グリム童話の名作「ヘンゼルとグレーテル」のあらすじを覚えているだろうか。貧しいきこりの亭主とその後妻が、明日食べる物もなくなってしまったある日、口を減らそうと2人の子ども、ヘンゼルとグレーテルを森に捨ててしまうという話だ。そんなメルヘンの世界の出来事が何と現実に起きてしまった。
南西部バーデン=ヴュルテンベルク州の小さな町ウッテンヴァイラー。そこに29歳の母1人、4歳から10歳までの子ども4人の一家が暮らしていた。ある日母親は、4歳と7歳になる娘2人に向かってこう叱りつける。「部屋の片付けをしなかったら、森に連れていって、そこに置いてきてしまうよ!」
実際にその「おしおき」を行動に移したのは、その母娘のやりとりを横で聞いていた母親の恋人である24歳の男性だった。彼はある日、家族の家から数キロ離れた森に女の子2人を連れていき、毛布やおもちゃと一緒に2人をそこに置き去りにしてしまう。男性がその日の夕方、2人を連れ戻しに「現場」に再び行ってみると、2人はそこから姿を消してしまっていた。
幸いなことに2人はその夜、「現場」から少し離れた先で、散歩をしていて偶然そこを通りかかった女性に発見されていた。夜の闇が次第に深まる中、2人の少女は、寒さに震え途方に暮れていたという。女性はすぐに警察に通報、少女2人は無事保護され、母親と男性は御用となった。警察がその後、2人を家に連れて帰ると、安否を心配していた母親らはほッと胸をなでおろした様子。少女たちも、親の顔を見て嬉しそうな表情を浮かべていたというから、ひとまずは一件落着といったところか。
ドイツでは昨今、子育てを重荷に感じ、子どもを虐待したり、殺してしまうといった悲しい事件が後を断たない。そういった事件を起こす家庭には、生活保護を受ける母子家庭など経済的に豊かでない家庭も少なくなく、社会問題ともなっている。先頃ハンブルクで起きた、高層アパートの10階の部屋から父親が赤ん坊を投げ落として殺害するというショッキングな事件もまだ記憶に新しい。警察は今回の事件についても、家庭環境などさらに詳しい事情を母親と男性から聴くとしている。
「Die Welt」紙ほか
Zwei kleine Kinder von Eltern im Wald ausgesetzt
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