どこかで耳にしたことがある名作ばかり
マン・ブッカー賞歴代受賞作
英国の栄誉ある文学賞であるマン・ブッカー賞の授賞作品が、10月中旬に発表された。今年は江戸時代の俳人、松尾芭蕉の「おくのほそ道」の英題を題名に使った作品が受賞。同作に加えて、映画化されるなど話題を集めた過去の主な授賞作品を紹介する。
www.themanbookerprize.com
The Narrow Road to
the Deep North
リチャード・フラナガン著
日本語訳は未刊行
豪作家のリチャード・フラナガンが、自身の父親から聞き取りを行った体験談を基とした作品。第二次大戦中に日本軍が指揮した泰緬鉄道の建設作業に従事する捕虜たちの姿を描く。作品中には松尾芭蕉や小林一茶といった日本の著名俳人の句が引用されている。日本語訳は未刊行。
Life of Pi
ヤン・マーテル著
邦題:「パイの物語」、唐沢則幸訳、竹書房
3D映画としても大ヒットした「ライフ・オブ・パイ/ トラと漂流した227日」の原作小説。16歳の少年パイとその家族が、日本船籍の貨物船に乗船中に海難事故に遭遇。パイは生き残ったトラ、オラウータン、ハイエナ、シマウマとともに、救助ボートの上で助けを待つことになる。
Amsterdam
イアン・マキューアン著
邦題:「アムステルダム」、小山太一訳、新潮社
ジェームズ・マカヴォイ主演の映画「つぐない」の原作を始めとする数々のベストセラー小説を手掛けたイアン・マキューアンが安楽死をテーマとして取り上げた作品。痴呆症で亡くなった女性の元愛人たちが葬儀で一堂に会したことから始まる物語を通じて、現代のモラルを問う。
The English Patient
マイケル・オンダーチェ著
邦題:「イギリス人の患者」、土屋政雄訳、新潮社
レイフ・ファインズ主演のアカデミー賞作品賞受賞作「イングリッシュ・ペイシェント」の原作。第二次大戦中のイタリアの僧院に、大やけどを負った記憶喪失の男がいた。名前さえ分からずにただ「イギリス人の患者」と呼ばれていたこの男が、徐々に記憶を取り戻していく。
The Remains of the Day
カズオ・イシグロ著
邦題:「日の名残り」、土屋政雄訳、早川書房
長崎出身の日系英国人作家であるカズオ・イシグロの代表作。本作はアンソニー・ホプキンス主演で映画化された。第二次世界大戦後に米国人の富豪が買い取ったイングランドの由緒ある屋敷で働く執事スティーブンスの現在と回想が行き交う物語を、静謐かつ美しい筆致で描く。
Midnight's Children
サルマン・ラシュディ著
邦題:「真夜中の子供たち」、寺門泰彦訳、早川書房
イスラム教の開祖ムハンマドの生涯を描いた問題作「悪魔の詩」でイラン最高指導者ホメイニ師から死刑宣告を受けた著者が、英国からの独立を果たそうとするインドを物語の舞台に設定。虚構と現実を織り交ぜたその内容は、「魔術的リアリズム」と呼ばれている。