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Mon, 23 December 2024

Up The Junction / アップ・ザ・ジャンクション

映画の舞台裏を捜査する!特捜シネマ刑事
第15回

Up The Junction(1968 / 英)
アップ・ザ・ジャンクション(日本未公開)

アッパー・クラスのお嬢様がリアル・ライフを求めて下町へ移り住むが……。1960年代の「スウィンギング・ロンドン」を代表する一本。

今週のロケ地
監督 Peter Collinson
出演 Suzy Kendall, Dennis Waterman, Maureen Lipman ほか
ロケ地 Max Café, Wandsworth Road沿い
アクセス London・Vauxhall駅から徒歩

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  • 「スウィンギング・ロンドン」って言葉は知ってるよな。
  • 1960年代にカウンター・カルチャーの影響を受けてロンドンで生まれた、ファッション、音楽、映画などのユース・カルチャーの総称ですね。
  • そのメッカとなったのがソーホーのCarnaby Streetです。僕の記憶では、90年代半ばぐらいまでモッズ関連のショップなどがちらほら残っていて、往時の名残が感じられたものですけどねえ。 今では人気ブランドのチェーン店が立ち並ぶ、ごく普通のショッピング街になってしまいましたね。
  • チェルシーのKing's Roadの変遷と同じだね。70年代にパンクやヒッピー文化が隆盛したものの、以降、ジェントリフィケーションが起こり、今じゃすっかり高級ショッピング・ストリートだ。
  • 事の始まりはいつも若者文化ですよね。 今はイースト・ロンドンがそんな感じですが、いずれ他と同様、ポッシュなエリアになったりするんでしょうか。
  • 時代は流れてるからなあ。今回の捜査対象「アップ・ザ・ジャンクション」を観てても痛感したが……。
  • 英国の作家、ネル・ダンが1936年に発表した小説を基に製作された作品ですね。実は1968年に映画化される3年前に、BBCのシリーズ番組で、あのケン・ローチが監督してドラマ化されています。
  • 舞台はClapham Junction駅〜バタシー・エリアですが、40年以上前とあって、さすがに景色が違います。バタシーは当時、ワーキング・クラスの人々が住むエリアでしたからね。冒頭で映っているチェルシー・ブリッジが、富裕層と貧困層のエリアを隔てている象徴だったわけです。
  • チェルシー育ちのお嬢様ポリーと、下町育ちのシルヴィ & ルーブ姉妹が話す英語も全然違いますよね。もちろん着こなしやメイクも違う。Clapham Junctionに移り住んできたポリーが、いかにもスウィンギング・ロンドンなスタイルに変身するあたり、ちょっとワクワクしましたけどね。
  • そうそう、ポリーがアパートを探すシーンで、不動産屋のオヤジが「いつかこのバタシー地区も高級住宅地になる日が来るのかね」なんて言ってて、おおすごい、時代を予見してるじゃないかと感心しちゃったよ。今じゃあの辺、ポッシュなエリアになりつつあるもんな。
  • ちなみにポリーが気に入って住み込むボロアパートは、駅の北側、Falcon Roadから左手に入ったIngrave Streetにある物件だそうですよ。それから、ポリーとシルヴィ&ルーブ姉妹が昼休みに制服を着たままランチを食べに行くカフェは、VauxhallのWandsworth Road沿いの「Max Café」という店で、今も営業しているようです。
  • ほほう、感慨深いねえ。
  • ところで本作では階級を越えた恋の行方についても描かれているわけですが、ピーターとポリーが最後に訪れるホテルはサセックスのWorthingにあるBeach Hotelというところです。ホリデーにはうってつけの海岸沿いのホテルですね。
  • しかしそこでまた物語が違う方向へ展開するわけだな。このエンディングがいかにも英国映画という感じだが。そのうえ、時代とともにどんなに街並みや環境が変化しても、階級社会や価値観は、今でもさほど変わってないということを実感するね。

デカ長、物申す
ファッションや音楽(60年代のビート・バンドを代表するマンフレッド・マンによるサントラは必聴だぞ)だけでも十分楽しめる作品ではあるが、何不自由なく暮らしていたアッパー・クラス出身のポリーが、生の実感を求めて今までとは全く違う環境に身を置き、自分の足で人生を歩いていこうとするあたり、母国から飛び出して海外で自分の道を切り拓こうとしている人なら、どこか共感を得る部分があるんじゃないだろうか。理想と現実の壁も含めてね。

 

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