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Sat, 23 November 2024

祝プラチナ・ジュビリー
エリザベス女王在位70周年を祝う

バッキンガム宮殿からアドミラルティ・アーチをいくゴールデン・ジュビリーのパレードの様子バッキンガム宮殿からアドミラルティ・アーチをいくゴールデン・ジュビリーのパレードの様子

2022年2月6日で、エリザベス女王は在位70周年を迎える。世界で在位70周年を迎えた君主はタイの故ラーマ9世(2016年)ただ1人。この異例ともいえる長い在位期間は、英国君主ではもちろん初めてのことだ。これを祝い今年は1年にわたって祝賀行事「プラチナ・ジュビリー」(Platinum Jubilee)が英国や英連邦内各地で行われる。特に女王の公式誕生日のある6月には、4日間の盛大なお祝いイベントが開催される予定だ。今回はこれまでのジュビリーを振り返ると共に、今年のジュビリーについての最新情報を紹介したい。 (文: 英国ニュースダイジェスト編集部)

参考: www.royal.uk, www.royalmint.com, seishonyumon.com ほか

プラチナ・ジュビリーで盛り上がるロンドン(2022年5月撮影)

ジュビリー(Jubilee)とは?

ジュビリーとは君主の生涯とその治世を祝う祭典のことで、聖書に出てくる「ヨベルの年」に起源がある。ヨベルの年とは旧約聖書の中の1書「レビ記」に出てくる言葉で、土地を7年ごとに休ませる安息年が7回巡った次の年の50年目の年を指し、富の偏在が是正される「原状回復」を意味する年だ。ロイヤル・ジュビリーはその名の通り王室にまつわるジュビリーのことで、通常は25周年(シルバー)、40周年(ルビー)、50周年(ゴールデン)、60周年(ダイヤモンド)、65周年(サファイア)、70周年(プラチナ)を意味する。50年の治世を達成した英国の君主は長い歴史の中で数えるほどしかいない。

記録に残る大々的なイベントがあったのはジョージ3世(ゴールデン)、ヴィクトリア女王(ゴールデン&ダイヤモンド)、ジョージ5世(シルバー)、エリザベス女王(後述)。ヘンリー3世(在位1216~1272年)、エドワード3世(在位1327~1377年)、ジェームズ6世(在位1567~1625年)もゴールデン・ジュビリーを行なったはずだが、果たして50年の節目をどのように祝ったのかに関する記録は残念ながらほとんど残されていない。

これまでの「Jubilee(ジュビリー)」を振り返る

英国では節目ごとに国をあげての祝賀イベントが行われてきた。そうした華々しいジュビリーの歴史と共に、当時の王室の姿や世相をたどってみた。

1977年

25周年 シルバー・ジュビリー

1977年2月6日、女王は家族と共にウィンザー城で記念日の週末を過ごした。戦後初のジュビリーだったこともあり、同年夏には英国全土を訪問する大規模なツアーを敢行。計6回のツアーのスタートは5月17日に英北部グラスゴーで始まり、その後イングランドとウェールズへ向かった。途中の英北西部ランカシャーでは、女王を一目見ようと1日で100万人を超える人々が会場を訪れたという。後に西サモア、オーストラリア、ニュージーランド、トンガ、フィジー、タスマニア、パプアニューギニア、カナダ、西インド諸島などこれらの宗主国の君主として海外訪問も決行。この1年の女王の移動距離は、5万6000マイル(約9万キロメートル)を超えたといわれている。

シルバー・ジュビリー・ツアーで英中部ダービーシャーのリプリーを訪れたエリザベス女王シルバー・ジュビリー・ツアーで英中部ダービーシャーのリプリーを訪れたエリザベス女王

6月上旬にはお祝いムードが最高潮に達し、祝賀イベント当日の様子はテレビで世界中に放送され、約5億人もの人々がこの歴史的な瞬間をテレビの前で見守っていた。シルバー・ジュビリーで女王は、英議会でのスピーチで「国の統一こそジュビリーの真意である」と述べた。また、多くの市民に平等なチャンスを与えるため、若者を対象とした支援団体「シルバー・ジュビリー・アピール」を設立。若者自身への資金援助はもちろん、その若者たちが地域社会に奉仕することを奨励した。

本ジュビリーを記念して、ロンドン地下鉄にあるフリート線がジュビリー線に改名され、線を表す色もシルバーに近い明るい灰色に変更された。

バッキンガム宮殿のバルコニーから民衆に手を振るエリザベス女王と王室メンバーバッキンガム宮殿のバルコニーから民衆に手を振るエリザベス女王と王室メンバー

1992年

40周年 ルビー・ジュビリー

1992年11月にはロンドン中心部のギルドホールで、王室関係者と当時の首相ジョン・メジャーやロンドン市長など500人以上の昼食会が開催された。喜ばしいイベントの一方で、同年は長男であるチャールズ皇太子の事実上の結婚生活の崩壊やウィンザー城の火事など、女王の私生活としては苦難の年でもあった。この影響で世間も英王室に対しあまり良いとはいえない反応を示していたこともあり、前回のシルバー・ジュビリーのように大きな祝賀イベントは行われなかった。

2002年

50周年 ゴールデン・ジュビリー

ゴールデン・ジュビリーは、「祝賀」「コミュニティー」「奉仕」「過去と未来」「感謝」「連邦」という6つの主要テーマを基にさまざまなイベントが各地で開催された。2002年には姉のマーガレット王女、クイーン・マザーが相次いで亡くなるという女王にとっては辛い年になったものの、ルビー・ジュビリーと打って変わった華やかなイベントの数々が開催された。

ザ・マルにそってエリザベス女王とフィリップ殿下が進んでいく様子ザ・マルにそってエリザベス女王とフィリップ殿下が進んでいく様子

女王はシルバー・ジュビリーと同じく、フィリップ殿下と共に再び英国内や連邦国への訪問ツアーを行う。1万2000人以上の一般市民も参加したバッキンガム宮殿の庭園でのクラシック音楽コンサートからスタートした6月の大規模なイベントでは、ウィンザーの聖ジョージ礼拝堂、ロンドンの聖ポール大聖堂で礼拝があり、ポール・マッカートニー、ブライアン・アダムス、エルトン・ジョン、シャーリー・バッシーなどのパフォーマーによるコンサートがバッキンガム宮殿で開催され、夜には特大の花火も打ち上げられた。ジュビリーという厳格な伝統形式を守りつつも、大規模なミュージック・コンサートが立て続けに行われ、音楽とともに市民一人ひとりが女王を祝う、より自由な雰囲気が漂うジュビリーとなった。

バッキンガム宮殿の真上に上がる盛大なお祝いの花火バッキンガム宮殿の真上に上がる盛大なお祝いの花火

50周年という大きな節目を祝ったのは連邦国だけではなく、米ニューヨークのエンパイア・ステート・ビルディングでは、そのトップを高貴な女王をイメージした紫と金色にライトアップしたという。

2012年

60周年 ダイヤモンド・ジュビリー

2007年にフィリップ殿下との結婚60周年を祝った5年後、再びフィリップ殿下と共に全国的なツアーに出る。二人はイングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドをくまなく旅し、ほかの王室メンバーは本ジュビリーと二人をサポートする形で、連邦国を訪問した。

ダイヤモンド・ジュビリー・ツアーの初日、キャサリン妃と談笑するエリザベス女王ダイヤモンド・ジュビリー・ツアーの初日、キャサリン妃と談笑するエリザベス女王

英国には日曜のランチまたはディナーにサンデー・ローストと呼ぶたっぷりとした食事を取る伝統があるが、6月のジュビリー週末では、「ビッグ・ジュビリー・ランチ」と銘打ち、近所の人や友人たちとランチを楽しむことが奨励された。人々はレストランでの食事はもちろん、家の前などの道路に長テーブルを出すストリート・パーティーも街のあちこちで開催された。

女王に敬意を示すため英国の施設や地域で改名が行われたのもこの年。ロンドン南西部キュー・ガーデンズは庭園の入り口の名前が「エリザベス・ゲート」になったほか、英国領南極地域の一部がクイーン・エリザベス・ランドと名付けられることを外務省が発表した。

また、女王に贈り物をしたい人からの寄付を受け取るために「ダイヤモンド・ジュビリー・トラスト」が設立。集められた資金は、英国のみならず連邦全体の若者を支援するために使用された。

ちなみに本ジュビリーは、ゴールデン・ジュビリー同様、税金の使用を極力抑えるよう計画が綿密に練られたのだとか。企業や市民からのドネーションもあり、結果的に大成功を収めた。

ストリート・パーティーを楽しむ市民たちストリート・パーティーを楽しむ市民たち

2017年

65周年 サファイア・ジュビリー

本ジュビリーはウェストミンスター寺院で鐘が鳴らされ、王立騎馬兵隊や砲兵隊な
どによる祝砲が上げられた程度で、先のような大規模の祝賀行事は行われなかった。2月6日当日の女王は、礼拝に参加した以外は、サンドリンガム・ハウスで公務に従事していたという。このジュビリーにちなみ、ロンドン東部ラムフォードに立てられたレジャー施設「サファイア・アイス&レジャー・センター」が誕生した。

2022年

70周年 プラチナ・ジュビリー

英国史上初のプラチナ・ジュビリーとあり、気合いの入ったイベントになりそうだ。特筆すべきは追加のバンク・ホリデーが設けられ、2022年6月2日(木)~5日(日)まで4連休となること。この4日間は地域レベル、国レベルでのイベント・ラッシュとなる。

その前哨戦として、女王に捧げる新しいお菓子を開発するための全国的なベーキング・コンテスト「プラチナ・プディング・コンペティション」がすでにエントリーを受け付けている。フォートナム&メイソン主催の本コンテストは、焼きプディング、ブレッド・プディング、などプディングと名のつくものなら対象になるそう。8歳以上の英国在住者であれば誰でも参加可能だ(詳細はwww.fortnumandmason.com/platinum-puddingを参照)。優勝したレシピは後に一般公開される予定。

6月2日には、1400人以上の兵士、200頭の馬、400人のミュージシャンが集まるトゥールピング・ザ・カラーと呼ばれる誕生日パレードが行われる。バッキンガム宮殿からスタートし、ザ・マルを通過するこのパレードは毎年人気だが、今年はさらなる混雑が予想される。一般観覧の抽選の申し込みはhttps://qbp.army.mod.ukからで、2月末までの応募となる。

プラチナ・ジュビリーのエンブレムはノッティンガムシャー出身の19歳のグラフィック・デザイン専攻の学生、エドワード・ロバーツさんがデザインしたプラチナ・ジュビリーのエンブレムはノッティンガムシャー出身の19歳のグラフィック・デザイン専攻の学生、エドワード・ロバーツさんがデザインした

3日は、聖ポール大聖堂で感謝の礼拝が行われ(詳細は近日発表)、4日は競馬の聖地と呼ばれるエプソム競馬場でダービーが開催。女王は王室メンバーと共に観戦予定だ。その後バッキンガム宮殿でライブ・コンサートがある。こちらも一般観覧可能で、詳細は2月に発表される予定だ。5日は、先に述べたビッグ・ジュビリー・ランチとしてストリート・パーティー、ピクニック、ガーデン・バーベキューなどを隣人や友人と楽しむ1日。また、英国および英連邦から集まった5000人以上のパフォーマーなどによる大規模なショー「プラチナ・ジュビリー・ページェント」が行われる。

6月の大イベントが終わっても、女王のジュエリーやドレスなど、今年しか見られないロイヤル・コレクション・トラスト主催の特別展が7月から始まる(www.rct.uk)。

ジュビリー記念品は見逃せない!

過去3世紀もの間、ジュビリーにちなんだ記念品が販売されてきた英国。17世紀のチャールズ2世のころから、市民の間で「王室記念グッズ」を集めることが流行していたようだ。近年は記念コインや切手をはじめ、ティーカップやマグカップ、プレートなどバラエティー豊かなアイテムが手に入るので、記念に購入してみてはいかがだろうか。すでに英王室公式オンライン・ショップのロイヤル・コレクション・ショップ(www.royalcollectionshop.co.uk)では紫と金色を取り入れたアイテム、英国造幣局ロイヤル・ミント(www.royalmint.com)では記念コインの販売を開始している。

ロイヤル・ミントから販売されている50ペンス記念コイン。馬に乗ったエリザベス女王と「70」の数字がデザインされているロイヤル・ミントから販売されている50ペンス記念コイン。馬に乗ったエリザベス女王と「70」の数字がデザインされている
シルバー・ジュビリー記念のマッチ箱シルバー・ジュビリー記念のマッチ箱
 

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