大らかなテムズ河の流れが市内を貫き、公園内に湖や池も点在するロンドンには、
水辺のエリアを利用したカフェやレストランがそこかしこに見受けられる。
テラス席で涼やかな風を受け、のんびりと水面を眺めながらお茶や食事を楽しむのは、
ロンドンならではの贅沢な夏の過ごし方だろう。
今回は、そんな穏やかな時間を過ごすのに最適なお店を厳選してご紹介。
川沿いや湖のほとりを散歩がてら、ほっと一息ついてみてはどうだろう。
サーモン工場直結のレストラン
Formans
所々にピンクが使われた「フォーマンズ」の外観は、それ自体がサーモンの腹部分に見えるよう設計されたという。それはここが、1905年の創業以来スコティッシュ・スモーク・サーモンの加工、卸売りを営む世界有数の企業が手掛けたレストランだからだ。こちらの一押しは、何と言っても自社製のワイルド・スモーク・サーモン。魚へのダメージを軽減するため可能な限り機械に頼らず手作業で解体し、絶妙な具合のスモークを施した高品質のサーモンは、さっぱりと口当たりの良い贅沢な前菜として楽しみたい。ヨーロピアン風の捻りを加えたメインでは、より多彩な魚介料理を堪能できる。皮はパリパリ、中はふっくらとグリルされたシー・バスは、バニラ風味のクリーム・ソースと溶け合って、驚くほどまろやかだ。現在のオーナー、ランス氏は、4代目。オリンピック・サイトの絶景が望めるサーモンのお腹の中のレストランで、秘伝の味をぜひ堪能したい。
住所 | Stour Road, Fish Island E3 2NT |
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アクセス | Pudding Mill Lane(DLR)/ Hackney Wick 駅より徒歩10分 |
WEB | www.formans.co.uk/restaurant |
取材: Sayaka Hirakawa
旬の味が教えてくれる季節の訪れ
Dock Kitchen
運河に囲まれた、港のレンガ倉庫のような建物。そこを目指し小さな橋を進んでいくと、ゴールドやビビッド・カラーの家具と雑貨が眩しい、きらびやかな空間が出迎えてくれる。英プロダクト・デザイナー、トム・ディクソンがインテリアを手掛けるこちらは、世界中を旅して、あらゆる食材の生かし方を学んできたというスティービー・パールさんが仕切るモダン・ヨーロピアン・レストランだ。旬の味に敏感な彼の下、ランチは日替わり、ディナーは隔週で新メニューが用意される。確かな腕のシェフたちが、新鮮な食材にインスパイアされて生み出す品は、味も見た目も、どこまでも繊細で美しい。食後に頂きたい、ラズベリーそのものの甘みと酸味が凝縮された「ラズベリー・アイスクリーム」は、ぷちぷちとした食感がたまらない魅惑の一品。晴れの日は外のテラスで。あいにくのお天気なら、階下の運河を打つ雨音を聞きながら風情ある食事を楽しもう。
このお店は閉店しました。
住所 | Portbello Docks, 344/342 Ladbroke Grove Kensal Road W10 5BU |
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アクセス | Ladbroke Grove駅より徒歩5分 |
WEB | www.dockkitchen.co.uk |
取材: Mariko Inoue
テムズのほとりで、コーニッシュ・フードを
Northbank Restaurant Bar
テムズ河に架かるミレニアム・ブリッジの袂、テート・モダンとシェイクスピア・グローブ座の対岸にあるこちら。テラス席は、心地良い風に当たりながら、川面を滑るボートや行き交う人々をのんびり眺めることのできる絶好のポジションだ。大きな窓から自然光が差し込むメイン・フロアには、モダンなテーブル・セッティングがずらり。川沿いの街灯を描いたモダン・アートが、ロマンティックな気分にさせてくれる。コーンウォール地方出身のシェフによる料理は、モダン・ブリティッシュにコーニッシュのエッセンスがきらり。コーンウォール産ラムのステーキは、ランプとショルダー、そしてレバーの、食感の違う3つの部位を同時に楽しめる斬新な一皿だ。季節の野菜とミント・ソースのさわやかさが、心地良いハーモニーを生み出している。メニューの冒頭には「今日のコーニッシュ豆知識」が。欠かさずチェックして、コーニッシュ通と呼ばれたい。
住所 | Millennium Bridge, One Paul’s Walk, London EC4V 3QH |
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アクセス | Mansion House 駅より徒歩5分 |
WEB | www.northbankrestaurant.com |
取材: Sayaka Hirakawa
テムズ河を見下ろす、青いレストラン
The River Café
地下鉄ハマースミス駅からテムズ河沿いのフット・パスへ入り、穏やかな散歩道を楽しんでいると、突如として活気あふれる一角が現れる。それが、目の前に雄大なテムズ河を見下ろす「ザ・リバー・カフェ」だ。内装、外観、そして店のロゴまでもが水を連想させるデザインのこちらは、水中に築かれた秘密のお城のような雰囲気。濃いブルーのカーペットが敷き詰められた広いフロアに、テーブル・クロスの白が映える印象的な空間が広がる。イタリアンを基本とする創作メニューの数々は、2日ごとに一新され、パスタやデザートはシェフたちの手により毎日作られる。地元の有機農場や漁場、そしてミラノからも仕入れられるという食材は、新鮮で良質。シンプルに味付けされた海の幸やモッツァレラ・チーズが、それだけで最高のメインになり得るのがその証だ。十数人のシェフたちが、リズム良く調理していく手さばきには、ついうっとりとしてしまう。
住所 | Themes Wharf, Rainville Road W6 9HA |
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アクセス | Hammersmith駅より徒歩15分 |
WEB | www.rivercafe.co.uk |
取材: Mariko Inoue
ネルソン提督のお気に入りパブで歴史を感じて
The Gun
銃の製造工場として発達したエリアの名残が、その店名と、そして壁に飾られたたくさんの銃から伝わってくる「ザ・ガン」。18世紀終盤、かの有名な英国海軍提督ホレーショ・ネルソンが、愛人のエマ・ハミルトンと密会を重ねていたという伝説的なパブだ。まさにその場所が、約200年後の今、対岸に多目的施設「O2アリーナ」の雄姿を臨む大人の隠れ家的パブになろうとは、恋する2人には思いも寄らなかったことだろう。メニューには毎日、パブから程近いビリングズゲート魚市場で仕入れた新鮮な魚介類を使用した、「今日のスペシャル」が加えられる。昨日釣れたばかりのサーモンを香ばしくグリルで。または、白身魚のほっくりフライにポーチド・エッグを落として。シンプルな料理の中に、素材の良さとうまみをたっぷり詰め込んだ贅沢な味わいが楽しめる。夏の間だけオープンするテラスで頂けるバーベキュー・グリルは、ぜひ今季試してみて。
住所 | 27 Coldharbour, Docklands E14 9NS |
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アクセス | Blackwall(DLR)駅より徒歩10分 |
WEB | www.thegundocklands.com |
取材: Sayaka Hirakawa
神秘的な空間で頂く本格イタリアン
Sardo Canale
塀の向こうを運河が走る、ひっそりとした佇まいのこちらは、イタリア・サルディーニャ島の味を伝えるレストラン & バー。暗めの照明が、海岸に潜む洞窟のような雰囲気を醸し出す、神秘的な空間だ。パンやミネラル・ウォーターに至るまで本場の味にこだわるこちらのお勧めは、プロシュート、サラミ、チーズの盛り合わせ。ジンの原料でもある「ジュニパー」という木を使ったプレートに、薔薇の花のように盛り付けられた3種の生ハム、ジューシーなサラミ、そして濃厚な2種のチーズは、どれも個性が際立ちくせになる味。水を通しにくいとされるジュニパーは、料理を盛るのに最適な材質で、食材のうまみも守ってくれるのだそう。そんな本格イタリアンのお供には、もちろんワインを。幅広く用意されたワインのリストの中には、「サルド・カナル」特製の銘柄も名を連ねる。少し飲み過ぎてしまったら、運河沿いに出て心地良い夜風に当たろう。
このお店は閉店しました。
住所 | 42 Gloucester Avenue, Primrose Hill NW1 8JD |
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アクセス | Camden Town/Chalk Farm駅より徒歩15分 |
WEB | www.sardocanale.com |
取材: Mariko Inoue
サーペンタイン湖を見下ろすアイコニックなカフェ
Serpentine Bar & Kitchen
ハイド・パークの真ん中に位置するサーペンタイン湖。その東の端、大きな柳の下にあるこのカフェは、モダニズムの建築家パトリック・グウィンによるデザインだ。大胆な曲線を描いた屋根とガラス張りの店内は、毎日が日曜日のように感じられる、ゆったりとした開放感に満ちている。英国の豊かな田舎の暮らしをテーマに、新鮮な季節の食材を使ったシンプルなメニューが並ぶ。薪を使って本格石釜で焼かれるこだわりのピザを始め、グリンピースとアスパラガスのリゾット、ロースト・ビートルートのサラダなど、ガーデン野菜をたっぷり楽しむことができる。信頼の置ける生産者から届く英国産チーズもお勧めの一品。熟成度の異なるスティルトン・チーズを、クインス・ジェリーとともに。そんな一皿とビールを前に、のどかに泳ぐ鴨を眺められるテラス席に陣取れば、日が暮れるまでいつまでも座っていたくなる、幸せな時間が流れていく。
住所 | Serpentine Road, Hyde Park W2 2UH |
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アクセス | Marble Arch / Hyde Park Corner / Knightsbridge駅より徒歩10分 |
WEB | www.serpentinebarandkitchen.com |
取材: Sayaka Hirakawa
リトル・ベニスに浮かぶカフェ
Waterside Café
リージェンツ・カナルの要とも言える、リトル・ベニス。毎日何艘もの遊覧船が発着する中、23年間この場所に停泊し続け、多くの人々の憩いの場となってきたのが、古いボートを改装したこちらのカフェだ。数十年前まで実際に使われていた船体を利用しているため、ほかでは味わえない、本物のボートならではの特別な居心地を楽しむことができる。船内の空間自体はこぢんまりとしているものの、河岸にテラス席が用意されているほか、船の先端部分のデッキにもオープン・シートが設けられており、何通りもの過ごし方を見つけられるはず。小さな天窓から船内に差し込む温かな日差しを受けてケーキを頂くも良し、キラキラと光る水面を眺めながらサンドイッチを頂くも良し、またはすぐそばに水の音を聞きながらお茶を楽しむも良し。緑あふれる公園も素敵だけれど、これ以上ない水辺の空間で、のんびりと水が持つ力に癒されてみてはどうだろう。
住所 | The Pool of Little Venice,Warwick Crescent, Paddington W2 6NE |
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アクセス | Warwick Avenue駅より徒歩5分 |
取材: Mariko Inoue
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