毎年12月1日は世界エイズ・デー国際機関が定めた記念日 - エイズまん延の防止、差別や偏見の解消が目的
来月1日は、世界保健機関(WHO)が定める国際記念日の一つである、「世界エイズ・デー」です。HIV感染によるエイズまん延を世界規模で防止し、エイズ患者やHIV感染者に対する差別や偏見を解消することを目的としており、この日は世界中でさまざまなイベントや啓発活動が行われます。
エイズと言いますと、数年前までは社会的に非常に関心が高いトピックでしたが、近年は地球温暖化への懸念やフェイスブックをはじめとするソーシャル・メディアが引き起こす害悪などに少々席を譲った気がしています。みなさんはどうでしょうか。
でも、9月中旬、アッと驚く「告白」がありました。ラグビー・ウェールズ代表の元キャプテン、ギャレス・トーマス氏がツイッターで自分はHIVに感染していると公表しましたよね。トーマス氏は感染を紙面で暴露すると大衆紙「サン」に「脅された」ため、自ら事情を発表せざるを得ず、そうでなければ「絶対に公表しなかった」そうです。同氏は2009年に同性愛者であることを公表しており、16年には男性パートナーと結婚もしています。しかし感染者への偏見はまだまだ強く、「脅迫」と評するほどの圧力なしには、HIV感染者であることを公表できないのだと気づかされた話でしたね。
改めて、エイズにまつわる言葉の整理をしておきましょう。まずエイズ(AIDS)とは、「Acquired Immunodeficiency Syndrome」の頭文字を取ったもので、「後天性免疫不全症候群」と訳されます。後天性(生まれた後にかかる)、免疫不全(免疫の働きが低下する)、症候群(いろいろな症状の集まり)という意味になります。そしてHIVとは、「Human Immunodeficiency Virus(ヒト免疫不全ウイルス)」のことで、さまざまな細菌、カビやウイルスなどの病原体から体を守る細胞に感染するウイルスです。つまりエイズはHIVによって引き起こされる疾患のことで、23の症状が指標になっています。HIVの感染経路は、①性行為による感染、②血液を介しての感染、③母親から赤ちゃんへの母子感染があります。HIVに感染してもすぐにエイズを発症するわけではなく、通常は6~8週間後に血液中にHIV抗体が検出されますので、まずはHIVの検査を受けることが非常に重要です。
世界では1981年に初めてエイズ患者が報告されました。日本では1985年です。WHOによると、これまでにHIV感染によるエイズ発症によって3200万人が亡くなったそうです。2018年末時点で、世界のHIV感染者は3790万人。地域によって差があります。全体の3分の2以上の感染者がアフリカ地域に住んでいるのです。治療薬の効果によって、2000年から2018年の間に新規にHIV感染者となった人の数は37%減少し、エイズ発症による死者数は45%減少しました。WHOによると、各国の市民組織や国際開発の支援機関などが大きな貢献をしたそうです。英慈善組織「ナショナル・エイズ・トラスト」によると、英国ではHIV感染者は約10万人を超え、毎年約4300人の新規の感染者が出ています。
かつてエイズは、「男性同性愛者だけが感染するもの」とされ、強い偏見や差別がありました。英ロック・バンド、クイーンのボーカルのフレディ・マーキュリーは1991年11月24日にエイズで亡くなりましたが、当時は不治の病として認識されていました。でも、日本の「エイズ予防財団」も伝える通り、「現在はさまざまな治療薬が出ており、きちんと服薬することでエイズ発症を予防することが可能」なのです。
世界エイズ・デーの今年のテーマは「コミュニティーが状況を変える(Communities makethe difference)」。HIV検査の普及や感染防止には、地域で働く人々の協力が不可欠です。当日はルワンダのキガリで記念式典が開催されます。
Red Ribbon(赤いリボン)
1990年代初期、米ニューヨークのアーティストたちがエイズへの理解と支援の象徴として運動を始めた。発想のヒントは湾岸戦争で米軍への支援を表すために木に縛り付けられた黄色いリボンと言われている。著名人が着用することで大々的に広がった。クイーンのボーカル、フレディ・マーキュリーを追悼する1992年のコンサートでは、10万本の赤いリボンが配られたという。