E スクーター各地で実証実験中ルールを守ろう - 電動で走行が楽だが、危険性も指摘
このところ、街中でEスクーターを見かけるようになりました。子どもたちがよく乗っているキックボードはこれまでもおなじみでしたが、Eスクーターはこれに電動モーターを付けた移動手段です。利用者は子どもではなく、大人。ボードの上に乗って進んでいく様子は軽快で格好良く、「乗ってみたい」と思わせますね。
誰でも気軽に利用できるように見えますが、実は、特定の状況以外に公道でEスクーターを利用するのは違法になります。一体どんなルールがあるのか、見てみましょう。
近年、欧州各国ではレンタルでEスクーターを利用する仕組みが広がってきました。英国でも都市圏の大気の正常化や交通渋滞を避けるためのグリーンな選択肢として注目されています。調査会社INRIXによると、交通渋滞によって生産時間が減少したことによる損失は年間69億ポンド(約1兆500億円)にも上ります。
Eスクーターは「原動機付き車両」に入り、「道路交通法」(1988年)で規制されています。それによると、道路や歩道で使用する法的条件(税、技術上の安全基準など)を満たさないため公道では使用できません。自転車レーンでも使用が禁止されています。違反した場合、利用者は最高で300ポンドの罰金が科せられるか、運転免許に違反点数が加えられます。利用できるのは私道のみで、土地所有者の許可を得た場合に限ります。
ただし、道路交通法の例外として実証実験が許可されています。従って、英国でEスクーターの利用が合法になるのは「走行許可を得た私道」、「レンタル用実証実験が行われている地域の道路」。後者の場合でも、歩道での利用は許可されていません。実験は昨年7月に始まり、来年まで続きます。自分が住む地域で実験が行われているかどうかは政府あるいは地方自治体のウェブサイトなどで確認しましょう。
ロンドンでの実証実験は6月から始まりました。3つのレンタル会社が受託し、カナリー・ワーフ、シティ・オブ・ロンドン、リッチモンドなどで利用可能です。ただし、さまざまな条件が付いています。まず運転免許証を持っていること、歩道で使わないこと、2人以上ボードに乗らないこと、利用中は携帯電話を使わないこと、該当する行政区間をまたいで走行しないこと。さらに、利用申し込みの際にはオンライン・レッスンの受講が義務付けられるそうです。また、義務ではありませんが、サイクリング用ヘルメットの装着が推奨されています。最高速度はほかの地域では時速15.5マイル(約24キロ)なのですが、ロンドンでは12.5マイルに設定されています。
一部の地域でしか実験走行が許されていないのに、「その割には利用者が目に付く」と思われませんでしたか? 筆者もそんな一人です。自己所有のEスクーターを公道で利用するのが違法であることを知らない人がたくさんいるようです。警視庁によると、6月上旬までに約800台が利用違反で没収されたそうです。
気になるのは安全性です。実証実験開始前の2019年、ロンドンで自己所有のEスクーター利用者が亡くなっています。その後も自分の物と思われるEスクーターを利用中に乗用車に衝突して亡くなった事例が報道されるようになりました。歩道者への危険性も指摘されています。英国王立盲人委員会は、Eスクーターが視覚障害を持つ人に潜在的なリスクをもたらすと述べています。Eスクーターは「走行が速く、存在の認識が困難で、違法にもかかわらず歩道で利用されている場合が多いから」です。筆者自身も、歩いているとほとんど音を立てずに近づいてきて追い越していくEスクーターにぶつかりそうになって、ドキリとした経験があります。ロンドンのレンタル企業3社は何らかの音が出るセンサーを搭載する予定だそうですが、早くても8月以降と言われています。
e-scooter(Eスクーター)
電動モーター付きの超小型移動手段。日本では電動キックボードと呼ばれる。以下、現行の英国の法律では、前方と後方のそれぞれに進行方向に向かう形で車輪が付き、ボード部分に運転者が乗るもの。通常のキックボードとは異なり電動で補助されるため走行が簡易。レンタル用実証実験以外での公道での利用は違法だが、私物としての所有自体は違法ではない。