暑い夏に涼しいカフェでコーヒーや紅茶を飲みながら、本の世界にどっぷり浸るというのは何とも贅沢な気がする。今回はそんな優雅な時間を過ごすことができる、本屋に併設するレストランやカフェをご紹介。主役の本屋にも負けない素敵な食空間が、あなたを待っている。
(取材・文: 水野 綾女)
*階数表示は英国の表記方法に基づいています
文学好きの憩いの場
London Review Cake Shop
@ London Review Book Shop
大英博物館そばの小道を行くと、大通りの喧騒とは裏腹に静寂と自然光に包まれた、まるで鳥の鳴き声が聞こえてきそうな可愛らしいカフェがある。ここでは隣接した本屋にある2万点以上の本を買う前に読むことが可能。提供されるフードは季節感に溢れ、今の時期は夏野菜たっぷりのキッシュにガスパチョなどの冷製スープがそろう。ほかにホームメイドのケーキや2週間ごとに変わるランチ・メニューもお勧めだ。また、こだわりの茶葉は伝統的な中国式の飲み方でどうぞ。もし気に入れば、お店で使用しているものと全く同じ、ガラスのティー・ポットと小さなカップのセット、竹のトレイを購入できるのもうれしい。
文学作品のレビューやエッセイを扱う雑誌「ロンドン・レビュー・オブ・ブックス」を出版する会社がロンドン中心部ブルームズベリー地区に2003年、創立した本屋。世界各国の古典文学から現代ものまで幅広い作品を取りそろえている。また、著者を招いたトーク・イベントなど様々な催し物も開催。
種類豊富な茶葉を始め、オリジナルのエプロンやタオルなどのグッズも購入可
London Review Book Shop
14 Bury Place, London WC1A 2JL
Tel: 020 7269 9030(本屋)020 7269 9045(カフェ)
Holborn / Tottenham Court Road駅
www.londonreviewbookshop.co.uk
本屋:月~土 10:00-18:30 / 日 12:00-18:00(カフェは日曜休)
コーヒーを味わいながら旅行計画
Sacred Café
@ Stanfords
大きな世界地図が敷かれた床に地球儀やヨットの模型が置かれた 空間が印象的な本屋スタンフォーズの地上階で、コーヒー豆の良い香りを漂わせているのがセイクリッド・カフェ。ロンドンに何店舗かあるこのカフェは、ニュージーランド・スタイル。売りは何と言っても、ニュージーランド産のオーガニック豆を使用したコーヒーだ。濃厚な牛乳を使ったクリーミーな泡が特徴的なフラット・ホワイト(2.9ポンド)を試してみたい。子供の姿も多く見られる 本屋だけあって、子供たちが喜びそうなポップなケーキもずらり。コーヒーやケーキを楽しみながら、地図やガイドブックを見つつ家族旅行の計画を立ててみては?
1901年の設立以来、南極探検家のロバート・スコットや小説の主人公であるシャーロック・ホームズも 含め数多くの著名人が通ったという、「世界最大の在庫数を誇る地図&旅行関連の本屋」とうたうスタンフォーズの本店。多くの本は地域や国別に整理され、お目当ての本を探しやすい陳列になっている。
冒険心をくすぐる内装に子供たちも大喜び
Stanfords
12-14 Long Acre, Covent Garden, London WC2E 9LP
Tel: 020 7836 1321(本屋)/ 020 7700 1628(カフェ)
Covent Garden / Leicester Square駅
www.stanfords.co.uk
本屋:月~土 9:00-20:00 / 日 11:30-18:00
カフェ:月~金 8:30-19:00 / 土9:00-19:00 / 日11:30-17:30
アジアな雰囲気で頂くアフタヌーン・ティー
Tea and Tattle
@ Arthur Probsthain Bookseller
本屋の地下に降りていくと、中国語が書かれたポスターに、鶴や梅が描かれた日本風の壁紙など、どことなくアジアなテイストが散りばめられたカフェがある。ここでいただけるのは、中国茶や日本茶ではなく、伝統的な英国式のアフタヌーン・ティー。甘さ控えめなしっとりとしたスコーンには、購入することもできるこだわりの甘酸っぱいラズベリー・ジャムがピッタリだ。そのほかにも、13種類に及ぶサンドイッチやホームメイドのケーキなどもお手ごろ価格で楽しめる。家族経営ならではの、まるで友人の家に遊びに来たかのようなアットホームな雰囲気に、再び訪れたいと思わずにはいられない。
1903年に旅行好きの店主が始めた、アジアやアフリカ、中東に特化した本が並ぶ本屋には、文学や旅行、語学関連に加え、目の前にある大英博物館のエキシビションにちなんだ本も置かれている。また、店内の奥には3、4カ月ごとに作品が入れ替わる小さなギャラリーも併設。
本の数はさほど多くはないが、新旧を問わない品ぞろえが売り
Arthur Probsthain Bookseller
41 Great Russell Street, London WC1B 3PE
Tel: 020 7636 1096(本屋)/ 07722 192 703(カフェ)
Holborn / Tottenham Court Road駅
www.apandtea.co.uk
本屋:月~金 9:30-17:30 / 土 12:00-16:00
カフェ:月~金9:00-18:30 / 土 12:00-16:00
「本屋のデパート」で一服
Café W
@ Waterstones (Piccadilly)
巨大書店チェーン、ウォーターストーンズのピカデリー・サーカス店は、ヨーロッパの本屋の中でも最大級。階ごとにジャンル分けされた20万点以上にも及ぶ本を有する、地下やメザニンを含めた8階建ての建物はまさに本のデパートだ。お気に入りの本を見つけたら、もしくは本探しに疲れてしまったら、地下1階と中2階にあるカフェで一休み。カウンターにはロンドン南部のバラムに店を構えるディー・ライト・ベーカリーのホームメイド・ケーキやデニッシュ、スコーンが並ぶ。ほかには、サンドイッチや日替わりのスープなども。カフェのスタンプ・カードを作ってポイントを貯めると、お得なサービスを受けられる。
衣服を扱う大型デパートのシンプソンズが入っていたアール・デコ調の美しい建物が本屋に様変わり。豊富な品ぞろえに圧倒されるが、お勧めの本に添えられたスタッフの手書きコメントにほっとする。子供向けの本を置く3階は、場所にちなみ「サーカス」をテーマにした、色彩豊かな遊び心溢れる空間に。
ピカデリー・サーカス駅のすぐそばということもあり、観光客の姿も多く見られる
Waterstones (Piccadilly)
203-206 Piccadilly, London W1J 9HD
Tel: 020 7851 2400
Piccadilly Circus駅
www.waterstones.com/bookshops/piccadilly
月~土 9:00-22:00 日 12:00-18:30(カフェも同様)
RIBA お墨付きの空間で自由なひとときを
The Café
@ Foyles (Charing Cross Road)
2014年に元の場所から数件離れた建物に移転し、新しく生まれ変わった老舗書店フォイルズの5階にできたザ・カフェ。広々としたモダンな空間には、新品の本をうれしそうに読む人や、パソコンで作業する人、語らう家族など、思い思いの時間を過ごす客でいっぱい。長いカウンターには、デニッシュやケーキ、そしてランチ時になれば、裏のキッチンで作っている出来たての料理がずらりと並ぶ。メイン・コースとグラス・ワインのランチ・セットは本格的ながら10ポンドとリーズナブル。チョコレートの甘みと黒ビールのコクのある苦みのバランスが絶妙なチョコレート・ギネス・ケーキは来たら絶対食べてとは店のスタッフの弁。
今年、王立英国建築家協会(RIBA)主催の「RIBA ロンドン・アワード」を受賞した、6階まで吹き抜けになった開放感に溢れた美しい空間に、国内外から集められた幅広いジャンルの本を有する。本に関連したグッズやフォイルズのオリジナル・グッズはプレゼントやお土産にもピッタリ。
かつて名門美術学校の校舎だった建物を利用した広々とした空間
Foyles (Charing Cross Road)
107 Charing Cross Road, London WC2H 0DT
Tel: 020 7434 1574(本屋)/ 020 7440 3207(カフェ)
Tottenham Court Road / Leicester Square駅
www.foyles.co.uk
月~土 9:30-21:00 / 日 11:30-18:00(カフェの閉店時間は本屋閉店時の30分前)
素材を楽しむ創作料理
Café Also
@ Joseph’s Bookstore
ゴルダーズ・グリーン駅から静かな住宅街を抜けフィンチリー・ロードをまっすぐ歩くと、ティファニー・ブルーの看板が目を引く2軒並んだ本屋とカフェが見えてくる。カフェ・スペースで頂くことが出来るのは、旬の魚と、シェフ自らマーケットで仕入れた新鮮な野菜やフルーツを使った料理。ランチ・メニューは品数が多いながらも、日替わりだ。野菜とフルーツを組み合わせ、素材の味を生かした独創的なアイデアに驚くとともに、彩り豊かな盛り付けにも目を奪われるだろう。ディナー時に行く際は、人数を制限することもあるので予約がお勧め。
かつて出版社で働いていた店主が1994年に自身の本屋を立ち上げた。店主選りすぐりのフィクションやノン・フィクション、そのほかマンガや料理など様々なジャンルを網羅している。著者を招いたトーク・イベントや朗読会、更にはジャズ・ライブなど、月に2、3回イベントも開催。
レストランの隅にはマーケットで仕入れた新鮮な野菜や果物が並ぶ
このお店は閉店しました。
Joseph’s Bookstore
本屋:
2 Ashbourne Parade, 1257 Finchley Road, Temple Fortune, London NW11 0AD
カフェ:
1 Ashbourne Parade, 1255 Finchley Road, Temple Fortune, London NW11 0AD
Tel: 020 8731 7575(本屋)/ 020 8455 6890(カフェ)
Golders Green / Finchley Central駅
www.josephsbookstore.com
本屋:月~金9:30-18:30 / 日 10:00-17:00
カフェ:火~金 8:30-22:00 / 土 9:30-22:00 / 日9:30-17:00
料理本から出てきた日替わりランチ
The Test Kitchen
@ Books for Cooks
映画「ノッティング・ヒルの恋人」の舞台として有名な界隈に店を構える、料理本のみを扱う本屋の内部には、昼の12時に始まりその1時間後には食べ物の売り切れと同時に閉店してしまう、知る人ぞ知る小さなレストランがある。提供されているのは、スターターとメイン、デザートの1コースのみの日替わりランチ。料理本を見るとき、どんな匂いだろうか、どんな味だろうかと想像する人も多いのでは? ここでは売られている本のレシピを基に、まるで料理本から出てきたような品々を堪能できる。また、1コースが7ポンドととてもリーズナブル。火曜と金曜はそれぞれベジタリアン料理と魚料理が供されるが、そのほかの曜日は当日のお楽しみに。
こぢんまりした空間に木製の本棚やカラフルな旗の飾り。小学校の図書館のようなどこか懐かしさを感じる本屋には、アジアやヨーロッパ、アフリカなど世界中から集められた料理本が並ぶ。国別、そしてデザートやパンなどジャンル別に見やすくカテゴリー分けされた配置に、店主の心遣いが感じられる。
ある日のランチのレシピ(左写真)。食べて気に入ったら本でチェックして
Books for Cooks
4 Blenheim Crescent, Notting Hill, London W11 1NN
Tel: 020 7221 1992
Ladbroke Grove / Notting Hill Gate駅
www.booksforcooks.com
本屋:火~土 10:00-18:00
カフェ:火~金 12:00-食べ物が売り切れるまで(土は11:30から)
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