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Mon, 15 August 2022

第97回 景気悪化の出口はどこにあるのか

警戒すべきクラッシュ

世界中で急速に進行している景気の悪化はまだ出口が見えてこないが、金融市場の方は下げ止まった感がある。しかし、このまま出口が見えないようだと、金融市場は再度、一段と下がる可能性が出てくる。

金融市場の参加者は、今年前半は市場のクラッシュを警戒しつつ、底が固いのかどうか叩いて確認しようとするだろう。確認するのは市場の地合いではなく、経済全体や投資先企業の状況そのものである。そうした実体経済が世界経済の行方を決めるからだ。

ただどの国でも、消費者が財布の紐を締めていることを生産者である企業が重く受け止めており、実体経済は簡単に回復しそうもない。そうなると不況に伴う不良債権の増加、金融機関の経営危機が、投資銀行(インベストメント・バンク、証券会社)から商業銀行(預金を集めて中小企業に貸出を行っている金融機関、HSBC、RBS、ロイズTSB、日本の3メガ・バンク、地方銀行など)に至るまではっきりとした形で出てくる。これはもはやサブプライム・ローンの問題ではなく、実体経済の悪化そのものの問題である。だから景気悪化から脱出するための第一ポイントは、金融機関経営の行方、全体で見れば信用秩序の維持である。

今年も世界中で金融監督のあり方が議論されるだろうが、経済の悪いときにこうした議論を行うと、どうしても規制色が強くなり、それがまた金融機関の行動を縛って不況を加速させる。日本の不良債権問題の轍(てつ)を世界全体が踏むことになる可能性が高い。


財政出動では不十分

不景気対策として英国政府は昨年以来、預金の全額保護やインター・バンク(銀行間資金取引)の全額保護を打ち出してきたが、これらの政策は財政への大きな負担となる。また各国政府は景気回復のために財政赤字の拡大も約束している。しかし財政出動は、クラウド・アウト効果(財政需要の拡大により民間需要が喚起される前に押し出されてしまい、国全体の需要につながらないこと)によって、景気対策としては不十分となる可能性がある。流動性=キャッシュも全部、国が持っていってしまうということにもなろう。


大恐慌と戦争への誘惑

1929年の大恐慌から米国や世界が脱出できたのは、ルーズベルト大統領の財政拡張策=ニューディール政策によるものだけではなかったことを想起すべきだ。むしろ完全な景気回復の引き金となったのは、対日戦争のための総動員体制であった。ニューディール政策で公共工事を行ったといっても、ダムの建設などだけでは国全体の経済への波及効果はさほど大きくはない。一方で戦争が起きれば国家の総力戦となり、軍需物資として乗り物のような大きなものから食料、衣料、医療まで、その産業連関的な波及度は非常に大きなものがある。

オバマ大統領は平和主義者であろうが、中東、アフガニスタンなどの火種の下、米国の産学ロビーは蠢動(しゅんどう)を始めたようである。ニューヨークの金融市場はユダヤ人の世界だ。筆者は陰謀史観には賛成しないが、イスラエルによるガザ地区侵攻のタイミングとの符合性は出来すぎとしか思えない、とする見方も成り立つ。景気悪化から脱出するための第二ポイントは、財政、政治、戦争という政治マターである。


底をいつと見るのか

第三のポイントは、景気の底をいつと見るのか、というタイミングである。不良債権や金融機関の問題が底を打てば、景気回復は存外早い可能性がある。というのは、第一に不況の起点は米国の消費者の消費意欲減退なので、米国人はいつまでも消費を我慢できないのではないか、という読みがある。第二に中国やインドの消費者も簡単には生活水準を下げられないと思われる。第三にVISTA諸国またはアフリカ諸国の消費や経済成長は衰えないと考えられることである。

経済変動の山谷が激しいのが資本主義という制度だとすれば、政府や公的当局が変に助けなければ、不況は自ずと立ち直るものではないかと考える。資本注入を受けた投資銀行は、手持ちの金を使って早くも新興国や、技術を持ち業績回復の早そうな企業の社債を買い始めている。ゼロ金利となれば、業績が少しでも回復しそうな社債は必ず値上がりする。金融機関も企業も全部危ないという状況にはならないのも資本主義で、悲観を煽る英国の新聞も相対的に読みたいものだ。


(2009年1月4日脱稿)

 
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Mr. City:金融界で活躍する経済スペシャリスト。各国ビジネスマンとの交流を通して、世界の今を読み解く。
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