英国の伝統文化の一つ、狩猟。その対象はカモやキジ、ヤマシギといった鳥類から、ウサギ、シカなど獣類まで幅広い。そうして捕れた肉を使った料理を、英国では「ゲーム料理」と呼ぶのをご存じだろうか。希少価値が高くそれなりに値も張るが、独特の風味に魅せられたファンたちが、毎年、市場に出回る季節を心待ちにしている。冬に備えて脂肪を蓄える野生の鳥獣は、秋が食べごろ。今しか頂けない貴重な一品を、いざ、食しに。
St. John
肉好きグルメなら、何度も通いたくなる評判の店
豚のマークでおなじみ、ロンドンの食通なら知らない者はないミシュラン・スター・レストラン。「鼻先からしっぽまで」をテーマに、動物のあらゆる部位を余す所なく使い、素材の良さを生かしたシンプルな英国料理に仕立 て上げる腕前はさすがの一言。かつてベーコンの薫製工場であった時代の名残を感じる、作り込みすぎない素朴な雰囲気と、開放感のあるスペースも好ましい。「自由に羽ばたいて生きてきた野生の鳥は、いわば究極のフリー・レンジ(放し飼い)。ストレスの少ない動物特有の肉質がある」と、ヘッド・シェフ。特に今年は独特の香りを持つグルーズ(ライチョウ)が当たり年という。シンプルに丸ごとローストして、パン粉で作られたブレッド・ソースで頂くのが英国流の食べ方。野生動物特有の豊かなフレーバーと、優しくまろやかなソースとの調和が美しい。レバーも残さず付け合わせの自家製パテに。香り高く、滑らかな口当たりを楽しんで。
住所 | 26 St. John Street EC1M 4AY | |
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TEL | 020 3301 8069 | |
オープン | 月〜金 12:00-15:00 / 18:00-23:00 土 18:00-23:00 日 13:00-15:30 | |
アクセス | Farringdon / Barbican駅より徒歩4分 | |
WEB | www.stjohnrestaurant.com |
取材: Sayaka Hirakawa
Hereford Road
ぶらりと立ち寄りたい、ご近所のレストラン
ノッティング・ヒルの閑静な住宅街に位置するこちらは、控えめで入りやすい、ご近所のレストランといった趣。一方で、コントラストの効いたインテリアが、パリッとした緊張感のある空間を演出している。ゲーム肉の知識に自信がなくともご安心、ワインにも造詣の深いスタッフたちが、優しい料理の香りとともに出迎えてくれる。ヨークシャーやスコットランドなど英国各地から仕入れられる素材は、鳥類から獣類まで幅広く、日によって品ぞろえもかなり異なる。オーダーの前にその日のお勧めを尋ねれば、銃弾の跡さえ見て取れる新鮮な各種ゲーム肉を紹介してくれる。丸みのあるフォルムそのままにローストされた、キジの一種「アカアシイワシャコ」は、ほんの少しグレイビー・ソースがかかっただけのシンプルな味付け。新鮮かつクセの少ない素材だからこそできる、粋な調理法だ。付け合せのきのこも野生のものだそうで、この季節の味覚を贅沢に楽しむことができる。
住所 | 3 Hereford Road, Westbourne Grove W2 4AB | |
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TEL | 020 7727 1144 | |
オープン | 月〜土 12:00-15:00 / 18:00-22:30 日 12:00-15:00 / 18:00-22:00 | |
アクセス | Bayswater駅より徒歩5分 | |
WEB | www.herefordroad.org |
取材: Mariko Inoue
Great Queen Street
進化する英国創作料理の味がここに
ストリート名がそのまま店名として親しまれているガストロパブ・スタイルのレストラン。オーナーは世界を旅するフード・ライターというだけあって、おいしさはお墨付きだ。純英国料理に、ひとひねり効かせたモダン・ブリティッシュが自慢。メインはもちろんシェアできるスナック・メニューも人気で、夜更けにはグループの陽気な笑い声が響く。旬のグルーズ(ライチョウ)は、パイ生地のドームに包まれて登場。自家製のフォアグラを胸肉でサンドイッチ、それをサボイ・キャベツで巻き、さらにパイ生地で包んで焼き上げたシェフのオリジナル・レシピだ。ナイフを入れると見目麗しい見事なレイヤーが顔を覗かせる。淡白な味がお好みなら、赤ワイン、スパイス、ハーブで柔らかくなるまでゆっくり蒸し煮にした野ウサギのレッグがお勧め。隠し味のチョコレートがまろやかな食感を加えてくれる、寒い季節にぴったりのほくほくな一皿だ。
*このお店は閉店しました
住所 | 32 Great Queen Street WC2B 5AA | |
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TEL | 020 7242 5560 | |
オープン | 月〜土12:00-14:30 / 18:00-22:30 日13:00-16:00 | |
アクセス | Covent Garden / Holborn駅より徒歩4分 |
取材: Sayaka Hirakawa
Cinnamon Club
気品あるおもてなしで頂く、モダン・インディアン
ウェストミンスター周辺の静かなビジネス街。派手な看板はなく、通り過ぎてしまいそうなほど落ち着いた佇まいの「シナモン・クラブ」は、知る人ぞ知るモダン・インド料理の名店だ。元は図書館だったという店内は、重厚な雰囲気を残しつつも、外観とは対象的に華やかな社交場のような活気であふれている。スタッフたちのサービスは、感心してしまうほど軽快だ。シナモンが香る食前酒で口を整えた後のお待ちかねは、香辛料の刺激たっぷりのゲーム料理。マンゴー・ピューレ、ヨーグルト、チリの3種ソースが添えられたスターターは、スパイスに包まれた肉の味に緩急を付け、飽きさせない。メインのグルーズ(ライチョウ)は、さらに辛みの効いた一品。柔らかくも食べ応えのある胸肉だけでなく、ほかの部位もチョップしてソースに使われており、貴重な肉を存分に満喫することができる。華やかで気品のあるもてなしに、日常を忘れて酔いしれたい。
住所 | 30-32 Great Smith Street SW1P 3BU | |
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TEL | 020 7222 2555 | |
オープン | 月〜金7:30-9:30 / 12:00-14:45 / 18:00-22:30 土12:00-14:45 / 18:00-22:30 |
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アクセス | St James’s Park / Westminster駅より徒歩5分 | |
WEB | www.cinnamonclub.com |
取材: Mariko Inoue
Fino
上品な一口料理に舌鼓
レストランがひしめくシャーロット・ストリート界隈で、オープン以来人気の高いタパス・レストラン。気取らないカジュアル・タパスとは一味違い、スタイリッシュなインテリアやこだわりの食材を用いた旬の小皿料理で、グループでの会食にも特別なデートにも活用できそうなとっておき感にあふれている。2日前までに予約すれば頂ける子豚の丸焼きや、イベリコ豚、チョリソーなど、スペインの魅力を存分に味わえる。メニューは、仕入れの状況や素材により毎朝作り替える。冬に向かって脂肪を蓄え、9月から年末にかけて食べごろだというゲーム肉の中からのお勧めは、ハーブと蜂蜜でマリネした野生のウズラ。八角、クローブ、パプリカ、ローリエなどのスパイシーな風味が口一杯に広がる。皮はパリパリ、中は柔らかく肉汁たっぷりのクセの少ない味わいは、コクのあるスペイン産赤ワインと相性抜群。ワイン・リストが充実しているのもうれしい限りだ。
*このお店は閉店しました
住所 | 33 Charlotte Street W1T 1RR | |
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TEL | 020 7813 8010 | |
オープン | 月〜金12:00-14:30 / 18:00-22:30 土18:00-22:30 日休 | |
アクセス | Goodge Street駅より徒歩3分 | |
WEB | www.finorestaurant.com |
取材: Sayaka Hirakawa
Le Café Anglais
プレートの隅々まで秀逸な味
ブリティッシュやフレンチを織り交ぜた、質の高いモダン・ヨーロピアンに定評のあるこちらは、シェフ・店舗ともに興味深い経歴の持ち主だ。名門ケンブリッジ大学を卒業し、執筆活動も行うヘッド・シェフのロウリーさんは、ケンジントン地区で成功を収めた後、こちらをオープンした。瀟洒で品のある広いフロアは、つい数年前まで某ファスト・フード店だったというから驚きだ。ゲーム肉独特の、野生らしいくさみの残るグルーズ(ライチョウ)のローストは、特製の絶品グレイビー・ソース、ジャム、そしてブレッド・ソースとともにサーブされる。ソースでありながら、各々が主役とも言える繊細な味わいは、丁寧な仕事の証。グルーズ肉、チップス、ソースをすべて一緒に口に運べば、絶妙なバランスの食感と味わいに、頬がほころぶ。ボリュームもたっぷり、肉の自然のくさみさえも計算しつくされた秀逸品を、ぜひお試しあれ。
*このお店は閉店しました
住所 | 8 Porchester Gardens W2 4DB | |
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TEL | 020 7221 1415 | |
オープン | 月〜木12:00-15:30 / 18:30-22:30 金・土12:00-15:30 / 18:30-23:00 日12:00-15:30 / 18:30-22:00 |
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アクセス | Bayswater駅より徒歩3分 | |
WEB | www.lecafeanglais.co.uk |
取材: Mariko Inoue
Wiltons
英国伝統のシンプルな味を追求
「紳士のストリート」と呼ばれるジャーミン・ストリートに位置する「ウィルトンズ」。1742年より続く、伝統的英国料理を振る舞うこの店では、スマート・カジュアルな装いが良く似合う。オイスター屋台から始まった歴史があるだけに、シーフードのおいしさにも定評がある。ときには葉巻やコニャックのテイスティングといった、大人の男を虜にする粋な催しが開かれることも。季節のグルーズ(ライチョウ)は、あくまでシンプルにローストして、肉のうまみを凝縮。素材を生かした、奇をてらわぬ味わいにこそシェフの洗練された腕前が光る。カリカリのベーコンを添えるのも、昔ながらの料理法の名残だ。ソースは、骨で出汁を取ったグレイビーと、バターとパン粉を使ったブレッド・ソースの2種類が用意される。お好みでパン粉を振りかけて、また違った口当たりを楽しむのも一興だ。これから冬にかけては、希少価値の高いヤマシギがメニューに加わる。
住所 | 55 Jermyn Street SW1Y 6LX | |
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TEL | 020 7629 9955 | |
オープン | 月〜金12:00-14:30 / 17:30-22:30 土・日休 | |
アクセス | Piccadilly/Green Park 駅 | |
WEB | www.wiltons.co.uk |
取材: Sayaka Hirakawa
Paternoster Chop House
素材へのこだわりが光る
目の前に堂々とそびえるセント・ポール大聖堂を仰ぎ見ながら、旬の味わいを。自らファームや市場に赴き食材を選定するというほど、素材へのこだわりは群を抜いて強いブルースさんが、こちらのヘッド・シェフ。自国の味、英国料理を追求する彼は、特に肉素材へのこだわりが強く、「チョップ・ハウス」と名付けられた店名の通り、精肉店に頼ることなく、肉はすべてレストラン内で切り分けるのだという。メニューは、肉の産地によってがらりと姿を変える。少しクセのあるヨークシャー産なら、甘めのフルーツ・ジャムとともに。英国南西部産のものであれば、肉そのものの甘みを生かすべく、シンプルな味付けをほどこす。そんな彼がゲーム肉用に選んだ調理法は、パイ包みだ。ジュニパー・ベリーがほんのり香るフィリングは、鳥肉と豚肉を併せたことでジューシーさとうまみが一層増している。さくさくのパイを仲間とシェアしながら、一杯傾けたい。
住所 | Warwick Court EC4M 7DX | |
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TEL | 020 7029 9400 | |
オープン | 月〜金12:00-15:30 / 17:30-22:30 日12:00-16:00 | |
アクセス | St. Paul’s駅より徒歩5分 | |
WEB | www.paternosterchophouse.co.uk |
取材: Mariko Inoue
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