ロックダウン中のパーティー疑惑でジョンソン首相がピンチ - コロナ下での「二重基準」に大反発が起きる
2020年の年頭から感染が世界に広がった新型コロナウイルス。まさか2年後の今もまだコロナ旋風に苦しんでいるとは! 政府は20年3月末から、コロナ感染の拡大を防ぐため、「ロックダウン」(都市封鎖)政策を導入しました。厳しい行動制限が課され、小売店はそのほとんどが強制閉店となって、街中がシーンとしましたよね。不要不急の外出が禁止されるなか、自分の家族がコロナの重症患者になって入院してもおいそれとは訪問できず、高齢者用施設にいる親を訪ねることもままならない時期がありました。家族に会えないまま亡くなっていった方も少なくありません。その後、行動制限の条件が緩められたり、該当地域が変更されたりと紆余曲折がありましたが、なんらかの規制がかかる状態が何カ月も続きました。職を失った人、倒産ギリギリで経営を続ける人、ドメスティック・バイオレンスに苦しむ人もたくさんいました。
こうして国民は大きな犠牲を強いられてきましたが、行動規制の遵守を命じた側の政治家や官僚が規則破りをしていたとしたら、どうでしょう?その最たる例がボリス・ジョンソン首相です。ITVニュースが10日、スクープ報道したところによると、ロックダウン規制が続いていた2020年5月20日、ジョンソン首相の個人秘書官が官邸での飲み会に100人を招待するメールを流していたことが発覚しました。実際には約30人が出席し、首相と妻(当時は婚約者)のキャリーさんも顔を見せたそうです。当時、国民は「家にとどまる」ことが義務化され、仕事・運動・食物や医療品の確保以外の理由で外出することは禁止されていました。これを遵守しなかった場合、イングランド地方では100ポンド(約1万5700円)から最大3200ポンドの罰金が課されました。自分が同居する家族以外の人物と会うことは許されるようになっても、「一度に会えるのは1人だけ」、「戸外」、「2メートル離れる」などの条件付きで、職場では他者と集まることを極力避けるように言われましたよね。
ジョンソン首相の規則違反疑惑はこれだけではありません。昨年12月、「ガーディアン」紙が同首相と夫人が2020年5月15日に官邸の庭で職員らとともにチーズとワインを楽しむ画像をすっぱ抜き、首相はこれを「仕事の集まりだった」と弁明。それでも、レベルアップ・住宅・コミュ二ティー省のスー・グレイ第二事務次官に規則違反があったかどうかの調査を命じました。20年11月、12月に開催された複数回の集まりも問題視されています。
「規則違反ではない」と述べてきた首相ですが、国民や野党からの批判が強まり、首相が党首を務める保守党内でも求心力が低下。12日、それまでののらりくらりの答弁を変え、毎週水曜日に行われる「クエスチョン・タイム」を使って、「国民に謝罪します」と述べました。コロナ禍で家族の死を追悼することができなかった苦しみや国民の犠牲について言及し、「規則を作る側が規則を守っていないことで、国民が私や政府に感じる怒りを身に染みて感じている」。ただ、チーズとワインの談笑を首相は「あれは仕事の一環だった」と言い張ったのですが。
その後、室内での集まりが禁止されていた昨年4月21日、官邸内で職員が夜遅くまで飲み会を開いており、官邸がエリザベス女王に謝罪を出していたことも発覚しました。この日は女王の夫フィリップ殿下の葬式前日でした。最大野党・労働党のキア・スターマー党首は、ジョンソン首相に辞任を求めています。思い起こすと、首相の側近中の側近だったドミニク・カミングス氏、コロナ対策で奔走したマット・ハンコック元保健相はロックダウン規則を逸脱するスキャンダルで、政治の表舞台から去りました。ジョンソン首相の支持率は「ブレグジットを実現させる」を合言葉に大きく議席数を伸ばした19年末の総選挙当時と比べるとかなり下落しています。さて、近々の辞任はあり得るでしょうか。
Lockdown(都市封鎖)
「ロックダウン」という言葉も使われる。差し迫った脅威、リスク、危険などを理由に特定地域あるいは建物への出入りや移動を制限すること。新型コロナウイルスの発生を機に、英国では2020年3月末~6月が最初の全国的ロックダウン。夏にはほとんどの規制が一旦は解除されたものの、イングランドでは11~12月上旬第2のロックダウンへ。第3は21年1~3月。