第184回: 監査、レビュー、AUPについて
監査はコストという従前の考えに対して、最近では独立した第三者より付与されるアシュアランスに対する価値が重視される傾向にあります。会計監査では膨大な手続きが取られ、監査人には決して低くない報酬を支払う一方で、監査結果は定型的な短いレポートに限られます。しかも監査結果は原則として株主のみに責任を負うものとしています。しかし、実はここで監査人より決算書に付与されるアシュアランスの効果は、より広く期待されるのです。
英国子会社が監査を受けるメリットは親会社以外にあるのでしょうか。
英国では、会計監査対象が非常に広く、上場・非上場に関わらずグループ全体で一定の規模を超える会社は会計監査を受ける必要があるため、日系の英国子会社の多くは英国での会計監査対象となります。これに加えて英国では非上場であっても、全ての会社の決算書はカンパニーズハウスで公開され、文字通り誰でも決算書を閲覧できることから、この決算書が監査されていることは、広い影響があります。
例えば、事業開始数年間は赤字計上でバランス・シートがマイナスだとします。この決算書は取引先や従業員も確認している可能性が高いでしょう。何も説明がなければこの会社の事業継続性を訝いぶかり、取引先は納品を躊躇するかもしれませんし、従業員は転職を考えるかもしれません。これらは隠れたコストといえます。
しかし監査人から、ゴーイング・コンサーンに関する問題を指摘されず無限定意見が付与されていれば、こういった事態まで発展しないかもしれません。
監査以外でアシュアランス・サービスには何がありますか。
会計関連に絞りますとレビューが挙げられます。会計監査が国際会計基準(ISA)に基づいて手続きが組まれるのに対して、レビューは国際レビュー基準 (ISRE)に基づいて、主に分析手続きと質問を中心としたプログラムが組まれます。監査と比較して手続きが大幅に簡素化されているため、コストも大きく下がりますが、意見表明は「消極的」な表現で、アシュアランスも限定的となります。
代表的なレビューは、四半期財務諸表レビューや中間決算レビューなどがあります。
AUPを最近よく耳にしますが。
AUP(Agreed Upon Procedure: 合意された手続き)は基準や指針に従って手続き実行をする監査やレビューとは異なり、クライアントと監査法人が同意した特定の手続きを組んで実施するものです。監査やレビューと異なり、監査人による意見・結論表明はなされず、従って厳密にはアシュアランス・サービスとはいえません。
しかし、監査やレビューでは、各手続きの結果を詳細に報告されることはありませんが、AUPの場合は実施結果や発見内容がレポートされます。
例えばどんな場面でAUPが活用されるのでしょうか。
監査やレビューでカバーされる財務諸表以外の特定の部分を対象として組まれるものが多いといえます。また監査やレビューは依頼主と監査対象が同一であることに対して、AUPは二者が別である場合もあります。
具体例としては、顧客がサプライヤーに対して、運転資金状況、品質管理、コンプライアンスの確認のために、双方で同意された手続きを組んで、監査人が実施結果を双方に報告。目的は顧客がサプライヤーの安定供給に対して自信や信頼を高めることにあります。サプライヤー側にとっても、良好な結果は顧客からの信頼を勝ち取る機会となります。
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高西祐介
監査・会計パートナー
英国大手会計事務所にて多くの英系大企業監査を担当。日系企業をサポートしたいという強い思いからGBAへ。監査、ファイナンスデューデリ、組織再編アドバイスを専門とする。