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Thu, 07 November 2024

Seanさん - ファッション・ブランド 「happie loves it」デザイナー 後編

Seanさん ファッション・ブランド
「happie loves it」デザイナー
Seanさん

[ 後編 ] ロンドンに活動拠点を置くことを決意したSeanさん。2003年、「オルタナティブ・ファッション・ウィーク」への参加を機に、トップショップとのコンセッション契約を結ぶことに。順調に売り上げを伸ばす中、Seanさんとパートナーのhappieさんは、「このままでよいのか」という疑問を抱くようになる。そして2人が選んだ道は……。全2回の後編。
プロフィール
大阪府出身。関西大学卒業後、米国へ留学。約2年後に帰国した後は韓国やタイなどを渡り歩く。タイで服作りに目覚め、韓国で知り合ったスタイリストのhappieさんとイタリア・トスカーナで自作の服の販売をスタート。2003年にはロンドンでトップショップとコンセッション契約を結び、記録的な売り上げを達成する。07年に同契約を終結。同年、ロンドンのコベント・ガーデンにショップをオープンさせる。08年ロンドン・ファッション・ウィークのエキシビションに参加。以降は毎シーズン、ショールーム展示を行っている。

 

さすらい人の終着地

イタリア・トスカーナ地方で服作りに励む「満たされた」日々。なのに2001年、タイで知り合った友人の誕生日パーティーに出席するため訪れたロンドンで、なぜか「ここだ」と思ってしまった。Seanさんはパートナーのhappieさんとともに日英を行き来しながら、ロンドンに活動拠点を置くための準備に勤しむ。そしてチャンスが巡ってきたのが2003年。若い才能を発掘し支援する「オルタナティブ・ファッション・ウィーク」におけるキャットウォーク・ショーの機会を得た。ショーの後、友人が2人に内緒でハイストリート・ブランド、トップショップのバイヤーにコンタクトを取ったところ、「happie loves it」に興味を持っていたトップショップ側との話がトントン拍子に進み、同店内で商品を販売するコンセッション契約を結ぶ。

happie loves it
壁にはフクロウのイラストとともに「はぴ」という日本語も


「始めはハンガーレール一つからスタート。それを1週間で全部売り切った。そうしたら次の週には2つ、その次には3つ――トップショップは非常に判断が早かったですね。6カ月の間に約10店舗で取り扱われるようになりました」。そんな「増やせと言われるがまま寝る間もなく服を作り続けた」日々が終わりを迎えたのは、2007年の夏のことだ。

「ブランド・ディレクターのジェーン・シェパードソンさんが、スーパーモデルのケイト・モスがデザイナーとしてトップショップと契約を結んだタイミングで辞任したんです。ロンドンにプライマークが進出し、格安競争が激化し始めたころでした」。Seanさんはかつてシェパードソンさんと会話をしたことがあった。毎週月曜日朝、旗艦店の全フロアを見て回る彼女とかち合い、こう言われた。「Different quality, different world!」。簡潔な言葉。でも「売っているだけじゃない、理解してくれている」と実感できた。その人物が去ると知り、今後のトップショップと自分たちとは「方向性が違うな」と感じたのだという。記録的な売り上げを残していた「happie loves it」を手元に残したいトップショップ側は慰留しようと努めたが、「トップショップの価格帯では収まらない、クオリティーの高いものを作りたい」というSeanさんたちの決意は固かった。

happie loves it
「happie loves itらしさ」にあふれた服の数々

ロンドンから広がり続ける「ハッピー」

そして同年、コベント・ガーデンにショップをオープン。この場所を選んだのは、ここならば英国人だけでなく、世界中の人たちと触れ合うことができると思ったからだ。ブランド名は、タイにいたころ、長髪で髭を生やしたSeanさんが「ヒッピー」と呼ばれて「ヒッピーじゃなくてハッピー」と咄嗟(とっさ)に返したことから付けられたもの。ツイッギーやアン・ハサウェイも顧客というショップの内部はその名の通り、訪れる人をハッピーにさせるワクワクに満ちている。「隠し味としてのユーモア、手作りの温かさ、そして楽観的な明るさ――これが『happie loves it』らしさ」。

そしてもう一つのこだわりが「サービス」だ。オープン直前、久々に戻った日本でサービスのクオリティーの高さに感銘を受けた。高級店でなくても持っている「当たり前の文化」とも言えるそのクオリティーを、この空間の中だけでもお客さんに味わってほしいと、特に日本人以外のスタッフにはサービスの重要性をとことん伝えている。「こういう『らしさ』を理解してくれるお客さんが来てくれて、喜んでもらう。そしてどこかに驚きを感じて、ちょっと冒険してもらえれば」。

今後はNYに店舗を出したいし、日本にも逆上陸したい、と目標を語る。一方で、ベースはあくまでロンドン、ここから広がっていきたいという言う元さすらい人Seanさんの根っこは、しっかりとロンドンという大地を掴んでいる。

 

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