第171回: 英国法人税-主な変更点の再確認
英国企業が支払う法人税の税率はどれくらいですか。
2023年4月1日以降、課税対象所得が25万ポンドを超える企業は通常、税率25パーセントが課せられます。課税対象所得が5万ポンド未満の企業では19パーセントです。課税対象所得が5万1ポンドから25万ポンドの企業は25パーセントですが、特別に減額措置が適用されます。グループに属する企業の場合、上記の基準額が引き下げられます。例えば、日本に親会社と日本の姉妹会社2社を持つ英国企業は、英国での課税対象所得が25万ポンドの4分の1である6万2500ポンドを超えると25パーセントが課せられます。
英国法人が取得した固定資産の特別償却はどうなりましたか。
特別償却率の対象となる資産に適用される暫定的な初年度控除(FYA: First Year Allowance)の50パーセントは、26年3月31日まで継続されます。設備や機械に対する130パーセントのFYAは、予定通り23年3月31日に終了し、「全額費用化」(full expensing)と呼ばれる100パーセントのFYAに変更されました。
全額費用化と年次投資償却(AIA)の違いは何ですか。
23年4月1日以降、どちらの減価償却でも、企業は購入した年度に100パーセントの償却を申請できます。しかし、いくつか微妙な違いがあります。全額費用化では、他者にリースするために購入したものではない新品の資産のみが対象となります。中古資産やリースするために購入した資産は、年次特別償却(AIA: Annual Investment Allowance) の対象となります。企業がAIAを申請できるのは、年間支出額のうち最初の100万ポンドに限られ、超過分については低率の普通償却(WDA: Writing Down Allowance)が適用されます。100万ポンドの上限は、英国内のグループ全体での共有となります。全額費用化を申請できる適格な支出額には上限がないため、英国で大規模に事業を展開し、固定資産に多額の予算を割くグループにとっては非常に有益な制度です。
日本と同じように、英国にもピラー2(グローバル・ミニマム課税)のルールがありますか。
はい、あります。年間のグローバルの売上高が7億5000万ユーロを超える世界的なグループに属する英国の企業に適用されます。23年12月31日以降に始まる会計期間には、多国籍上乗せ課税と国内上乗せ課税が適用され、その翌年にはバックアップ・ルールも導入されます。こうしたルールにより、低税率の国や地域で事業を展開するグループには調整が必要となり、最低実効税率は15パーセントになります。英国や日本といった課税管轄地のみで事業を行うグループは、追加納税の必要はなさそうです。しかし、いくつか税務書類を提出する必要があります。
英国で引き続き研究開発(R&D)税額控除を申請できますか。
はい、できます。ただし、最近また規則が変わりました。世界的なグループで考えた場合、現在は企業の規模に応じて二つの制度があります。これらの制度は、24年4月1日以降に始まる会計期間から統合される予定です。黒字企業は20パーセントの税額控除を受けることができます。赤字企業の場合は、研究開発費控除(RDEC)を受け取る前に、名目税率として法人税の低税率19パーセント分が差し引かれます。研究開発税額控除を他者に支払うことはできなくなるため、請求する企業は、ほかのグループ会社や税務代理人の銀行の詳細ではなく、英国にある自社の銀行の詳細を提出しなければなりません。
ショーナ・バーカー
税務部ダイレクター
トップ10会計事務所を含む複数の会計事務所で経験を積む。ICAS、Accounting Excellenceなどから熱心で信用できるビジネス・アドバイザーとして認定され、多くの受賞経験を持つ。