところに農場を構えるMillets Farm Centreのストール。泥付きの立派な野菜と共に、ずらりと並べたリンゴ・ジュースとサイダーが自慢だ。自家栽培している英国の主要9種のリンゴをそれぞれの旬に合わせて収穫、同日中に絞って瓶詰めするというその味は、ピュアそのもの。「サイダーは気が抜けちゃうからダメだけど」と言いながら次々と試飲を勧めてくれるオーリンさんのおかげで、ジュースの売れ行きも好調の様子。
www.milletsfarmcentre.com


FARM 2 KITCHEN
ーPIES WITH TATTITUDEー

パイの専門店。「パイの中身も、もちろんすべてイースト・サセックスの私達のファーム周辺のものよ」と店頭のパトリシアさん。一番人気はスパイスの効いたビーフ・パイ。ベジタリアン・パイもボリューム満点だ。


THE SOUP KINGS

当マーケットで一際スタイリッシュだったのが、ロースト・ディッシュやスープの見本が並ぶこのストール。肉や野菜はもちろん塩やスパイスまで、すべて契約農家による食材を用いたready mealを扱う。人気のお勧めメニューは、ロースト・カボチャやチキンを使った料理だそう。

 

日時: 日曜、9〜13時
場所: Orange Square SW1(Pimlico Road とEbury Streetが交わる角)
最寄: 地下鉄Sloane Square駅
バス: 211番、11番、239番
www.lfm.org.uk/pimlico.asp

Sloane Square駅からPimlico Road に出てしばらく進んだところにあるOrange Square。この小さな広場が、土曜日だけは所狭しと並ぶストールと人で埋まる。ロンドンの大きなファーマーズ・マーケットの一つとして数えられるようになってきたこの会場は、心なしか他会場以上に落ち着いた雰囲気。ベルグレービアやチェルシー、バタシー地区の住民もよく利用するという。


THE GARLIC FARM ON THE ISLE OF WIGHT

臭いを……否、異彩を放つこのストールに並ぶのは、ニンニク、ニンニク、そしてニンニク。がっしりとした見事なニンニクの中でも、黄金色に輝くOAK-SMOKED GARLIC BULBSがお勧め。やはりニンニクをベースにしたペーストやチャツネのほか、ニンニクの苗まで売っているところが、なんとなくチャーミング。
www.thegarlicfarm.co.uk


RICHARD HAWARD

牡蠣をその場で殻剥ぎして食べさせてくれるストールを発見! 見過ごしてしまいそうな小さな同店には、英国南東部エセックスのウェスト・マーシーの湾にほぼ毎日出て採ってくるという、新鮮な食べ頃の牡蠣が数種類並ぶ。ただし、出店は牡蠣のシーズンである9月から4月の間のみ。
www.richardhawardsoysters.co.uk


ALHAM WOOD

サマーセットにある農場で飼われているバッファローの肉、ミルク、チーズ、ヨーグルトを扱う。バッファローの乳製品は、牛のものに比べて低脂肪・低コレステロールで、ヨーグルトは特にあっさりしている。牛の乳製品も置いているが、やっぱりバッファローのものを試したい。

 

日時: 日曜 10〜14時
場所: Blackheath Rail Station Car Park, 2 Blackheath Village SE3
最寄: Blackheath駅
バス: 54番、 89番、 108番、 202番、 380番
www.lfm.org.uk/black.asp

ロンドン中心からは少し離れるものの、駅に隣接した駐車場で開かれるためにアクセスの良さは抜群。Lewisham駅(DLR及びNational Rail)からもバスで約10分と便利だ。約20軒のストールが出るこのマーケットは、活気がありながらもどこかのんびりとした雰囲気。10時のオープン直後から地元の買い物客が集まり、昼ごろにはランチ用のパンやケーキを求めて若い客も増える。グリニッジに近いため、家族でのお出掛けにもお勧め。


NUT KNOWLE FARM

この道30年のジェンナーさん夫妻が切り盛りする、ゴート・チーズ専門店。農場で飼育されている450頭のヤギのミルクからできたチーズに、お客が次々と惹き付けられる。毎週売り切れてしまうものもあると言い、最近の一番人気はガーリックとハーブが香る「Little Garlic」。
www.nutknowlefarm.com


CHILTERN FARM FOOD

バッキンガムシャーの農場で育ったフリーレンジの豚やラム、ウサギやカモなど季節の狩猟肉と、ソーセージやバーガーといった加工品を扱う。「親子?」と尋ねるとなぜか懸命に否定する息ピッタリのお茶目な2人が、丁寧に商品説明をしてくれる。


KUSHCUISINE

シェフ暦20年のイアンが手作りする、瓶詰チャツネとジャムの店。リンゴやマンゴーが入ったマイルドなフレーバーも揃っていて、ベストセラーは「Jamaican Chutney」。お客から必ずと言ってよいほど発せられる「辛い?」との質問にも嫌な顔せず(というか無表情で)答えるイアンも魅力的。新鮮な肉やチーズ、クラッカーと一緒に。
www.kushcuisine.com


ISLE OF WIGHT TOMATOES

鮮やかな赤から黄色へのグラデーションが美しいこのストールは、ワイト島で採れたトマトとそれを使ったソースなどを扱う。中でも人気のトマトは、Canpariという種類。味も香りもしっかりとしていてパワフルなため、サラダやパスタに生で使うと良いそう。3月上旬からというシーズン中に是非味わいたい。 
www.isleofwighttomatoes.co.uk

 

日時: 日曜、10時〜14時
場所: Cramer Street Car Park W1
最寄: 地下鉄Baker Street駅またはBond Street駅
www.lfm.org.uk/mary.asp

現在ロンドン最大規模を誇るのがココ。多くのストール主がこのファーマーズ・マーケットへの出店を希望し、また他会場との出店掛け持ちをするのに当会場を選ぶとのこと。市内中心部で主要駅やオックスフォード・ストリートに近いこともあり、出店数だけでなく人出の多さもダントツ。取材当日はあいにくの雨だったが、常連客に加えてセルフリッジの袋を提げた人や観光客らで賑わい、列のできるストールがいくつもあった。


McLAREN'S PURE AND NATURAL

小さな子供にも安心して食べさせられる、低糖・低脂肪の手作りケーキとスープを売る。一番人気は、パッション・フルーツのピューレを使った、冷凍保存可能なカップ・チーズケーキ。スープの種類は、旬の素材へのこだわりから週毎に替わるそう。スープもケーキも、素材の旨味がぎっしりと詰まった濃厚な味わいが特長。
www.mclarenspureandnatural.co.uk


THE OLD POST OFFICE BAKERY

ロンドンのクラッパムに店舗を持つこのベーカリーのストールには、お客さんがひっきりなしにやってきて、すぐに列ができる。中でも、ずっしりとしたSourdoughを買い求める人が多く、昼過ぎには品薄に。
www.oldpostofficebakery.co.uk(ウェブサイトはアップデート中)


PERRY COURT FARM

ケントから野菜を運ぶ当ストールの自慢はリンゴ。常連客と思しき女性陣が、しっかりと品定めをした上で1袋、2袋と買っていく。野菜や果物を売るストールの中でも特に親切で、ここで素材の調理法を尋ねるお客が多い。そのうちお客同士で情報交換が始まるなど、親しみやすい雰囲気が魅力。
www.perrycourtfarm.com

 

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