第169回: 監査法人の変更:その流れと必要プロセスについて
最近、周囲で監査法人を変更するという声を、耳にすることが増えました。
背景には、コンプライアンスやレギュレーションの厳格化によるコスト増があります。そこに業界の人材不足が加わったことで、これまで監査法人より可能とされてきていた期限内での対応が困難となっている点が挙げられます。さらに、その上にインフレーション要因も加わり、大幅な料金の値上げがあることがうかがえます。
また、大手会計事務所では社内規定により、これまでは特定要件をクリアしていれば可能だった監査と、それ以外のサービスの同時提供を行わないところも増加しています。監査法人を多様化する動きは、規制当局を含む多くの人々や状況において歓迎されることといえます。つい数年前までは、日本の大手企業子会社である現地中小企業の場合、あまり知名度の低い監査法人を指名することはリスクを伴うと考えられていましたが、その風潮も減少しています。
新しい監査法人を選択する際の注意点は何でしょうか。
適切性という観点からいえることは、自社に対する規模感、そして必要とする対応と監査法人の技術的能力がマッチするかということが重要になります。英国進出拠点の場合、英国での活動は小規模かつ限定的であっても、クロスボーダーとなる関連会社取引や大規模国際企業グループの一部であることにより、国際税務や特有なコンプライアンスが関わってくることが往々にしてあります。こうした業務の経験が浅い場合、見落としが起こることもあり得るため注意が必要です。
ほかに考慮すべきことはありますか。
サービスの提供方法も考慮する必要があります。最終的な成果物は同等のものだとしても、そこにたどり着くまでのプロセスはさまざまです。スケジュール感や担当者との関係性、関連業務も併用可能か、日本語サポートの有無など、自社にとって重要となる優先ポイントの洗い出しをお勧めします。
新しい監査法人を確定した際の一般的なプロセスを教えてください。
自社の定款・規定にもよりますが、形式的には監査法人側が辞任することになります。現監査法人へ監査法人変更の申し出を連絡後、監査法人側が辞任届(Resignation letter)の発行を行う流れとなります。新監査法人の任命においては、株主ではなく取締役が任命できるため、取締役会決議事項となります。下記が一般的な英国での監査人変更対応の流れになります。
❶ 会社より現監査人へ監査人変更を連絡
❷ 現監査人よりResignation letterを会社宛てに発行
❸ 会社より新監査人へResignation letter受領を報告
❹ 新監査人より、前監査人へ事前照会手続き書面であるクリアランス・レター(Clearance letter)の発行
❺ 新監査人と前監査人の間で引継ぎ開始
❻ 会社と新監査法人との契約締結
❼ 新監査人と会社間で監査準備開始
*この記事は一般的な情報を提供する目的で作成されています。更なる情報をお求めの場合は、別途下記までご相談ください。
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浦崎絵夢
ビジネスディベロップメント・ダイレクター
4大会計事務所での駐在員税務関連業務や金融リサーチ会社での経験有り。2009年の日系部署発足の礎を構築。幅広い業務でクライアントやスタッフ間の調整役を務める。