短かった夏も終わり、ロンドンはもうすっかり秋。
早々と暗くなる街を背に家路を急ぎ、自宅でゆっくりと食事を楽しみたい季節だ。旬の素材を使った秋の料理を食卓に並べれば、添えるパンや、食事の後のおやつにだってこだわりたい。今回は、秋の夜長を充実させる、本格ベーカリーをご紹介。食卓の主役にさえしたい味わい深いパンの数々を、ぜひお試しあれ。 取材・写真 : 平川さやか
安い!うまい!早い!3拍子揃ったブリック・レーンの顔
Brick Lane Beigel Bake
ロンドンでベーグル屋と言えば、必ずこのお店の名が挙がるほどの有名店。その理由の一つは、イスラエル出身のオーナー、セミさんとご家族を中心としたスタッフが、42年間ほとんど変わらないレシピで焼くシンプルなベーグルのおいしさ。元々ユダヤの文化に由来するベーグル、こちらのものは当のユダヤ系の人たちからも大好評だという。地元のカフェやレストランヘ卸すものも含め、一日平均4000個のベーグルを生産する。びっくりするのはその価格。ジューシーなソルト・ビーフが溢れんばかりに詰まった、ボリュームたっぷりのベーグル・サンドが£3.30。フィリングなしならたったの20pという、二度見してしまいそうな安さだ。さらにこのお店、なんと年中無休の24時間営業。夜に働く人々や、踊り疲れて腹ペコのクラバーにとって、これほどうれしい場所はない。深夜以降、特に人気を増すニューヨーク・スタイル・チーズケーキは、甘すぎずしっとりとした食感で、朝焼けの帰り道をおいしく彩ってくれる。
ソルト・ビーフ・ベーグル
£3.30
店名 | Brick Lane Beigel Bake |
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住所 | 159 Brick Lane E1 6SB |
TEL | 020 7729 0616 |
営業時間 | 毎日24時間営業 |
アクセス | Shoreditch High Street駅から徒歩10分 |
シナモンの香りに包まれる北欧カフェ
Nordic Bakery
目の前のゴールデン・スクエアにまで漂うシナモンの香りに誘われる客も多いだろう。扉を開けると、スカンジナビアの空を思わせるダーク・ブルーの壁と、バーチ・ウッドを基調としたインテリアに迎えられる。気負いのない、家庭的でシンプルな北欧の味を提供するのがこのお店だ。まず試してみたいのが定番の「シナモン・バンズ」。シナモン、カルダモン、砂糖をまぶした生地をくるくると丸めたら、表面に溶き卵とシロップを塗ってオーブンヘ。外はカリカリ、中はしっとりのバンズを、層を剥がしながら食べるファンが多いのだそう。シナモンと並んで人気なのが、「ブルーベリー・バンズ」と「ソフトチーズ・バンズ」。固めに練った生地に、ブルーベリー・ジャムかパイナップル & ソフトチーズをトッピング。フルーツの酸味が効いた素朴な味わいが自慢だ。実用的かつ美しい、北欧を代表するテーブル・ウェア「イッタラ」のカップでサーブされるフィルター・コーヒーをお供に、のんびりと過ごしたい。
シナモン・バンズ
£2.00
店名 | Nordic Bakery |
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住所 | 14a Golden Square W1F 9JG |
TEL | 020 3230 1077 |
営業時間 | 月〜金8:00-20:00 土9:00-19:00 日11:00-18:00 |
アクセス | Piccadilly Circus駅から徒歩8分 |
WEB | www.nordicbakery.com |
甘くて美しいものに目がない女性にお勧め
Euphorium Bakery
イズリントンを始め、北ロンドンを中心に7店舗を構える「ユーフォリアム」。ブリックの壁や、薪の積まれた暖炉などといった暖かくクラシックなインテリアに、敢えてモダンなシャンデリアやミラーで味付けしたスタイリッシュな空間が、特に女性客を惹き付ける。ほとんどすべての製品が、イズリントンの本店で焼かれ、それぞれの店舗へと毎朝届けられる。ベストセラーは、目にも美しいタルト。宝石のように輝くストロベリー、ブルーベリー、ブラック・カラントが、さくさくのタルト生地の上に座り、上質のクリームが柔らかなハーモニーをもたらしてくれる。定番として常連客に愛されているのは、しっかりと酸味のあるリンゴと、軽やかなパフ・ペストリーが絶妙のバランスを奏でる「アップル・タルト」。ホーム・パーティーやピクニックに持って行きたい、懐かしい味だ。添加物を使わない自然素材にこだわっているからこそ、ベビー連れのママにも安心してお勧めできる。
ストロベリー & クリーム・タルト
£3.90(イート・イン・プライス)
店名 | Euphorium Bakery |
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住所 | 79 Upper Street N1 0NU |
TEL | 020 7288 8788 |
営業時間 | 月〜金7:30-23:00 土8:00-21:00 日9:00-23:00 |
アクセス | Angel駅から徒歩12分 |
WEB | www.euphoriumbakery.com |
イタリアの太陽を感じる、バラエティー豊かなピザ
Princi
奥行きのある店内に、ずらりと並んだ色とりどりのピザ、そして飛び交うイタリア語。ミラノで人気を博す「プリンチ」は、2008年、ソーホーに初のロンドン店をオープンして以来、小麦粉、ビネガー、野菜、フルーツと可能な限りの素材をイタリアから取り寄せ、本格的なイタリアの味を提供している。毎日並ぶ8~10種類のピザは、 おいしさが際立つという、薪を使った旧式のウッド・オーブンで焼き上げられる。ズッキーニを載せた「ホワイト・ピザ」や、イタリアン・トマトをベースにした「マルゲリータ」は、ボリュームがあってソーホーで働く男性に大人気。女性には、小さなサイズのクロワッサンや、ロールを使った「ミニ・サンド」が好評だ。カマンベールにサラミ、チョリソーと色々な味を楽しめるのもうれしい。風味豊かなオリーブをシンプルな生地に練り込んだスティック状のパン、「スフィラティーノ」はスナック感覚で。そのもっちりとした食感が、日本人の口によく馴染む。
スフィラティーノ
£1.50
店名 | Princi |
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住所 | 135 Wardour Street W1F 0UT |
TEL | 020 7478 8888 |
営業時間 | 月〜土7:00-24:00 日9:00-22:00 |
アクセス | Oxford Circus駅から徒歩10分 |
WEB | www.princi.co.uk |
こだわりの天然酵母パンでオーガニック・ライフ
The Old Post Office Bakery
80年代初頭にオープンした、南ロンドンに最も古くからあるベーカリーの一つ。文字通り、開店当初の店舗が旧郵便局だったことに由来した名前がなんとも可愛らしい。イート・インのない小さな店内には、毎朝の食卓に欠かせない、あらゆる種類の食パンや丸パンが並ぶ。そのすべてが、有機製品認定団体の英国土壌協会に認められた、オーガニック・ブレッドだ。サワー種と呼ばれる天然酵母で作られたライ麦パンは、目が詰まってずっしりと固めの食感と、その独特の酸味がヨーロッパならでは。フルーツやオニオン、オリーブをそれぞれ練り込んだ香りの良いローフ・パンも、日替わりで試してみたい。イースト・フリーや、 完全穀物菜食のビーガン・ブレッドもあり、特定アレルギーがある人にも心強い。南ロンドンに住んでいなければ少し遠く感じるが、うれしいことにロンドン各地のファーマーズ・マーケットでストールを出しているので、ぜひウェブ・サイトをチェックしてみて。
オーガニック・
ホール・ウィート・ローフ
£1.40
店名 | The Old Post Office Bakery |
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住所 | 76 Landor Road SW9 9PH |
TEL | 020 7326 4408 |
営業時間 | 月〜金7:00-17:30 土6:00-17:00 日9:00-14:00 |
アクセス | Clapham North駅から徒歩10分 |
WEB | www.oldpostofficebakery.co.uk |
パリの朝の定番、バゲットが自慢のブランジェリー
Bagatelle
仏大使館や仏語学校、フレンチ・ビストロが顔を揃えるフレンチ・コミュニティーの中心で、「まるでパリの街にあるブランジェリーのよう」と慕われ、毎朝焼きたてのバゲットを買い求める人々に愛される「バガテル」。フランスの朝に欠かせない定番の「バゲット・パリジェンヌ」は、1日2回、北ロンドンにある自社工場から届けられる。フランスから輸入した小麦やライ麦を使い、ふわっとした中身にさくさくの皮という、おいしいバランスを実現させている。バゲットの種類も豊富なので、クリスピー、オーガニック、ライ麦バゲットと、用途や好みに合わせて選ぶのも楽しみの一つ。ころんとしたフォルムが人気のマカロンは、ピスタチオ、パッション・フルーツ、ラズベリーなどのフレーバーを展開。色とりどりのボックス・セットはおみやげにも喜ばれそう。ウィンドーには、仏大使館パーティーでお披露目したというエッフェル塔を型取ったパン・アートが。パリ気分を一層盛り上げてくれる。
*閉店しました
バゲット・パリジェンヌ £1.20
サワードウ・バゲット £1.40
店名 | Bagatelle |
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住所 | 44 Harrington Road SW7 3NB |
TEL | 020 7581 1551 |
営業時間 | 月〜土8:30-19:30 日8:30-18:00 |
アクセス | South Kensington駅から徒歩5分 |
WEB | www.bagatelle-boutique.co.uk |
南仏リゾート気分でプティ・デジュネ
Aubaine
南仏風のフレンチ・カフェ・ビストロに、自社ベーカリーを併設する「オベンヌ」。天気の良い日なら一日中座っていたくなる明るい店内は、ブレックファスト・タイムが特に忙しい。眠気覚ましのコーヒーと、手軽に食べられるフレンチ・ペイストリーの朝食を、一日の原動力にする常連客が多いからだ。空気をたっぷり含んだクロワッサン、お好みでプレーン、チョコレート、シュガーから選べる甘さを抑えたブリオッシュ、香り高いサルタナ・レーズンがぎっしりの「パン・オ・レザン」。どれもすぐに売れ切れてしまうので、オンライン予約できるシステムがあるほどだ。ここで、クリスマス・ケーキより人気があるのが、1月の初めに売り出される「ガレット・デ・ロワ」。紙の王冠を載せたパイ菓子で、中に陶器の人形が隠されている。フランスでは、これを家族で切り分け、人形が当たった人が王冠を被り、王様になるという。家族が笑顔になれる、こんな楽しいデザート。ぜひ来年は試してみたい。
パン・オ・レザン
£2.50
店名 | Aubaine |
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住所 | 260-262 Brompton Road SW3 2AS |
TEL | 020 7052 0100 |
営業時間 | 月〜土8:00-22:30 日祝9:00-22:00 |
アクセス | South Kensington駅から徒歩10分 |
WEB | www.aubaine.co.uk |
職人の情熱がたっぷり詰まったサワードウ・ブレッド
Flour Power City
「おいしいパンに必要なものは? と聞かれると、いつも『粉、塩、水、酵母、そしてラブ』と答えているよ」とヘッド・シェフ。食のメッカであり、フード・ラバーが集まるバラ・マーケットにショップを構えるだけに、彼らのパン作りへかける愛情とこだわりは並大抵のものではない。サワー種を使った強い酸味のあるパンが主流だが、その酵母を育てるには3~4週間が必要なのだとか。初代店舗があった、東ロンドンのホクストン・ストリートから名前を取った「ホクストン・ライ」は、発酵過程を入れると30時間のプロセスを経て、豊かな香りとずっしりとした食感を持つパンに焼き上がる。すべてはおいしいパンのため、短縮できない行程だ。上質のオリーブ・オイルをたっぷり使ったフォカッチャ、定番のフレンチ・クロワッサン、それにデニッシュなど、様々な人種の集まるロンドンのニーズに合わせて幅広く展開しているため、きっとお気に入りの味に出会えるはず。
ホクストン・ライ
ホール £8.00
ハーフ £4.00
クォーター £2.00
店名 | Flour Power City |
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住所 | Stoney Street Borough Market SE1 1TL |
TEL | 020 8691 2244 |
営業時間 | 月7:00-16:00 火〜金7:00-18:00 土8:00-16:00 |
アクセス | London Bridge駅から徒歩10分 |
WEB | www.flourpowercity.co.uk |
200年変わらない味のパン・ド・カンパーニュ
Poilane
1932年、パリのサンジェルマン・デ・プレで創業して以来、店名の頭文字「P」を模した切り込み入りの、重さ1.9キロもある田舎パンを頑固に焼き続ける老舗。もちっとした食感と、サワー種の柔らかな酸味を持つ優しい味が人気だ。フランス産の上質な素材にこだわり、小麦の産地として有名なボース地方やブリ地方の小麦に、ブルターニュ半島南部、ゲランド産の塩を使用。自然発酵で香りが増した生地を、石釜で薪を使いじっくりと焼き上げたパンは、そのままで、トーストして、サンドイッチにして、と幅広く楽しめる。そして、スプーンとフォークをかたどったなんとも可愛らしいクッキー「ピニュシオン」は、パリのおみやげリクエストに必ず入るくらいの人気者。「お仕置き」という意味で、ポワラーヌ家のおばあちゃんが、子供たちに「お仕置きよ~」と言いながらこのクッキーをくれたのが、名前の由来。バター味、ジンジャー味のスプーンと、チーズ味のフォークは、ロンドン店でももちろん購入可能。
パン・ド・カンパーニュ
(ポワラーヌ・ローフ ホール)
£8.30
店名 | Poilane |
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住所 | 46 Elizabeth Street SW1W 9PA |
TEL | 020 7808 4910 |
営業時間 | 月〜金7:30-19:00 土7:30-18:00 |
アクセス | Victoria駅から徒歩13分 |
WEB | www.poilane.com |