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Sun, 26 September 2021

小林恭子の
英国メディアを読み解く

小林恭子小林恭子 Ginko Kobayashi 在英ジャーナリスト。読売新聞の英字日刊紙「デイリー・ヨミウリ(現ジャパン・ニュース)」の記者・編集者を経て、2002年に来英。英国を始めとした欧州のメディア事情、政治、経済、社会現象を複数の媒体に寄稿。著書に「英国メディア史」(中央公論新社)、共著に「日本人が知らないウィキリークス」(洋泉社)など。

ヘンリー王子夫妻が仰天インタビュー王室の内情を暴露 - 英国では「侮辱」、米国では「勇気ある」行動

ヘンリー王子と妻のメーガン妃が米人気司会者オプラ・ウィンフリー氏のインタビューに応じた特別番組が3月7日米CBSで、翌8日には英ITVで放送されました。夫妻の番組出演は英国内外で大きな反響を呼びましたが、興味深いのが英米での評価の違いです。英保守系大衆紙「デーリー・メール」は「一体、なんてことをしてくれたんだ」とする見出しを1面に掲載(9日付)。メディアを通して王室の内情を暴露したことへの怒りが伝わってきます。世論調査会社「ユーガブ」によると、今回の件でエリザベス女王側を支持する人は36%ですが、王子夫妻への支持は22%。高齢になるほど、王室支持率が高くなります。英国では番組出演自体が問題視されていますが、米国ではこの点を批判する声はほとんどなく、複数の著名人がメーガン妃の告白を「勇気ある行為」として高く評価しています。

インタビュー番組の前半はウィンフリー氏がメーガン妃に心境を聞くというスタイルを取りました。エリザベス女王の孫にあたるヘンリー王子と女優で米国人のメーガン妃が結婚したのは2018年5月です。その直前にウィンフリー氏がインタビューを申し込みましたが、メーガン妃は断らざるを得なかったそうです。王室の人間として行動を制限されるようになり、助けてくれる人もいないため、孤独感に襲われました。「これ以上生きていたくない」と思うときもあり、英国の新聞の人種差別的な報道にも苦しめられたとのことです。メーガン妃は2019年、長男アーチー君を出産しますが、王室メンバーの1人がヘンリー王子に「生まれてくる子どもの肌がどれだけ黒くなるか」を聞いたといいます。メーガン妃の父は白人、母はアフリカ系。番組の後半から登場したヘンリー王子は誰がこのような問い掛けをしたのかを明確にしませんでしたが、放送終了後、エリザベス女王でも夫のフィリップ殿下でもないことが判明しています。メーガン妃はアーチー君には「王子という称号が与えられない」とも述べ、その理由が人種差別かもしれないことを暗示しました。

王室メンバーのなかに人種差別的考えを持っている人がいるとしたら、王室ばかりか英国にとっても大きな衝撃です。

一方、ヘンリー王子は父チャールズ皇太子や兄ウィリアム王子との関係悪化も暴露して視聴者を驚かせました。王子夫妻は昨年1月、事実上公務引退の意思を固め、今年3月末、正式に引退します。チャールズ皇太子は夫妻が引退の意思を表したときから、2人の電話に出なくなったそうです。「父にはとても失望しています」と王子は語りました。ウィリアム王子とは「別々の道を歩んでいる」。公務引退がほぼ決定した昨年以降王室から経済的な支援が停止となったため、ネットフリックスやスポティファイと大型契約を結ばざるを得なくなったそうです。

保守系高級紙「デーリー・テレグラフ」のコラムニスト、アリソン・ピアソン氏は王室批判を暴露形式で公表するのは「女王に対する侮辱」と書いています(9日付)。王室批判のオンパレードでしたので、このような見方になっても仕方ない感じがしますが、一方の米国では夫妻、特にメーガン妃を褒める声が次々と出ています。メーガン妃の友人でテニス選手セリーナ・ウィリアムズさんは同妃の痛みに共感するコメントをツイッターに寄せていますし、米大統領報道官は、「自分のメンタルヘルスの苦しみを語るのは勇気ある行為と(ジョー・バイデン)大統領も考えている」と述べました。

「ワシントン・ポスト」紙(8日付)は、王室が「かつては奴隷貿易を行った国を統治してきた家系」であり、「いまだに反黒人的態度が残っていることを番組が明らかにした」と書いています。公務引退をきっかけに米国に移住したヘンリー夫妻が落とした「爆弾」についての議論は、まだまだ続きそうです。

キーワード

Royal Highness(殿下)

王室の王子(prince)あるいは王女(princess)を指す。1917年、ジョージ5世はひ孫にあたる子どもにはこの称号を採用しないことを決めた。例外は国王になる人物のひ孫のみ。ヘンリー王子夫妻の長男アーチー君はエリザベス女王のひ孫にあたるので王子の称号は与えられないが、チャールズ皇太子が国王に即位すると王子になる。メーガン妃は米番組内で、将来規定が変更され、アーチー君は王子になれないと告げられたと述べた。

 
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