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Fri, 19 April 2024
新春特集 - 2019年を楽しむために

英日の文化の違いを笑いに昇華して、
親しみやすいコメディーを目指す
BJ FOX コメディアン / 俳優

BJ フォックスさんは、NHK ワールドのドラマ「Home Sweet Tokyo」で、主演・脚本を務めた英スタンダップ・コメディアン。同ドラマのシーズン2が昨年12月に放映されたばかりで、コメディーを中心に多方面で活躍している。BJ フォックスさんの人気の理由は、英国と日本の違いをただ揶揄することで笑わせるのではなく、日本人ですら気が付かなかった一歩先のオチで、観客の笑いのツボを刺激するからだ。そんな英日の笑いに精通したBJ フォックスさんに、英日のコメディーについて話を伺ってみた。

BJ FOX

BJ フォックス 1981年、ロンドン西部ヒリンドン生まれ。日本でスタンダップ・コメディアン、俳優として活躍中。日本語のお笑いライブ「おコメディ焼き!LIVE」を主催する。英国人が日本人の妻、娘、義父との同居に奮闘しながら日本文化を学んでいくNHKワールドのドラマ「Home Sweet Tokyo」で主演・脚本を担当。

日本人も気付かない、ささいな出来事に着目

BJ フォックスさんが初めて来日したのは、17歳のときの静岡県浜松市でのホームステイだった。その後、東京の大学へ1年の留学、卒業後に英語教師として再び来日。それから一旦ロンドンで働いたものの、シンガポール駐在を経て東京へ転勤となった、日本と強い縁で結ばれた人物だ。スタンダップ・コメディーとの運命の出合いは、シンガポール駐在時。飛び入りで参加する機会があり、そのときからお笑いに魅せられていったという。そんなBJ フォックスさんの笑いは、自身の経験を通じて緻密に練り上げたものだ。

「日本での生活で面白いと思ったこと、矛盾しているなと思ったことをネタにしています。自分では気付いていないのに、言われてみると『あるある!』という事柄に笑いを見出しています。僕はただ違うとか、おかしい、と言うだけではコメディアンとしては未完成だと思っていて、これが違って、あれがおかしくて、そしてその一歩先にオチがあり、そのオチが一体何なのか、その延長線を探すことが重要だと思っています」。

ブラック・ユーモアはポジティブ効果だらけ?

英国の笑いと言えば、皮肉で笑いを取る「ブラック・ユーモア」で認知されている。日本人には一見とっつきにくいユーモアの形態だが、英国出身のBJ フォックスさんにとってそれは、単なる笑いを超えた意外な効果があると言う。

「悲しい出来事があっても、あえてブラック・ユーモアを使うことで状況を理解したり、受け入れたりすることがイギリスの国民性の一つと言えるかもしれません。最近、ローワン・アトキンソンが主演した第一次大戦の戦場を舞台にしたコメディー・シリーズ『ブラックアダー・ゴーズ・フォース』を改めて観ましたが、ラストの悲しいシーンですらユーモアいっぱいに表現していました。

ユーモアやコメディーは、難しい概念を分かりやすく説明する素晴らしいツールであり、特にイギリスで人気のある政治や時事的なコメディー・ショーで、この面を強く感じますね。BBCのパネル・ショー『ハブ・アイ・ゴット・ニュース・フォー・ユー』は、1990年から毎年放送されている超人気番組です。

一方で、近年視聴率を獲得しているのはBBCの『ミセス・ブラウンズ・ボーイズ』です。男性のコメディアンが母親役を演じるファミリー・ドラマで、内容はシンプルで下品ですが、ハートウォーミングな面もあり大変人気があります。イギリスのユーモアは多種多様になってきていると言えますね」。

海を越えて繋がる笑いのスタイルとは

英国人が好む有名人や政治家をからかうスタイルは、日本人には少し引かれてしまうときもあると語るBJ フォックスさん。「批判に抵抗がある」と独自に分析する日本の笑いは、一見英国のそれとは一線を画しているように見える。しかし、様々なコメディーを見てきて、数々のステージでパフォーマンスをした結果、BJ フォックスさんは意外にも共通点が多いと話す。

「日本のお笑いは、ボケとツッコミのコンビがメジャーですが、イギリスでも1970年~1980年代にかけて人気を博したコメディアンのモーカム&ワイズとリトル&ラージに同じような雰囲気を感じますね。実体験から言うと、ドラマ『Home Sweet Tokyo』で、僕が演じる主人公のブライアンが『ノリツッコミ』を紹介するシーンがあるのですが、収録時にその単語の意味が分からなかった僕に、監督が『おかしい状況でも否定せず我慢し、我慢し続けたら、急に激しく否定する』と丁寧に説明してくれました。これってイギリスのモンティ・パイソンの有名な『死んだオウム』の掛け合いをほうふつとさせるんです。このコントは『Dead Parrot』でYouTubeにアップされているので、ぜひ見比べてみて下さい」。

コメディアンから俳優、そして脚本家へ

スタンダップ・コメディアンとして活躍するかたわら、近年はその才能を生かし、NHKワールドのドラマ「Home Sweet Tokyo」で主演及び脚本を務めた。ドラマには日本で暮らす外国人ならではの視点を盛り込み、その違いを決して否定的ではなく、ソフトな印象で面白おかしく視聴者に伝えた。

シーズン1では、視聴者にとって一番分かりやすい形で、まずは日本に興味を持ってもらえそうなテーマを選びました。したがって、『安全性』『お風呂』『お弁当』などになったわけです。シーズン1の評価が良かったため2018年12月に続編の放送が決定したので、より自信を持ってアプローチでき、結果としてマイナーな、しかし興味深い日本文化を紹介することができました。

例えば日本のバレンタイン・デーにおける義理チョコは、英国と共通しているけれど、もっとジャパナイズされている面白さがあるので、僕にとってはマストで取り上げたいネタでしたね。また、同エピソードで、イギリス英語では『サッカー』ではなく『フットボール』と言うことなど、英国精神あふれる細かい部分まで紹介させていただきました。それから『断捨離』というコンセプトも。シーズン2のエピソードは色々な意味で奥が深いのではないかなと思います。

ドラマ制作は非常に素晴らしい経験でした。今回の制作にあたってハプニングがたくさんあったんです。真っ先に浮かんだのは、お寺・神社に関するもの!温泉のシーン(シーズン2エピソード3:One Night at the Onsen)でお化けが出てくるため、日本のテレビ業界の慣わしで、撮影開始前に主要スタッフがそろって神社に行き、撮影が無事に進行するようお祓いをしました。

また、最後のエピソードは、娘の七五三のお祝いで家族で神社に行くシーンがあったのですが、リハーサルのときに、手水舎で手を清めたあと、水で口をすすいだとき、間違えて飲んでしまいました! 娘役のアイラちゃんも妻・いつき役の木村佳乃さんも笑い出し、おかげで『日本のマナーがわかってないなぁ』というシーンを自然に撮ることができました。一瞬、演じているブライアンと僕が一つになった感覚でした」。

国際色豊かな笑いに取り組みたい

「お笑い」という括りのなかで自由に活動を広げるBJフォックスさん。最後に今後取り組もうと思っていることついて聞いてみた。

「2020年の東京オリンピックに向けて、世界中から日本への注目が高まる中、『Home Sweet Tokyo』を始め、ユーモアを通じて更に日本のことを紹介していきたいと思います。もしくは、グローバル化して行く日本に対して、あえて逆パターンにもチャレンジしたいと考えています。日本語でイギリス風なブラック・コメディー番組なんていうのはどうかな。英国ニュースダイジェストの読者の皆さんに、どちらに興味をもっていただけるか気になりますね!」。

●「Home Sweet Tokyo」はこちらから視聴できます。
NHK World「Home Sweet Tokyo」https://www.nhk.or.jp/homesweettokyo/

 

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