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Tue, 19 November 2024

英国の口福こうふくを探して

「英国料理はまずい」だなんて、言い古された悪評など何のその。おなじみのものから、意外と知られていないメニューまで、英国の伝統料理やお菓子には、舌が悦ぶものが色々あります。ぜひ一度ご賞味を。


No. 10

ハギス
Haggis

Haggis

「ハギスはね、毛むくじゃらの小さな動物でスコットランドのハイランド(地方)にだけ住んでいるんだよ」。生まれて初めてハギスを食べようとしていたとき、スコットランド人である義父が教えてくれました。

「へぇー、知らなかった。食べるのが楽しみ!」と応える私を見て、隣で夫がにやにや。理由を聞いても言わないので、とりあえずそのスコットランド特産ハギス料理を口に入れました。オーツ麦のつぶつぶと玉ねぎ、そしてひき肉(状の黒い部分)にしっかりと効いたスパイスが味蕾(みらい)を刺激します。クリーミーなマッシュ・ポテトと、同じくマッシュしたスウィード(根菜の一種)を一緒に食べれば、濃いめの味が緩和され、箸いやフォークがすすみました。

「実はハギスは羊の内蔵から作られているんだ」。食べ終わった後に(ちょっと大げさな感じで)夫が言いました。臓物系が苦手ではない者としては特に驚くことはなかったのですが、毛むくじゃらのハギスを食べられなかったのは残念。そして、「本物のハギスはどんな味がするの?」と聞けば、義父も夫も大笑い。というのも、実はこの動物は伝説の生き物で、ハギスを知らない外国人に対して使われる定番のジョークなんだそうです。

さて、ハギスが最もよく食べられるのは、スコットランドの詩人ロバート・バーンズの誕生日である1月25日。彼が「Address to a Haggis」というハギスに捧げる詩を書いていることから、バーンズの死後、友人たちがハギスを食べながら彼の生誕を祝ったというのがその始まりです。

ところで、ハギスにポテトとスウィードを合わせたと言いましたが、この付け合わせのことをスコットランドでは「タティー & ニープ」と呼びます。タティーはポテトのこと。そしてニープはと言えば……実はターニップだと言う場合と、スウィードだというのと、2つの主張があります。日本人にはどちらもあまりなじみのない根菜ですが、ターニップは上部がピンク色の白い蕪。スウィードはスウェーデン蕪、またはルタバガと呼ばれる中身が黄色い野菜。歴史やレシピを調べていると、あまりにも様々な見解があり、どちらが本当のニープなのか、混沌としています。困って義父に助けを求めると、グラスゴーで育った子供時代にはスウィードという野菜名は聞いたことがなく、タムシー(tumshie)と呼んだターニップのことをニープだと思っていたと教えてくれました。ただ、義父には申し訳ないのですが、ターニップはやや水っぽくてマッシュしたときのどろどろ感がちょっと苦手。ということで、私はいつも色味も奇麗なスウィードをチョイスしています。

そして、ハギスを食べた翌日のお楽しみは、何と言っても残ったハギスとタティーを使ったコロッケ。これを作るためだけにでもハギスを食べる価値あり(?)なので、ぜひお試しを。

残りものを使った簡単ハギス・コロッケ(2〜3人分)

材料

  • ハギス ... 100g(目安)
  • マッシュ・ポテト ... 300~400g(目安)
  • 玉ねぎ ... 1/2個
  • 塩・胡椒 ... 適量
  • 小麦粉 ... 適量
  • 卵 ... 1個
  • パン粉 ... 適量

作り方

  1. みじん切りにした玉ねぎを透き通るくらいまでフライパンで炒める。
  2. 火を止めて、残りもののハギスとポテトを加え、混ぜ合わせる。味をみて塩・胡椒が必要なら加える。
  3. ❷を小判型や俵型など好きな形にまとめる。
  4. ❸に小麦粉→溶き卵→パン粉の順で衣をつける。
  5. 約180℃の油で全体がきつね色になるまで揚げれば出来上がり。
memo

分量はハギスとマッシュ・ポテトの残った量に合わせて自由にアレンジください。スウィード(あるいはターニップ)は水っぽくなるので入れないほうが◯。ハギスはスコットランド以外でも英国内のスーパーで購入可能です。

 

マクギネス真美マクギネス真美
英国在住の編集&ライター。日本での9年半の雑誌編集を経て、2003年渡英。以降、英国を拠点に、ライフスタイル、ガーデニング、食などの取材、執筆を行う。英国料理の師は義母。
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