調査機関は最高800億円と試算
ウィリアム王子結婚の経済効果
先月中旬に発表されたウィリアム王子とケイト・ミドルトンさんの婚約は、不況の影響で陰鬱なムードが続く英国に珍しく明るい話題を提供してくれた。さらに、未来の国王、王妃となる若きカップルの婚約・結婚は、停滞する英経済に、消費拡大の機会をもたらしてくれそうである。
ウィリアム王子、ケイト・ミドルトンさんの
婚約・結婚関連商品の一例
- ロイヤル・クラウン・ダービー社の熊の置物
2人の婚約を記念して老舗の高級陶磁器メーカー、ロイヤル・クラウン・ダービー社が近く発売する花嫁、花婿の衣装をまとったペアの熊の形の置物。175ポンド(約2万2000円) - エインズレー・チャイナ社の婚約記念陶器コレクション
イングランド中部スタッフォードシャー州に拠点を置く老舗の高級陶器メーカー、エインズレー・チャイナ社が近く発売予定。皿、カップなど。 - 婚約記念硬貨
王立造幣局が記念の5ポンド硬貨を発行予定。 - 結婚記念オイスターカード
ロンドン交通局が発行予定。 - 婚約記念マグカップ
大手スーパー「アスダ」の写真関連商品等販売サイト(www.asda-photo.co.uk)が婚約発表の翌日に発売開始。5ポンド(約650円)。 - ケイト・ミドルトンさんのドレスのレプリカ版
ミドルトンさんが婚約発表の席で着用していたドレスのレプリカ版を大手スーパーマーケット「テスコ」のオンライン・ストア(tesco.com)が販売。16ポンド(約2080円)。ちなみに、実際にミドルトンさんが着ていたドレスは、「イッサ・ロンドン(Issa London)」というブランドの349ポンド(約4万5000円)の商品。 - ケイト・ミドルトンさんの婚約指輪のレプリカ版
同じくtesco.comが販売。ウィリアム王子からミドルトンさんに贈られた、故ダイアナ元妃の形見である婚約指輪のレプリカ。99.99ポンド(約1万3000円)。
数字で見る英王室の人気
5億ポンド (約650億円) |
2009年に王室関連の観光名所を訪問した海外からの観光客による英国での 支出の総額(*) |
60万人 | 1981年にチャールズ皇太子とダイアナ妃の結婚式が行われた際、祝賀パレ ードを見るため通りに集まった見物客の数 |
7億5000万人 | 1981年のチャールズ皇太子とダイアナ妃の結婚式の模様をテレビで鑑賞した 全世界における人数の合計 |
41万人 | 2010年夏のバッキンガム宮殿の一般公開期間中に記録された入場者数総数 (過去最高)(**) |
(*)VisitBritainより (**)Visit Londonより
レプリカのドレスは1時間で品切れ
小規模企業の代表団体である「小規模企業連盟」は先月下旬、ウィリアム王子(28)とケイト・ミドルトンさん(28)の結婚式が行われる来年の4月29日が祝日に指定されたことによって、英経済が50億ポンド(約6500億円)もの損失を被る可能性が生じたと警告した。同日が休日になったため、イースターの祝日なども合わせると、4連休が2週続くことになる。2つの連休の間は平日が3日しかなく、この間、多くの従業員が有給休暇を取ったり、休業する企業もあると考えられることから、英経済が大打撃を被るというのである。しかし、王子の結婚が英経済に好影響をもたらすとの見方も多く、た とえこの警告が現実になったとしても、損失は軽減されそうである。
調査機関「バーディクト」によると、王子の結婚による英国への経済効果は最高で6億2000万ポンド(約806億円)に上ると試算 されている。まず、王子の婚約・結婚にあやかった商品の売り上げ は、最高で総計4400万ポンド(約57億2000万円)に達すると見 込まれている。こうした商品の一例が、大手スーパー「テスコ」が 先月下旬に発売した、ミドルトンさんが婚約発表時に着用していた 青いドレスのレプリカ版である。発売開始からわずか1時間後に売り切れる人気ぶりで、2人の結婚がいかに小売業界にとって魅力的な商機であるかを見せつけた。
食品、酒類も売り上げ激増の見込み
更に、「バーディクト」の試算によると、王子の結婚による経済効果のうち、観光・旅行業界にもたらされる恩恵は2億1600万ポンド(約280億円)に上る見込みである。王室が海外からの観光客誘 致に重要な役割を果たしていることは周知の通りだが、来年は、王子の結婚式に合わせて例年より更に多くの人が英国を訪れると思われる。既にその兆候は出ており、格安航空会社「フライビー」によ ると、婚約発表後、来年4月28日〜5月3日の期間のロンドン往復便の予約率が例年の3倍に跳ね上がったという。
このほか、結婚式の当日及びその前後には、多くの人が自宅などで2人の結婚を祝うため食品や酒類を普段より多く購入し、その売り上げが3億6000万ポンド(約468億円)ほどに上ると予測されて いる。これらをすべて合わせると、6億2000万ポンドの経済効果がもたらされるという計算になる。
「幸せ気分」の蔓延で消費促進
しかし、ある経済心理学者がマスコミに語ったところによると、今回の慶事で促進される消費は、ウィリアム王子の婚約・結婚に直接関係したものに限定されない。王子の婚約・結婚の影響で、世間に「楽しく、幸せな気分」が蔓延することによって、普段は先送りにしているような、例えば電気製品や家の修理などへの支出が増えることが考えられるのだという。
冒頭で述べたような小規模企業の懸念はあれど、王子の結婚は、不況、公共支出削減と暗い話題が続く英経済にとって歓迎すべき消費拡大の機会であると言えるだろう。王子の結婚の翌年となる 2012年には、女王の即位60周年、ロンドン・オリンピックと、更 に大きな行事が開催される。こうして大イベントが続くことで、英国の経済が長期的に活性化していくことが望まれる。
Royal Crown Derby
イングランド中部ダービー市に拠点を置く高級 陶磁器メーカー。18世紀半ば、ドイツからの移民の男性が、ダービーで磁器の製作を始めたのが始まり。1775年、国王ジョージ3世より、商品の裏側に刻印するマークの中で記載する会社名に、「クラウン」の語を使うことを許可される。1890年、ビクトリア女王より王室御用達店に指定され、会社名に「ロイヤル」が付される。ウィリアム王子とケイト・ミドルトンさんの婚約記念品としては、上図で紹介した熊の形の置物のほか、皿、トレイ、カップなどを発売予定である。ウェブサイトはwww.royalcrownderby.co.uk(猫山はるこ)
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