大英博物館でお披露目
再発見された北斎の作品
日本を代表する浮世絵師、葛飾北斎(1760~1849年)の特別展が現在ロンドンの大英博物館で開催中だ。「失われた作品」と呼ばれる北斎の未公開作品100点余りが世界で初めて一般公開されている。
‘Meijian Chi avenges himself on his enemies with the sword’ 中国の怪奇譚から取られた、宿敵に復讐する眉間尺
なぜ「失われた作品」なのか
北斎の晩年ともいえる1820~40年代に、図鑑「万物絵本大全図」のために制作した肉筆画(版画用の下絵)103点。何らかの理由で図鑑は発表されず、どういった経緯でかそれらの肉筆画はパリに渡り、長くフランス人の個人収集家に所有されていた。1948年に1度パリのオークションに登場したが、そのときもプライベート・コレクションとして収蔵され、以来所蔵者が分からなくなったまま70年近い月日が経過。2019年にパリで再発見され、翌年に大英博物館が購入した。
「万物絵本大全図」とは
庶民が興味を持つ森羅万象の物事をハガキ大の版画でコンパクトにまとめた図鑑で、江戸末期には多くの絵師がこうした図鑑を刊行していた。北斎も、神話や宗教、歴史上の人物、動物や植物、そして庶民の生活など、中国やインドなどの海外 をも含めた森羅万象の図103枚を描いた。しかし、これらの下絵は版木に彫られることなく版画図鑑として刊行されることもなかった。通常、浮世絵の下絵は版木に写しとられる過程で版下として廃棄されることが多い。この103枚は版画が彫られ ることがなかったゆえに肉筆画コレクションとして生き延びることになったのだ。今回、展示と併せて大英博物館から出版された「Hokusai: The Great Picture Book of Everything」(「万物絵本大全図」)は、初めて本来あるべき姿に印刷されたということになる。
‘Various aquatic birds’ さまざまな水鳥を描いたもので、中央下のカモは後に北斎が別の作品に流用した
Hokusai: The Great Picture Book of Everything
2022年1月30日(日)まで
10:00-17:00(金は20:30まで)
£9(土・日は£11)
The British Museum(Room 90)
Great Russel Street, London WC1B 3DG
Tel: 020 7323 8181