カレン・スキンク
Cullen Skink
2月も後半になって、突然、太陽が毎日顔を出し、既に咲いていた雪割草やクロッカスに混じって黄色いラッパ水仙が次々に花を開き、散歩をしていると、どこからともなく花の良い香りが漂ってくる、そんな日が数日続きました。
思いがけない春の到来に喜んだのもつかの間。翌週からは、嵐のように強風が吹き、しぶしぶと雨が降り、空は朝から濃いグレー。「いつもの英国に戻ったね」と、会う人会う人と苦笑いです。こんな寒い日には、体の芯から温まるものが必要だと思っていたら、義弟がスコットランドで食べたスープのことを教えてくれました。
「カレン・スキンク」という何とも不思議な名前の食べ物は、燻製した白身魚のハドックとじゃがいもをミルクで煮た、見るからにほっこりするスープです。
義弟によれば、スコットランドのマリーという場所に友人を訪ねた時、地元の人々はそこがカレン・スキンクの発祥地であることをとても誇りにしていて、多くのパブやレストランでメニューに載っていたそうです。そして、現地では皆、朝食にもこのスープを食べていたと言います(ランチにスープは一般的ですが、朝食にスープはイングランドではあまり見かけませんよね?)
調べてみると、カレンとはマリーにある漁師町の名前のこと。一方、スキンクはといえば、辞書を引くとトカゲという意味がでてきます。このスープにトカゲは入っていないけれど……とさらに調べると、スコットランドのゲール語では「エッセンス」を表すとか、スコットランド語で牛のスネを意味するなど諸説あり、実際のところ、どの意味が正しいものなのか不明です。ともあれ、早速作ってみることにしました。
ちなみにハドックとは、フィッシュ&チップスの魚の種類として、コッド(タラ)と並んで英国ではよく食べられている白身魚です。また、ハドックの燻製で有名なのは、スコットランドのフィンドンという町で作られるもので「フィナン・ハディー」と呼ばれています。
ハドックはフィッシュ&チップスで食べたことはありますが、以前、スーパーで真空パックになったスモークド・ハドックを買って、その生臭さに閉口し、以来自分で料理をしたことはありませんでした。でも、今回買ったものは幸い生臭くなく、スープににじみ出たスモーキーなフレーバーがよいアクセントに感じます。また、あっさりとした白身にじゃがいものほくほくした感じがマッチして、一口食べれば、内側からほかほかしてきます。
心置きなく「春だ!」とTシャツ一枚で外に出られる日はまだまだ遠い予感の英国暮らし。しばらくは、簡単に作れて、かつ心と体を温めてくれるコンフォート・フードといえる、このカレン・スキンクを何度か作ることになりそうです。
カレン・スキンクの作り方(4人分)
材料
- スモークド・ハドック ... 300g
- じゃがいも ... 2個
- 玉ねぎ ... 1個
- 牛乳 ... 600ml
- バター ... 適量
- 塩・こしょう ... 適量
- ベイリーフ ... 1枚
作り方
- 鍋にバターを溶かし、薄切りにした玉ねぎを炒める。
- ❶にさいの目切りにしたじゃがいも加え、軟らかくなるまで炒める。
- ❷に牛乳、ベイリーフを加え、さらにスモークド・ハドックを一口大にほぐして加える。
- ハドックが煮えたらベイリーフを取り出し、味見をして、塩・こしょうで味付けをする。
- そのままで食べても良いが、好みでマッシャーやハンド・ブレンダーで混ぜて少しスムーズなテクスチャーにしても。
memo
漁師の奥さんたちが、それぞれの家庭で作ってきたと言われるスープは、レシピも家庭によってそれぞれ違うようです。スモークド・ハドックとじゃがいもと牛乳の3要素さえそろっていれば、分量などは好みで加減してお気に入りレシピを見つけてください。