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Fri, 13 December 2024

第29回 スコットランド独立は究極の地方分権か

スコットランド独立は究極の地方分権か

スコットランド独立を目指すスコットランド民族党(SNP)の党首、アレックス・サモンド自治政府首相が26日、「スコットランドの未来」と題した独立国家構想を発表した。エリザベス英女王を国家元首とし、英通貨ポンドを維持する一方で、自前の国防軍を創設、軍事費軽減のため原潜の核ミサイルは撤去するという内容。地元紙「ザ・スコッツマン」の世論調査では「独立に賛成」は29%、「現在の連合にとどまる」が47%。しかし、「まだ決めていない」が24%にも上った。投票は来年9月18日。それまでに スコットランドの世論がどう動くのか、今の段階で予測するのは難しい。

 

スコットランドとイングランドの確執は歴史が長い。1707年にスコットランド王国が抗争を続けていたイングランド王国との連合をのんだ背景には、大航海時代というグローバル化の到来があった。小国のままでは海外の植民地を守り抜くのは難しく、宿敵イングランドと手を組むことで生き残りを図った。石炭や鉄鉱石を産出したスコットランドは産業革命の波に乗って、世界に広がる大英帝国の版図に重工業製品を輸出、大きな発展を遂げた。

しかし、第二次大戦で大英帝国が崩壊し、英国経済はみじめなほど衰退。スコットランドが屈辱的な連合に耐える経済的な理由は弱まった。北海油田が発見されたことも追い風になって自治への要望が高まり、1979年にスコットランド議会設置を問う住民投票が行われた。賛成が過半数の51.6%に達したが、全有権者の32.9%に とどまったため、有権者の40%以上という基準をタテに議会設置は拒否された。地方分権を旗印に掲げる労働党のブレア首相の登場で97年に再び住民投票が行われ、スコットランド議会の設置が賛成74.3%、一定の課税自主権が同63.5%で認められた。

2005年には、英国政府が74年の時点で「北海油田の収入があれば、スコットランドは独立して欧州で最強の自国通貨を手にできる」という報告書をまとめていたが、その事実をずっと隠していたことが発覚。英国政府はスコットランド独立の気運が高まるのを恐れて、「独立したら、とても採算が合わない」と真っ赤なウソをつき続けていた のだ。

 

サモンド首相はイングランドへの恨みつらみを重ねるこれまでの分離主義者とは一線を画す。英国との友好関係の継続を強調し、支持を集めてきた。07年のスコットランド議会選で32.9%を獲得し、議会第1党に躍進。11年の議会選では45.4%の支持を集め、単独過半数を得た。練達の政治家であるサモンド首相は「我々は独立を終着点とはみなしていない。スコットランドをさらに良くすることが究極の目標だ」と住民投票に向けた抱負を語った。北海油田に加え、洋上風力発電の拡大が独立派の自信につながっている。独立の日は16年3月24日に設定された。

独立国家構想は651の質問に答えているが、「もっと質問がある場合はどうしたらいいのか」というのが住民の本音だろう。前出の世論調査では「経済や仕事について、もっと知りたい」が49%。年金・社会保障(37%)、税金(31%)、移民(22%)と続いた。

300年余の歳月を経て、新たなグローバル化が欧州で独立気運を高めている。米中に対抗しうる第三極として欧州連合(EU)を発足したことが国家主権を弱めた。英国だけでなく、カタルーニャ地方を抱えるスペイン、オランダ語圏フラマン地域を抱えるベルギーでも分離主義が高まっている。「国家がなくてもEUがある」というわけだ。

サモンド首相は英国からの独立を果たしたら、EU加盟を目指す方針だが、国内に分離・独立問題を抱えるスペインのラホイ首相は「スコットランドのEU加盟には反対だ」 と牽制した。EU加盟には現在の現28加盟国すべての賛成が必要だ。

英国は次の総選挙で保守党が勝った場合、EU離脱を問う国民投票を予定する。英国がEUから離脱すれば、スコットランドが英国から離脱してEU加盟を目指す現実味は一気に増す。逆に英国がEU内にとどまれば、スコットランドのEU加盟反対に貴重な1票を投じることができる。サモンド首相の狙いは独立ではなく、課税自主権を含めた完全なる地方自治権という見方もあるが、真意はまだ誰にも分からない。

 

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