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英国ニュース解説

最終更新日:2012年9月26日

下院補欠選挙で労働党が勝利 -連立政権に「判定下す」初の機会

連立政権に「判定下す」初の機会
下院補欠選挙で労働党が勝利

昨年の連立政権誕生から約8カ月後となる今月中旬、イングランド北西部で下院議員の補欠選挙が実施された。補欠選挙は、実施される度にそれなりの注目を集めるのが常であるが、今回は特に連立政権発足後、初の補選であったため、大きな関心が寄せられていた。

オールダム・イースト・アンド・サドルワース選挙区の
補欠選挙の背景

2010年5月6日に行われた総選挙で、イングランド北西部グレーター・マンチェスター内の選挙区「オールダム・イースト・アンド・サドルワース」は、労働党のフィル・ウーラス候補を再選した。ウーラス氏は、ブラウン政権で移民担当閣外大臣を務めていた。次点の自由民主党のエルウィン・ワトキンス候補とはわずか103票差という僅差の勝利だった。

ワトキンス氏は、選挙後、ウーラス氏が、選挙運動で使用したリーフレットなどで、自身に関する虚偽の記述を行ったとして、選挙結果の無効を求める訴えを起こした。裁判の審理では、落選を恐れたウーラス氏が、リーフレットで、ワトキンス氏が過激派イスラム教徒と結託して得票を画策しているなどと主張し、白人住民の支持獲得を図っていたことが明らかにされた。本件の審理のため特別に開かれた選挙裁判所は昨年11月、ワトキンス氏の主張を支持する判決を下し、選挙結果は無効とされた。同時に、ウーラス氏は、今後3年間の議員活動を禁じられた。ウーラス氏は、司法審査(judicial review)の制度を利用し、判決を覆そうと試みたが、成功しなかった。

オールダム・イースト・アンド・サドルワース
(Oldham East and Saddleworth)の下院議員選挙結果

2011年補欠選挙と2010年総選挙の比較

2011年1月13日実施の補欠選挙の結果

2010年5月6日実施の総選挙の結果


自民党が第三党に転落との予測も

今月13日、イングランド北西部の選挙区である「オールダム・イースト・アンド・サドルワース」で、下院議員の補欠選挙が実施された。昨年5月の総選挙における同選挙区での結果が、裁判所によって無効と判断されたことを受けたものである。  

今回の補選は、昨年の総選挙以降、英国で実施された初の選挙であった(*)ただし地方議会の補欠選挙を除く。そのため、大規模な公共支出削減策を打ち出している連立政権に対し、有権者が「判定を下す」初めての機会であるとして、大きな注目を集めていた。特に、保守党の呼び掛けに応じて連立政権に参加した自由民主党は、連立発足以降、大学授業料値上げなど、選挙前の同党の方針に逆らう政策に合意し、実現させていることから、「裏切り者」とのレッテルを貼られ、支持率が急落している。こうした背景から、同党は今回の補選で、次点に終わった総選挙時から大きく票を減らし、第三党に終わるのではないかとも予測されていた。

「政府への反発票」集め、労働党が圧勝

投票の結果は、労働党のデビー・エイブラハム候補が、次点の自由民主党との差を、前回の103票から3500票以上にまで伸ばし、圧倒的勝利を収めた。自由民主党のヒューズ副党首は、労働党の得票数拡大の理由を、連立政権への反発票が集まったためであるとコメントした。労働党のエド・ミリバンド党首は、昨年9月の党首就任以降、独自の政策を打ち出せず、「精彩に欠けるリーダー」との専らの評判であるが、今回の結果は、同党首にとって願ってもない威信回復のチャンスとなった。  

自由民主党は、第三党に転落しなかったのみならず、わずかながら得票率を伸ばした。大敗を逃れたことは、同党に大きな安堵をもたらしたと言われており、ニック・クレッグ自由民主党党首は、「力強い結果である」とコメントしていた。

保守党中央部に「自民支援」の疑惑

最も大きな痛手をこうむったのは保守党であり、総選挙時より7000票以上も減らした。保守党については、今回の選挙期間中、党中央部が、連立のパートナーである自由民主党を助けるため、意図的に保守党候補を強力にバックアップすることを避けたと言われている。保守党幹部はこれを否定しているが、自民党が大敗を逃れ、保守党がその犠牲となったかのような選挙の結果は、「連立維持のため、保守党は自民党に妥協し過ぎである」と感じる保守党右派に、更に強い不満の種を与えることになった。  

大きな話題となった今回の補欠選挙であるが、実は、同選挙区は長らく労働党の地盤となっており、自民、保守が敗北したことは、全く不思議ではなかった。それよりも、連立政権に対する有権者の判断がより明確に示されると思われるのは、今年5月に行われるイングランドの地方選挙である。同地方選の投票日には、自民党が連立参加の条件とした下院の投票方法の変更に関する住民投票も同時に実施される。自民党が推す「代替投票制度(AV)」が否決されれば、連立政権は存続の危機に直面することにもなりかねない。今年の英政界は、波乱含みとなりそうな気配である。

By-election

補欠選挙。議員が死亡、辞職するなどして欠員になった場合、当該議員の選挙区で実施される。英国において、補欠選挙は、地方選挙と同様、有権者が時の政府への不満を表明する機会となることが多く、与党が勝利することはまれ。最後に与党が下院議員の補欠選挙で勝利したのは、保守党のアンジェラ・ラムボールド候補がロンドン南部の選挙区で議席を獲得した1982年6月の選挙である。今回、オールダム・イースト・アンド・サドルワースで実施された選挙は、昨年の総選挙後、初の下院議員の補欠選挙であるが、地方議会の補選は毎週のように英国内のどこかの地域で実施されている。

(猫山はるこ)

 

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