英国の代表料理と言えば、もちろんフィッシュ・アンド・チップス(F&C)。
ただ揚げただけ……と思っていたら大間違い。
同じ素材、同じ調理法のはずなのに、
店によってテイストが異なるF&Cは、実は奥が深いんです。
店ごとに異なるこだわりの数々。
その差を楽しめるのは、シンプルなF&Cだからこそ !
今回は、多くのF&C店がひしめくロンドンで、高い人気を誇る9店をご紹介。
いろんなお店に繰り出して、自分にぴったりのF&Cレストランを
見付けてみるのはいかがでしょう?
(文・写真 : 津久井 貴美)
メルヘンチックなお洒落レストラン
Olley’s Fish Experience
彩りも鮮やかな F&C
南ロンドン、ブロックウェル・パークの隣にあるのは、可愛らしい雰囲気が一際目を引く「Olley's」。リサイクル品をふんだんに盛り込んだという内装は、まるでおとぎの国の一部のよう。注目のF&Cも奇麗に盛り付けられ、サイズもコンパクトにまとめられている。とはいえ、新鮮な油でカリカリに揚げられたF&Cはなかなかボリューミー。そこでお勧めなのが、ホームメイドのマッシュ・ピー。やさしい味が油っこさを和らげてくれる。人気小説家にして上院議員のジェフェリー・アーチャーなど、来店したセレブが注文したものと同じ品が食べられるという特別メニューも見逃せない。また、このお店の名物となっているのが店長のハリーさん。素早いラッピングから「忍者おじさん」とも呼ばれるハリーさんの気さくでフレン ドリーな接客は、もう一度店に来たいという気にさせてくれる。
タイルに描かれた店名が可愛らしい(写真左) オリジナル・レシピの3種のケーキ (同右) |
65-69 Norwood Road, Herne Hill SE24 9AA
Tel: 020 8671 8259 / 020 8671 5665
www.olleys.info
営業時間 火~日 12:00-15:00、17:00-22:30
伝統とシンプルさにこだわった、熱い心を持つ老舗
Rock & Sole Plaice
100年以上変わらぬ伝統の味
観光客に人気のコベント・ガーデンという素晴らしい立地にあるのが、1871 年創業の老舗「Rock & Sole Plaice」。「開店当初の古き良き時代にお客様を連れて行く」という熱い魂を内に秘め、創業当初の味を頑なに守り続けるこのお店は、壁一面に演劇などのポスターが貼られたレトロな感じのレストランだ。地元民はもちろんのこと、ガイドブックを手にした観光客も多く訪れ、昼も夜も大盛況。混み合ってはいるものの、客の回転が早いので心配する必要はない。メニューはいたってシンプルの王道派。厚すぎず薄すぎず、程よい厚みの衣で覆われるフィッシュは、外はカリっと中はホクホク !! どっしりした外見とは裏腹に、意外にあっさりしていて食べやすく、平べったくもっちりとした重量系チップスとの相性は抜群だ。調理法が難しいと言われるSkateが店自慢のメニューだそう。
天気が良ければ、外で食べるのがお勧め(写真左)
お揃いのTシャツで温かく出迎えてくれるスタッフ(同右)
47 Endell Street, Covent Garden WC2H 9AJ
Tel: 020 7836 3785
営業時間 月~土 11:30-23:30 日 12:00-22:00
優雅な気分で一日を過ごしたいときには
202
身がたっぷり詰まったフィッシュ
アンティーク・マーケットで有名なポートベローから歩いてほんの数分。上品なお店がずらりと連なる通り、ウエストボーン・グローブにあるお店、「202」 は、入り口付近が雑貨スペース、地下はブティックになっている、新しいスタイルのカフェ・ レストランだ。ショッピング中に立ち寄る人で常にいっぱいで、特に週末のブランチは大人気。座るまでに多少時間はかかるものの、おいしい料理とカジュアルかつ落ち着いたお店の雰囲気は、待ち時間のことなど忘れさせてくれる。メニューには、トーストやハムなどの軽食からスープやリゾットなどしっかりしたものまで揃っているので、朝食、昼食、またディナーと、それぞれの時間帯に合った料理が楽しめる。F&Cもその中の人気料理。身がたっぷり詰まったフィッシュと、粗めにつぶされ、豆の食感を楽しめるマッシュ・ピーのF&Cは、がっつり食べたいときにお勧めだ。
パリのカフェを思わせる外観(写真左)
店内奥にはワインもずらりと並ぶ(同右)
202-204 Westbourne Grove W11 2RH
Tel: 020 7727 2722
営業時間 月 10:00-18:00 火~土 8:30-21:30 日 10:00-17:00
*16:00-18:00はキッチン・クローズ
カジュアルかつスマートにF&Cを味わう
Fish Central
こんがりと揚がったF&C
ロンドン東部、オールド・ストリートの落ち着いたエリアにある 「Fish Central」 は、 白と黒で統一された内装がシックな雰囲気を漂わせる一方で、人々の声が弾む明るく賑やかなレストラン。数々の賞を欲しいままにするこのお店は、英国の人気情報誌 「Time Out」 に 「そのおいしさは言葉に尽きる」 とまで言わしめた実力派だ。こだわり抜かれた品々は、どれをとっても超絶品。F&C はと言えば、こんがりキツネ色の衣のフィッシュはサクサクで香ばしく、細く柔らかめのポテトは日本のフライド・ポ テトと似ていて、どこか懐かしい味がする。店のスタッフから、「是非とも注目して 欲しい」 と念を押されたのが、店内の壁に貼られたボード。旬の食材を使った、その日一番の特別メニューが記載されている。デザートは10種類ものメニューの中から 選べて、すべて 3.5ポンドとお手頃価格。迷ったらスタッフに相談してみよう。
特別メニューが書かれたボードに要注目(写真左)
白と黒のミニマルな内装(同右)
149-151 Central Street, King Square EC1V 8AP
Tel: 020 7253 4970(Reservation)
www.fishcentral.co.uk
営業時間 月~木 11:30 -14:30、17:00 -22:30
金、土 11:30 -14:30、17:00 -23:00
ひと味異なる新しいF&Cを求めるなら
Fish Club
自家製タルタル・ソースも美味
新鮮な魚を間近で見られるカウンターが印象的な「Fish Club」の店内は、清涼感たっぷりで自分が海の中にいるかのよう。店員さんがテキパキと調理しているところを見ながら、魚の細かい説明を受けられるところなどはポップな英国版お寿司屋さんといった風情だ。魚介類のみならず、豊富なメニューが揃うが、やっぱり人気は王道、F&C。天ぷらのような繊細な衣に包まれた、しっとり中身のフィッシュに、ポテト チップスのようなカリカリのチップスは、他店のものとはひと味異なり個性的。またChips、Mash、New Potatoes、Sweet Potato Chipsと、ポテトが 4 種類あるのも 面白い。中でもSweet Potato Chipsは甘くてホクホク。おやつ代わりにも良さそうだ。また、ここでは Asahi ビールも楽しめる。メニューに入れたのは「Asahi のドライな感じと魚の相性がたまらない」からなのだとか。
新鮮な食材がずらりと並ぶカウンター (同左)
フレンドリーで知識豊富なスタッフ (同右)
● St John's Hill-Clapham Junction店
189 St John's Hill, Clapham Junction SW11 1TH
Tel: 020 7978 7115
● Clapham High Street店
57 Clapham High Street SW4 7TG
Tel: 020 7720 5853
www.thefishclub.com
営業時間 月 17:00-22:00 火~日 12:00-22:00
味で勝負の本格派
The Fryer's Delight
肉厚なフィッシュはとてもジューシー
ビジネス街、ホルボーンにあるのは、可愛らしい !? ナマズがシンボル・マークの 「The Fryer's Delight」。カラフルでこざっぱりとした店内にシンプルなメニュー、飲み物込みでも7ポンド程度で収まる良心的な価格設定は、いかにも庶民的な「地元のF&C屋 さん」という感じ。長年人気を保ち続ける秘訣は何かという質問に、「味が良いから、こんなに長く続いているんじゃない !? 」とあっけらかんと答えるオーナーの言葉通り、肉厚でジューシーなフィッシュと、しっかりとじゃがいも本来の味が出ているチップスから成るF&Cは一度食べたらくせになり、また行きたくなること間違いなし。サイド・メニューを付けるならば、さっぱりとしたピクルスがお勧めだ。毎朝市場から仕入れてくるフレッシュな魚と、手作業でゼロから調理されるポテトは、常連客をつかんで離さない。1968 年創業以来、変わらぬ味を求めて、30年来通っているお客もいるのだそう。
カラフルで庶民的な外観(写真左)
こざっぱりとした店内(同右)
19 Theobald's Road, Holborn WC1X 8SL
Tel: 020 7405 4114
営業時間 月~土 12:00-22:00
ちょっとポッシュなF&C
Golden Hind
薄めの衣は長時間たってもサクサク
お洒落なショップが連なるマリルボンの一角という、ちょっとポッシュな場所にあるのが「Golden Hind」。オーナーがイタリア人からギリシャ人に代わって早15年。フレンドリーでハッピーな接客を心掛けているという私服のスタッフに、オー プンで賑やかな店内の雰囲気は、まるでギリシャにいるかのように心地良い。薄めの衣で包まれたフィッシュと、あっさり軽めなポテトは、時間がたってもサックサク。それほど脂っこくなく、サイズも大と小のどちらかを選べるのは、ヘルシー志向の女性にはうれしいところだ。常連客からの高い支持を受けるマッシュ・ピーは、 アイルランドのBatchelors 社のものを使用。スターターにはFishcake や Feta Cheese、サイド・ディッシュには Garden Peas、Pickles Onionがお勧めと語る店員さんからは、「いつも笑顔で礼儀正しい日本人からなら、いつでもなんでも質問を受け付けるよ」 とうれしい一言。気軽に話し掛けてみよう。
カラフルで庶民的な外観(写真左)
こざっぱりとした店内(同右)
73 Marylebone Lane, Marylebone W1U 2PN
Tel: 020 7486 3644
営業時間 月~金 12:00-15:00、18:00-22:00 土 18:00-22:00
英国の「ザ・パブ」でいただく伝統料理
The Ship Tavern
巨大なフィッシュにはお客さんから歓声が上がることも
ホルボーン駅から程近く、昼間からお酒を手に陽気に笑う人々で賑わう「The Ship Tavern」。磨きこまれたカウンター、ビリヤード台や、サッカーの映し出されるテレビに囲まれたこの空間は、紛れもなく英国の「ザ・パブ」である。ダイニング・ エリアとなっている2階はぐっと落ち着いた雰囲気で、メニューにも典型的な英国料理がずらり。ここで試してみたいのが、常連客から「フィッシュの大きさでは他店に負けない」と言われる巨大なF&C。あくまでもパブ料理のなかの一品のため、魚の種類などは選べないものの、毎朝市場から仕入れてくる新鮮なHaddock としっかりと揚げられたポテト、マッシュ・ピーは、F&C専門店に負けるとも劣らない。 他の料理も外れがないと評判で、ローズマリーの風味がアクセントになったチェダー・アンド・マッシュなど数種類のパイも人気メニューだ。ゆっくりと2階で食事を楽しんだ後は、下のパブでビール片手に語り合おう。
ホルボーン駅の脇、細い小道の奥に店がある(写真左)ソーセージ・アンド・マッシュも人気の一品(同右) |
12 Gate Street, Holborn WC2A 3HP
Tel: 020 7405 1992
www.theshiptavern.co.uk
営業時間 月~水 11:00-23:00 木・金 11:00-0:00 土・日 12:00-22:00
著名人も認める北ロンドンの名物店
Two Brothers Fish Restaurant
ボリューム満点な2種類のF&C
日本人も多く住むフィンチリー・セントラルにあるのは、1988年に双子の兄弟によって開業されて以来、北ロンドンで一番という名声を保ち続ける高級F&Cレストラン「Two Brothers Fish Restaurant」。店内は毎晩満席で、いつも外にまで行列ができるという人気振り。値段は多少張ろうとも、高品質な食材からつくり出される料理の数々は、一度は味わってみる価値がある。メニューの品数も豊富で、何を頼むか迷うところだが、「1 回目は伝統的なF&C、次は違うものを頼むのが良いよ」 とスタッフが言うように、F&Cが一番の人気メニュー。また、セレブ・シェフ、ジェイミー・オリバーも絶賛したという、Mediterranean Prawns in Garlic Butterにもチャレンジしてみたい。著名人もお忍びでよく来店するそうで、「万が一隣に座っても驚かず、大人な対応をしてほしい」とのこと。
落ち着いた雰囲気の店内(写真左)
深海を思わせる深い青色が印象的な外観(同右)
297-303 Regent's Park Road N3 1DP
Tel: 020 8346 0469
www.twobrothers.co.uk
営業時間 火~土 12:00-14:30、17:30-22:00