開幕まであと1カ月半
BBCによるロンドン五輪の放送予定を紹介
ロンドン五輪の開催まで、あと1カ月半を残すところとなった。主催国の公式放送局となったBBCは、すべての競技を放送すると宣言。いつでも、どこでも、好きなときに競技の模様を視聴できるよう準備しているという。普段はあまりスポーツに興味がないという人でも、つい自国チームを応援してしまうのが五輪大会だ。今週は、BBCの放送がどのように行われるかについて注目した。
BBCによるロンドン五輪の報道予定表
放送期間 | 2012年7月27日~8月12日 |
放送媒体 | テレビ、ラジオ及びウェブサイト(www.bbc.co.uk/sport) |
放送時間 | 9:00〜深夜が中心 |
放送内容 | すべての五輪競技の生中継及び関連情報 |
チャンネル名 | 番組名 | 時間 | 内容 |
---|---|---|---|
BBC1 BBC1 HD |
オリンピック・ブレックファスト Olympic Breakfast |
6:00-9:00 | 前日の競技のハイライト、本日の競技予定、ニュースほか |
オリンピックス2012 Olympics 2012 |
9:00-22:35 | 競技の現場からのリポート、その日に注目すべき選手の紹介 | |
オリンピックス・トゥナイト Olympics Tonight |
22:40-0:00 | 歴代のスポーツ選手をゲストに呼び、その経歴を振り返る | |
オリンピック・スポーツデイ Olympic Sports Day |
0:15-翌1:00 | 前日の競技の様子をまとめる | |
BBC2 | オリンピックス2012 Olympics 2012 |
13:00-13:45 18:00-19:00 22:00-22:40 |
BBC1で定時のニュース番組が放映中に五輪報道を継続 |
BBC3 | オリンピックス2012 Olympics 2012 |
9:00-23:00 | その日行われた競技の印象深い場面を紹介する |
ニュース専門局 | BBCニュース BBC News |
24時間 | テレビのチャンネルとウェブサイトを通じて、一日中、五輪の話題を報道する |
( 資料: BBC )
五輪放送の歴史
開催年 | 開催都市 | 出来事 |
1936 | ベルリン (ドイツ) |
ベルリン近辺の有線テレビで五輪が初めてテレビ放送された。放送時間合計は138時間。16万2000人が視聴。 |
---|---|---|
1948 | ロンドン (英国) |
家庭のテレビ受信機を通しての放送が開始。放映権に関する枠組みが確立する。合計で64時間の放送を視聴できたのはロンドンから80キロ圏内の視聴者のみ。 |
1952 | ヘルシンキ (フィンランド) |
放送権交渉が開始される。 |
1956 | メルボルン (オーストラリア) |
放送権交渉が決裂し、米国を含む数カ国で放映が不可に。 |
1956 | コルティナ・ダンペッツォ (イタリア、冬季) |
冬季五輪が初めてテレビ放映される。 |
1958 | 五輪憲章に放送権の支払いについての要項が明文化される。 | |
1960 | ローマ (イタリア) |
18の欧州諸国で五輪の生放送が開始。数時間後には米国、カナダ、日本で放送。 |
1964 | 東京 (日本) |
衛星放送を使って海外に映像を送ることが可能に。 |
1968 | メキシコ・シティー (メキシコ) |
カラー放送とスローモーションの動画撮影が始まる。 |
1972 | 札幌 (日本、冬季) |
NHKがほかの放送局に映像を流す方法を導入。主催国の公式放送局が「ホスト・ブロードキャスター」となる仕組みが確立。 |
1984 | ロサンゼルス (米国) |
テレビ及びラジオ放送権を156カ国が取得。25億人が五輪放送を視聴。 |
1992 | アルベールビル(フランス、冬季) バルセロナ(スペイン) |
開催国の五輪公式放送局がケーブル及び衛星放送局に五輪放送権を提供する方式が導入される。 |
1994 | リレハンメル (ノルウェー、冬季) |
冬季大会が初めてアフリカ諸国で放映される。 |
1996 | アトランタ (米国) |
214カ国で五輪が放映される。 |
1998 | 長野 (日本、冬季) |
オーストラリアで生中継が開始。オン・デマンド及び3D高画質での放送が初めて開始。 |
2000 | シドニー (オーストラリア) |
220カ国で、37億人が五輪放送を視聴。 |
2002 | ソルトレーク (米国、冬季) |
ホスト・ブロードキャスターが、初めて冬季五輪競技のすべてを生中継。 |
2004 | アテネ (ギリシャ) |
アゼルバイジャンでの生放送が開始される。一部の国ではインターネットでの中継放送を実施。 |
2006 | トリノ (イタリア、冬季) |
冬季大会では最長時間となる、1000時間にわたる生中継放送が行われる。高画質での放送開始。携帯電話での視聴が可能に。 |
2008 | 北京 (中国) |
高画質での5000時間にわたる生中継の実施記録を作る。世界中での放送時間の総計は6万1700時間。67億人が視聴。デジタル・メディアを通じての放送が始まる。 |
2010 | バンクーバー (カナダ、冬季) |
220の国・地域にて235の放送局が放映。37億人が視聴。世界中での放送時間の総計は3万1092時間で、生中継は44%。 |
( 資料: 「Olympic Marketing Fact File 2012」 )
すべての競技を生中継
ロンドンは、この夏、7月27日から8月12日まで開催される第30回夏季五輪競技と、8月29日から9月9日まで開催される第14回夏季パラリンピック競技の主催地となる。19世紀末に始まった近代オリンピックの開始後、ロンドンが夏季五輪大会の主催国となるのは、1908年、1948年に続いてこれで3回目。一つの都市が夏季五輪を3度開催するのは初めてだ。
そんな名誉ある大会を「私たちの生涯で最大のスポーツ・イベント」と定義するのは、BBCの編集幹部ロジャー・モージー氏である。BBCは、すべての競技を生中継する予定。その放映時間は総計で2500時間にも及ぶ見込みだ。デジタル時代の技術やメディア環境を使って、視聴者が「いつでも、好きなときに、好きな競技を視聴できる」体制を整えるという。
ストリーム放送や専用アプリも
BBCによる五輪報道の中心になるのは、テレビのチャンネルではまずBBC1だ。原則として五輪報道を常時行い、定時のニュース番組が放送される時間帯には代わってBBC2が五輪番組を放映する。BBC3も独自の五輪番組を常時放映する予定だ。
BBC1がそのときに扱っていない競技を視聴したり、後で視聴したいときには、デジタル・テレビ用リモコンの「レッド・ボタン」を押し、BBCが設置した五輪専用の24の高画質チャンネルの中から視聴したい競技種目を選択することが可能。有料テレビのスカイや、ケーブル・テレビのバージン・メディア、あるいはフリービュー、BTビジョンなどの利用者は、こうしてオン・デマンド視聴を楽しむことができる。
インターネットにつながった、いわゆる「スマート・テレビ」やコンピューターを利用する場合は、BBCのスポーツ・サイト(www.bbc.co.uk/sport)が便利だ。同サイトでは競技映像のストリーム放送を実施し、生中継の動画は巻き戻しすることも可能。スマートフォン及びタブレット向けの専用アプリも用意されている。
さらに、ラジオ好きの人には五輪開催期間に限って放送される「ラジオ・ファイブ・ライブ・オリンピック・エキストラ」がお勧めだ。BBCはまた「London 2012」という特設サイトを立ち上げ、五輪に関わるニュース、スポーツや芸術、地域の情報などを掲載している。開催まで待ちきれない人は、5月19日に始まった聖火リレーの様子を生中継しているウェブサイト(www.bbc.co.uk/torchrelay)を閲覧してはどうだろうか。
パラリンピック放送はチャンネル4で
夏季五輪後に開催されるパラリンピックの放送は、民放局チャンネル4が担当する。「モア4」などのデジタル・チャンネルやオンライン・サイトを用いて、合計で150時間が放送に割かれる予定だ。パラリンピック用サイト(http://paralympics.channel4.com)では、競技の同時ストリーミング放送が視聴できるほか、全選手に関わる情報やパラリンピックで実施されるスポーツの関連情報などが発信される。五輪開催中は、まさに「いつでも、どこでも」と実感できるような、デジタル時代の様々なツールを駆使した報道を楽しむことができそうだ。
Pierre de Coubertin
ピエール・ド・クーベルタン。近代オリンピックの創立者、フランスの教育者(1863〜1937)。芸術家の貴族の家庭に生まれる。自らもボクシング、フェンシング、乗馬などのスポーツを嗜み、1887年よりスポーツ復興運動を開始。94年にオリンピック競技大会復活会議を開催、国際オリンピック委員会の会長に就任。同年、近代オリンピックの最初の大会がアテネで開催された。その後、女性の競技参加に反対を示したため論争を招き、1925年に会長職を辞任。37年にジュネーブで死去した。オリンピックが国際イベントとして発展する素地を作った功績が世界中で広く認められている。(小林恭子)
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